テキサス大とオクラホマ大、SEC加入を交渉中①

先週末、カレッジスポーツ界にとって衝撃的なニュースが飛び込んできた。

「テキサス大学とオクラホマ大学がBig 12を抜けてSECに加入するために動いている」というニュースである。

アメリカのカレッジスポーツに詳しくない方にとってはわかりにくい点も多いニュースかもしれないので、数回に渡って解説していこうと思う。

まず、アメリカの各大学スポーツチームはNCAA、NAIA、NJCAAといった統括団体に所属している。なかでもNCAAはパフォーマンスのレベルもビジネス規模もトップである。

そのNCAAに所属する大学は、さらに競技レベルやスポーツに割り当てられる予算規模に応じて「ディビジョン1」、「ディビジョン2」、「ディビジョン3」の3段階に分かれる。

そして各ディビジョンに複数の「カンファレンス」がある。

たとえば、我がテキサス工科大学は、NCAAディビジョン1のBig 12カンファレンスに所属している。

このBig 12を含む5つの人気カンファレンス(ACC、Big Ten、Big 12、Pac-12、SEC)をまとめて「Power Fiveカンファレンス」と呼ぶ。

今回大きな話題を呼んでいるのは、Big 12の名門校であるテキサス大とオクラホマ大がSECに移ろうとしているというニュースである。

誤解を恐れず例えれば、ソフトバンク・ホークスと西武ライオンズがセ・リーグに入ろうと交渉しているようなイメージである。

そもそもそのような移動は可能なのか、どのような動機があるのか、そして今後Big 12はどうなっていくのか。

そういった問題は次回以降説明していきます。

参考文献:
https://www.espn.com/college-football/story/_/id/31868545/source-oklahoma-sooners-texas-longhorns-verge-making-sec-move

ミシガン大学、同校アメフト選手と提携し新グッズ販売

Photo Credit: RACHEL SCHRAUBEN

今月17日、ミシガン大学体育局の公式グッズストア「The M Den」は、同校のアメフト選手と提携し、彼らの名前と背番号を入れたカスタムユニフォームを販売することを発表した。

以前までのNCAA規則では、現役選手の名前が入ったユニフォームを販売することは禁止されていたが、今月発表された新NIL規則によってそれも可能になった。

ここで注意したいのは、今回の契約が「カスタムユニフォーム」に限られているという点だ。

現時点では、ミシガン大学は、同校アメフトチームが自ら商品に選手の名前や背番号を入れて販売することを認めていない。

たとえば、A選手のファンが彼の名前が入ったユニフォームを買おうと公式ストアに行っても、そのような商品は店頭には並んでいない。

A選手のユニフォームを購入するためには、公式ストアのウェブサイトにアクセスし、そこにある選手リストのなかからA選手を選択する。これによってそのユニフォームは名目上「カスタムユニフォーム」となる。

これが今回認められた選手名入りユニフォームの購入方法だ。

かなり抜け道的な手法ではあるが、売り上げの一部は各選手に還元されることになっている。

マージンは全選手一律。選手への支払いは四半期ごとになる。

この契約には、現時点でおよそ60人の選手が合意しており、その人数は今後さらに増えていくと見られる。

参考文献:
https://www.espn.com/college-football/story/_/id/31834394/michigan-athletics-official-retail-store-partners-players-sell-jerseys-names-back

マイアミ大学アメフト選手にエンドースメント契約のオファー

Photo Source: CaneSport.com

今月6日、総合格闘技ジム「アメリカン・トップ・チーム(ATT)」のオーナーであるダン・ランバート氏は、マイアミ大学アメリカンフットボール部の中心選手(計90名)にエンドースメント契約の提案をした。

ATTは堀口恭司選手を含め、多くのトップファイターを輩出した名門ジム。ランバート氏はマイアミ大学の大ファンとしても知られている。

この契約が成立すれば、各選手はSNSなどを通じて同ジムを宣伝し、月々500ドルを受け取ることができる。

学生アスリートのエンドースメント契約は、先々週にNCAAが解禁を発表したばかり。早速大きな契約の話が浮上し、話題を呼んでいる。

この契約を提案した理由についてランバート氏は「学生の手助けをしたいのです。彼らの努力に報いたいし、よりよいチームになってもらいたい」と説明した。

また同氏は「NILに関する新たな規則は、企業やファンが選手やチームに直接影響を与えることができる素晴らしい機会です」とコメント。

ランバート氏は当初、何人かの選手とのみ契約を結ぶ予定だったが、より大きな役割を果たすために多くの選手と契約することを決めたという。

参考文献:
https://www.espn.com/college-football/story/_/id/31771563/dan-lambert-plans-500-month-endorsement-deal-every-miami-hurricanes-football-player-scholarship
https://www.cbssports.com/college-football/news/why-college-football-playoff-expansion-is-a-complicated-task-with-the-potential-for-significant-fallout/

