2018年、北米スポーツ業界の動向 – アンケート調査

北米スポーツビジネスの動向を伝えるメディアであるSport Business Journalが毎年恒例の読者アンケートの結果を公表した。この雑誌の読者の多くはスポーツビジネスの関係者・有識者なので、この調査結果を見ることで北米スポーツ業界の現状を概観することができる。

以下、興味深い結果をいくつか紹介する。

Q. 2018年のスポーツ業界で一番の話題は?

  1. 最高裁がスポーツ賭博を認めたこと(62%)
  2. レブロン・ジェームスのロサンゼルス・レイカーズ入団(24%)
  3. USOCの新CEO就任と体操協会の起こした騒動(20%)

Q. 2018年最も興味を引いたアスリートは?

  1. レブロン・ジェームス(31%)
  2. コリン・キャパニック(10%)
  3. タイガー・ウッズ(8%)

Q. 他業界と比較して、スポーツ業界が遅れているところは?

  1. 男女の平等(62%)
  2. 福利厚生(43%)
  3. 人種的平等(40%)

Q. スポーツ業界は社会問題に取り組むべき?

  1. 今以上に取り組むべき(60%)
  2. 現状を維持すべき(29%)
  3. 今より抑えるべき(12%)

Q. 家族連れが楽しめるのはどのスポーツ?

  1. MiLB(野球のマイナーリーグ)(43%)
  2. MLB(17%)
  3. NBA(10%)
  4. NHL(10%)
  5. MLS(9%)
  6. ちなみにNFLはわずか1%

Q. 今最もアツイスポーツは?

  1. NBA(56%)
  2. NFL(29%)
  3. Overwatch League(28%)
  4. MLS(25%)
  5. MiLB(22%)

Q. 間違った方向に進んでいると思うスポーツは?

  1. NASCAR(49%)
  2. NFL(40%)
  3. MLB(34%)
  4. NCAA(19%)
  5. USOC(19%)

Q. 協賛するとしたらどのスポーツ?

  1. NBA(53%)
  2. MLB(25%)
  3. NFL(23%)
  4. MiLB(23%)
  5. MLS(22%)

Q. スポーツファンを引きつけるのに最も有効なソーシャルメディアは?

  1. Twitter(54%)
  2. Instagram(35%)
  3. Facebook(9%)
  4. Snapchat(1%)

Q. 今一番アツイeスポーツは?

  1. Fortnite(58%)
  2. Overwatch(10%)
  3. NBA 2K(9%)
  4. League of Legends(8%)

Q. 学生アスリートが報酬を受け取ることは認められるべき?

  1. 第三者機関から報酬を受け取ることは認められるべき(52%)
  2. 大学から給与を与えられるべき(38%)
  3. 現状を維持すべき(27%)

Q. 最高裁がスポーツ賭博を認めました。もしあなたの住む州が実際にスポーツ賭博を合法化したら、スポーツにどのような影響があると思いますか?

  1. 好影響(78%)
  2. 悪影響(22%)

参考文献:
https://www.sportsbusinessdaily.com/Journal/Issues/2018/11/26/Reader-Survey/StateOfIndustry.aspx
https://www.sportsbusinessdaily.com/Journal/Issues/2018/11/26/Reader-Survey/TeamsAndLeagues.aspx
https://www.sportsbusinessdaily.com/Journal/Issues/2018/11/26/Reader-Survey/MediaAndMarketing.aspx
https://www.sportsbusinessdaily.com/Journal/Issues/2018/11/26/Reader-Survey/BestOfTheRest.aspx

Fanatics③ 大手企業が次々にFanaticsに出資

Fanaticsは現在300を超えるグッズショップおよびショッピングサイトを運営しており、北米スポーツリーグ(NFL, MLB, NBA, NHL, NASCAR, MLS, PGA)、大手メディア(NBC Sports, CBS Sports, FOX Sports)、そして200を超える大学・プロスポーツチームのグッズを販売している。その中にはマンチェスター・ユナイテッド、レアル・マドリード、マンチェスター・シティといった海外チームも含まれている。

急成長するFanaticsは、投資の対象としても注目されている。

たとえば2017年、NFL、NFL選手会、MLB、MLSがFanaticsへの出資を発表。その額は、NFLが9500万ドル、NFLPAが500万ドル、MLBが5000万ドルであったと報道されている。2018年には、NHLも1000万ドル程度を出資する方針であると報道された。