NCAA、NILに関する規則の変更を発表

今週水曜日、NCAA理事会は、学生アスリートが自らの名前や画像、肖像権(NIL:Name, Image, Likeness)を活用して収益を上げることを禁止する規則を停止すると発表した。

これに基づき、NCAAに所属する全ての学生アスリートは、今週木曜日から以下のような事業を通じて収入を得ることが可能になった。また、エンドースメント契約などのために代理人と契約することも認められた。

【主な事業例】
・有料イベント(サイン会、キャンプ、レッスン)の開催
・ソーシャルメディアアカウント(YouTube等)の収益化
・自身のビジネスの設立
・エンドースメント契約および企業広告活動

なお、アメリカでは各州が州法を持つため、これがビジネス展開に制限をかかるケースもある。

たとえば、一部の州法では、スポーツ選手がアルコール、タバコ、ギャンブル関連ブランドを宣伝することを禁止している。したがって、それらの州でプレーする学生アスリートにも同様の法律が適応される。

また(本ページで再三指摘している通り)、今回の決定はNILのビジネス活用を認めるものであって、大学が学生アスリートに給与を支払うことを許可したものではない。

大学から学生に直接与えられる便益は、Title IX(タイトルナイン)との兼ね合いもあるため、簡単には実現しないだろう。

参考文献:
https://www.espn.com/college-sports/story/_/id/31737039/ncaa-clears-student-athletes-pursue-name-image-likeness-deals

最高裁、「アルストン訴訟」で原告側を支持

今週、カレッジスポーツに関する重要な判決が下された。この裁判に関しては、今年2月に解説している

簡単におさらいすると、この裁判は2014年に元カレッジフットボール選手のショーン・アルストン氏が起こしたもので「アルストン訴訟」とも呼ばれる。

この訴訟で原告側は「NCAAは、学生アスリートが大学から受け取れる便益は奨学金とその他の受講料のみとしているが、この規則は独占禁止法に違反している」と主張した。

これに対し、NCAAは「この規則はアマチュア性を維持するために必要であり、優秀な選手を大学が過剰な報酬で誘惑するのを防ぐものだ」と弁護していた。

この訴訟は下級裁判所での審議を経て、2020年12月、連邦最高裁判所が審議することを発表し、その判決に注目が集まっていた。

そして今週、最高裁は原告側の主張を支持する判決を全会一致で下した。

これにより、今後、学生アスリートに与えられる便益が拡張される(たとえば、コンピューター、科学器具など)。

なお、この訴訟では大学から学生アスリートへの直接的な報酬は争点になっていない。したがって、この判決を以って「学生アスリートがスポーツをすることで大学から収益を得るようになる」とは言えない。

しかし、ここ数年論争を呼んでいるNIL問題に影響を与えることは必至で、NCAAはビジネスモデルの大改革を強いられる。

参考文献:
https://www.sportspromedia.com/news/ncaa-compensation-case-supreme-court-ruling-student-athletes-college-sports

NIL問題と最高裁の判断④

2020年12月16日、連邦最高裁判所は「アルストン訴訟」を審議することを発表した。

最高裁がカレッジスポーツの反トラスト法に関する訴訟を扱うのは1984年以来となる。

この訴訟自体はNIL問題とは関係ないが、最高裁の判決がNIL問題に及ぼす影響も否定できない。

専門家のベアード・フォゲル氏は「最高裁の判決はアマチュアスポーツに大きな影響を及ぼすでしょう。NCAAと各大学のビジネスモデル全体にもインパクトがあるはずです」は言う。

ボイシ州立大学のサム・エーリック教授は、もしNCAAの主張が認められればここまで進展してきたNIL規則改定が振り出しに戻る可能性が出ると話す。

注目の判決は今年6月に下される。

参考文献:
https://www.washingtonpost.com/politics/courts_law/supreme-courtncaa/2020/12/16/90f20dbc-3fa9-11eb-8db8-395dedaaa036_story.html
https://www.washingtonpost.com/sports/2020/12/31/ncaa-supreme-court-compensation/
https://www.sportsbusinessdaily.com/Journal/Issues/2021/02/08/Law-and-Politics/NCAA-Supreme-Court.aspx

NIL問題と最高裁の判断③

ウエストバージニア大学時代のショーン・アルストン氏

2014年に元カレッジフットボール選手のショーン・アルストン氏が起こした、いわゆる「アルストン訴訟」では、学生アスリートが大学から受け取ることのできる便益が争点となった。

それまでNCAAが認めていたのは奨学金とその他の受講料のみ。

これに関して原告側は「NCAAの規則は独占禁止法に違反している。どのような便益を学生アスリートに与えるかは各大学が自由に決定できるはずだ」と主張した。

2019年3月、カリフォルニア州の地方裁判所は、原告側の主張を概ね支持。

学生アスリートに与えられる便益を大学教育に関係する品々(コンピューター、科学器具、楽器など)まで拡大するべきという判決を下した。

NCAAはこの判決を不服として控訴したが、2020年5月、控訴審が第一審の判決を支持した。

ここまではオバノン訴訟と同じ流れだが、違うのはここから。

控訴審の判決にも納得のいかないNCAAが上告をしたところ、最高裁がこれを審議すると発表したのである。

オバノン訴訟ではNCAAの上告を棄却した最高裁が、なぜ今回は受け入れたのか。そこにはどのような意図があるのだろうか。

つづく。

参考文献:
https://www.si.com/college/2018/09/04/alston-v-ncaa-trial-news-updates-ncaa-cost-attendance
https://www.espn.com/college-sports/story/_/id/29191519/appeals-court-upholds-ruling-colleges-pay-all-ncaa-athletes-education-expenses

NIL問題と最高裁の判断②

カレッジスポーツのNIL問題が大きな注目を浴びるきっかけとなったのが、エド・オバノン氏が2009年に起こした訴訟である。

この訴訟で問題となったのが、NCAAによる学生アスリートの名前・肖像の商用利用(ビデオゲーム制作など)であった。

「NCAAは選手の名前・肖像を使って収益を上げていながら、それを一切選手に還元していない。これは反トラスト法・独占法違反だ」というのが原告の訴えである。

2014年、カリフォルニア州の地方裁判所は原告の訴えを認めた。その後NCAAは控訴・上告したが、最後まで判決が変わることはなかった。

このオバノン訴訟を契機に、NCAAの規則に関する訴訟が続いた。

その代表的なものがショーン・アルストン氏の起こした訴訟で、こちらもカリフォルニア州の地方裁判所が舞台となった。

そしてこの「アルストン訴訟」こそ、現在アメリカスポーツ業界で話題となっている訴訟なのである。

つづく。

参考文献:
https://www.lexisnexis.com/community/casebrief/p/casebrief-o-bannon-v-ncaa
https://www.washingtonpost.com/politics/courts_law/supreme-courtncaa/2020/12/16/90f20dbc-3fa9-11eb-8db8-395dedaaa036_story.html

NIL問題と最高裁の判断①

ここ数年のアメリカスポーツ業界で最もホットなトピックの一つが「学生アスリートが自らの名前や肖像権を使用して収入を得ることは認められるべきか」という問題である。

ちなみに、この問題はName(名前)、Image(イメージ)、Likeness(肖像)の頭文字をとって「NIL問題」と呼ばれることがある。

現在、この問題に関連する重要な裁判が連邦最高裁で行われているのだが、その内容が大きな注目を集めている。

その重要性と今後の流れを理解するために、今週はこのトピックを掘り下げていきたい。今日は、ここまでの簡単なおさらいをする。

・NCAAはアマチュアリズムの精神に基づき、学生アスリートが給与を受け取ることを禁止してきた。
・カレッジスポーツが巨大なビジネスとなり、NCAAが毎年何十億ドルという収入を上げている一方、それが一切選手に還元されないことに疑問や批判の声が集まり始めた。

・2019年9月、カリフォルニア州が「カリフォルニア州の大学に通う学生アスリートは、企業とスポンサー契約を結び、収益を上げる権利が認められる」という州法を成立させた。
・フロリダ州やイリノイ州などの州議会、さらには合衆国議会でもカリフォルニア州と同様の法案が審議され始めた。
・これを受け、2019年10月、NCAAは学生アスリートのスポンサー契約を解禁する方針を発表した。
・現在NCAAは新規約の内容を議論している。

次回の投稿では、現在注目を集めている裁判について解説する。

参考文献:
https://www.sportsbusinessdaily.com/Journal/Issues/2021/02/08/Law-and-Politics/NCAA-Supreme-Court.aspx

EA Sports、カレッジフットボールのゲーム制作を再開

今週火曜日、大手ゲーム制作会社のEA Sportsは、2013年を最後に制作を休止していたカレッジフットボールのゲーム制作を再開することを明らかにした。

カレッジフットボールはEA Sportsが制作するゲームのなかでも人気の高いコンテンツであったが、2013年にNCAAおよび複数のカンファレンスがライセンス契約の更新を断り、ゲーム制作が止まっていた。

それらの団体が今回改めてEA Sportsとライセンス契約を結ぶ目途が立ち、カンファレンスの名前やロゴが使用可能になったことで、ゲーム制作が再始動した。

テレビゲームといえば、以前EA Sportsは学生アスリートの名前・肖像権を使用していたことで訴訟の対象となったが、新作ゲームには実在する学生アスリートは使用されない予定である。

一方で、NCAAは近く学生アスリートの名前・肖像権に関する規則を変更する予定である。

学生アスリートがゲーム会社と契約を結び収入を得ることが認められれば、EA Sportsが制作するカレッジフットボールゲームに実際の選手の名前や顔が登場することもあり得る。

なお、発売日などの詳細は一切未定である。

参考文献:
https://www.espn.com/college-football/story//id/30821045/school-plan-ea-sports-do-college-football https://www.espn.com/college-football/story//id/30820886/everything-need-know-return-ea-sports-college-football-video-game