スポーツリーグ以外では、2017年、Softbankが10億ドルを出資。この契約によってFanaticsは、Softbankが持つアジア圏におけるビジネスのノウハウも獲得することを期待しているという。

2017年に行われたインタビューの中で、FanaticsのMichael Rubin氏は「Fanaticsのビジネスは、野球で例えれば、まだ2回だ」と語った。 Rubin氏によれば、北米のプロスポーツに比べ、大学スポーツおよび国際マーケットには、まだFanaticsの成長の余地があるという。

参考文献:
https://www.sportsbusinessdaily.com/Journal/Issues/2017/05/08/Leagues-and-Governing-Bodies/Fanatics.aspx
https://www.sportsbusinessdaily.com/Journal/Issues/2017/11/06/Marketing-and-Sponsorship/Fanatics-MLS.aspx
https://www.sportsbusinessdaily.com/Journal/Issues/2018/02/19/Marketing-and-Sponsorship/Lefton-Report.aspx
https://www.sportsbusinessdaily.com/Daily/Issues/2017/09/06/Finance/Fanatics.aspx
https://www.sportsbusinessdaily.com/Daily/Issues/2017/11/30/Dealmakers-In-Sports/Fanatics.aspx

ドジャース、ベンチャー企業に投資

2018年1月、ロサンゼルス・ドジャースは同チームが運営する投資プログラム「Dodgers Accelerator」の拡大を発表した。

Dodgers Acceleratorは、2015年にドジャースが広告代理店のR/GA社と共同で立ち上げたプログラムで、その内容は、スポーツ・エンターテインメント関連のベンチャー企業に活動資金を投資するというものである(12万ドルを投資し、6%ほどの株主資本を得る)。

このプログラムはこれまで15のベンチャー企業を支援し、アメリカのスポーツ界で最も成功を収めた投資プログラムの一つとなった。

今回ドジャースは、このプログラムの名称を「Global Sports Venture Studio」に改め、その内容を大幅に変更すると発表した。

まず、8月から11月までの期間限定であったプログラムを、年間を通じて運営するものにする。そして投資対象も拡大し、よりグローバルなプログラムにする。

この変更に伴い、同プログラムはドジャースの本拠地であるロサンゼルスだけでなく、ニューヨーク、ロンドンにもオフィスを構え、投資先を探す方針であるという。

このプログラムを通してドジャースは投資家としての利益(投資先のベンチャー企業が成功を収めれば、保有する株主資本の価値も上がる)を得る一方、同チームのビジネスに応用できそうな新技術に関する情報をいち早く得ることもできる。

参考文献:
http://www.sportsbusinessdaily.com/Journal/Issues/2018/01/08/Franchises/Dodgers.aspx
https://www.globalsportsventurestudio.com/
https://www.mlb.com/dodgers/news/dodgers-accelerator-program-hosts-demo-day/c-157045580

カブス、ゴルフ大会を主催

シカゴ・カブスは、2020年3月、PGA Tour Championsの大会を主催する。

開催地はカブスを含むMLB15球団が春季キャンプを行うアリゾナ。開催期間は春季キャンプの真っ最中だ。大会はプロ・アマ戦で、現役のプロゴルファーと引退したMLB選手が参加する予定。

今回の大会では、春季キャンプを見に来る野球ファンとゴルフを見に来るゴルフファンを同時に引き付けることで、両スポーツのファンベース拡大を狙う。

Marquee Sports & EntertainmentのAndy Blackburn氏は「ゴルフと野球、両スポーツのレジェンドをそれぞれのファンに披露するまたとない機会になる」と意気込む。

大会の運営はWestern Golf Associationが担当し、スポンサーシップ営業や広報などはカブス側が行う。また、大会に参加する元MLB選手の手配などはMLB選手会が協力する。MLB選手会のTim Slavin氏は「選手会にとって、選手とファンの距離を縮めることは非常に重要。それに加えこの大会はチャリティーという側面もある。とても説得力のあるアイデアでした」と語る。

参考文献:
https://www.sportsbusinessdaily.com/Journal/Issues/2018/10/29/Events-and-Attractions/Cubs-golf-event.aspx

ロボットシェフ

カリフォルニアのベンチャー企業Miso Roboticsは、スタジアムのコンセッションで働くロボットを開発している。同社が開発したFlippyというロボットは、鉄板のバーガーをひっくり返したり、焼きあがったものをパンの上に乗せたりすることができる。

AI技術に基づき開発されたFlippyは、内蔵されたカメラで撮影された映像を分析することで自らの経験から学習することまでできる。バーガーの厚みや鉄板の温度が変わっても、バーガーをひっくり返すタイミングを逃さない。

Flippyは、2018年にロサンゼルス・ドジャースが本拠地のドジャースタジアムに取り入れた。ドジャースタジアムは、MLBの球場の中でも最も座席数が多く(56,000人収容)、チームもリーグ屈指の人気であるため、コンセッションはとても忙しい。しかし、Flippyは疲れることなくバーガーを作り続けるので、素早く一貫したクオリティで商品を提供できる。また、こういった単純作業は従業員のけがにつながるケースが多く、そのリスクを抑える効果もある。

参考文献:
https://www.sportsbusinessdaily.com/Journal/Issues/2018/03/05/Technology/Robots.aspx
https://www.sportsbusinessdaily.com/Journal/Issues/2018/11/05/Facilities/Dodgers.aspx

大記録に挑むオンラインゲーム

MLB Advacned Media制作の「Beat the Streak」は、1941年にヤンキースのジョー・ディマジオが打ち立てた不滅の大記録「56試合連続ヒット」に挑むオンラインゲームである。

ルールはいたって簡単。参加者は、MLB30球団の現役選手の中から、その日の試合でヒットを打ちそうな選手を1人選ぶ。もしその選手が、その日の試合で実際にヒットを打てば、1試合クリア。また次の日、選手を1人選び(前日と同じ選手でも可)、その選手がその日の試合でヒットを打てば、2試合クリア。これを繰り返し、57試合連続ヒットを達成できれば、ゲームクリアである。

このゲーム、プレーするのは無料だが、見事57試合連続ヒットをクリアすれば、なんと賞金560万ドルを獲得できる。

このゲームが登場してからこれまで17年が経過し、400万人以上がこのゲームに挑戦したが、達成者はいまだはゼロ。最長記録は、Robert Mosleyさんが2017年に記録した51試合である。

ルールが簡単で、登録費もゼロ、さらに成功すれば大金が手に入るため、MLBファンだけでなく、様々な人々の興味を引く。もともと野球に興味のなかった人も、連続ヒットを積み重ねていくうちに、MLB選手のことを学び、自分の選んだ選手を応援するようになる。そして自分の連続ヒットが途切れた時には、ジョー・ディマジオという大打者の偉大さを実感する。間口が広く、奥の深いゲームである。

参考文献:
https://www.mlb.com/news/beat-the-streak-leader-to-record-51-games/c-229995626
http://www.sportsbusinessdaily.com/Journal/Issues/2016/05/16/Leagues-and-Governing-Bodies/MLBAM-beat-the-streak.aspx

チケットビジネスの動向⑤ 複雑化するチケットビジネスの弊害

2018年、MLBは例年にない低調な観客動員を記録した。MLBは当初「記録的な悪天候のせい。天候が回復すれば観客動員も上向く」と楽観視していたが、夏に入って天候が安定しても観客数は思いのほか伸びなかった。

そこで現在、MLBのリーグ・チームは、観客動員に負の影響を与えていた可能性のある要因を洗い出しているのだが、その一つとして指摘されているのがチケットに関するものであった。

関係者によれば、消費者がチケットを買おうと思ったとき、そこにはチケットパッケージやサブスクリプション・チケットなど様々なオプションがあり、さらには、チームから直接買うか、セカンダリー・マーケットで買うかという選択肢もある。このプロセスがあまりに複雑で消費者が困惑しているのではないか、というのである。

オークランド・アスレチックスのDave Kaval氏は「我々はチケットをよりシンプルなものにするよう心掛けている」と言う。

また、MLBのパートナーであるStubHubのJill Krimmel氏は「我々は各チームとの連携をもっと密にしなくてはならない。たとえば、チームが広告メールを送った直後に我々が別の広告メールを送るようなことは顧客を混乱させてしまうので避けなくてはならない」と話す。

MLBは各チームが独自のチケット戦略を持っているが、この問題が続けば、リーグレベルで新たなルールが設けられる可能性もある。

参考文献:
https://www.sportsbusinessdaily.com/Journal/Issues/2018/10/08/Leagues-and-Governing-Bodies/MLB-Attendance.aspx

チケットビジネスの動向② サブスクリプション・チケット

ここ2~3年、北米スポーツ業界で注目を集めているのが、サブスクリプション・チケットである。顧客は、毎月(もしくは毎年)決まった金額を支払い、好きな時に好きなだけ試合を観戦することができる。

たとえば、オレゴン州立大学は、2016年からSQUADという月額制チケットサービスを提供している。このサービスでは、月額20ドルを払えば、同大学のスポーツをいつでも好きなだけ観戦することができる(人気のアメフト・バスケットボールの試合も含む)。

SQUADは、主に若い年代の卒業生をターゲットにしている。従来は、学生席チケットと寄付者用のボックス席チケットという2種類しかなかったが、オレゴン州立大学が行った調査によれば、そのどちらもターゲットのニーズは満たしていなかった。

同大学のLassiter氏は「Netflixにしても、携帯電話にしても、月額制でしょう。そのうえで、顧客がいつどのようにサービスを受けるか決定する。それが現代のライフスタイル。それなら、それをスポーツに応用してもいいでしょう」と話す。

プロスポーツでは、MLBの20チーム以上が「Ballpark Pass」というサブスクリプション・チケットを販売している。Ballpark Passは、毎月20~30ドルで基本的にいつでも観戦ができる(ただし、立見席)。

MLBの調査によれば、Ballpark Passは若い世代を中心に受け入れられ、 2017年にはリーグ全体で90万回使用された。

サブスクリプション・チケットが人気を得ている背景には、Netflixなどの定額制のエンターテインメントが消費者の間に浸透したことがあると考えられる。

参考文献:
http://www.sportsbusinessdaily.com/Journal/Issues/2016/05/23/Colleges/Oregon-State.aspx
http://www.sportsbusinessdaily.com/Journal/Issues/2017/06/26/Leagues-and-Governing-Bodies/Ballpark-Pass.aspx

MLBの新たな試合日程決定方法

2018年8月、MLBは2019年シーズンの試合日程を発表した。この試合日程、従来とは違う方法で決定されたという。

従来は、リーグが各チームを対象にアンケートを実施し、その回答に基づいて日程を組んできた。アンケートと言ってもとてもシンプルで、「母の日は本拠地で試合をしたいですか?」といった質問をしていたという。これではあまり多くの情報は得られない。

さらには、アンケートの回答者もチームによって様々で、選手やコーチに近いスタッフが回答することもあれば、ビジネスサイドのスタッフが回答することもあった。その結果、毎年各所から多くの批判の声が上がっていた。

そこで、今年は調査方法を変更。1年をかけて各チームの球団社長にインタビューを行った。そのなかで、ホームゲームや遠征ルートに関する希望、そしてチケットの販売方法などについて、より自由な形でより詳細な意見を引き出した。

MLBのChris Marinak氏は「このアプローチは、従来のものよりも双方向的であり、かつてないほど多くの意見を聞くことができている。球団社長と話すことで、チームのあらゆる側面を知ることもできる。これによって、様々な新しいアイデアを得ることができた」と語る。

「新しいアイデア」とはどのようなものがあったのか?

たとえば、ロサンゼルス・エンジェルスやタンパベイ・レイズなど数球団は、金曜日をオフにするアイデアを希望した。それまでは金土日の3連戦が一般的であったが、交流戦など注目の対戦カードでは、金曜日をあえてオフにして土日の2連戦を組むことで、そのシリーズをより特別なものとして演出することができると考えたのである。

また、ユニークな土地での開催も決定している。野球のゆかりの地であるネブラスカ州オマハ(大学野球の聖地)や、ペンシルバニア州ウィリアムズポート(リトルリーグ発祥の地)。さらには、東京、モンテレイ(メキシコ)、ロンドンでも開催予定だ。

初めて開催されるロンドンでの公式戦は、ヤンキース対レッドソックス。シーズン半ばの6月に行われる。両チームの負担を軽減するため、その前後の試合はイギリスから近い東海岸沿いで開催できるように日程が組まれた。

参考文献:https://www.sportsbusinessdaily.com/Journal/Issues/2018/08/27/Leagues-and-Governing-Bodies/MLB-sked.aspx