OneTeamとFanaticsが業務提携:「Compass」の機能拡大

2021年10月、カレッジスポーツ代理店大手のLearfieldが傘下に持つライセンシング会社Collegiate Licensing CompanyはOneTeam Partnersとの業務提携を発表した。

この業務提携の主な目的は、学生アスリートが自らの名前や肖像権を活用して収益を上げるために便利なプラットフォーム「Compass」を立ち上げることであった。

Compassは、学生アスリートが参加できるビジネス(トレーディングカード制作、ビデオゲーム制作、ユニフォーム販売等)を企業が提案した際に、それを学生アスリートに通知すると同時に、大学側にも学生アスリートが現在どのようなビジネス活動を行っているかを追跡する機能を提供している。

さらに、その数か月後の2022年2月、OneTeam PartnersはFanaticsとも業務提携を締結。

これに基づいて、Compassに登録した(自らの名前・肖像権の使用を許可した)学生アスリートのユニフォーム(選手の名前と背番号入り)は、Fanaticsが運営するウェブサイト・店舗で購入可能となった。

名前・背番号入りユニフォームの売上の一部は、その選手に還元されることになる。

参考文献:
https://www.sportspromedia.com/news/oneteam-clc-nil-ncaa-licensing-platform-college-athletes-endorsements/
https://www.sportspromedia.com/news/fanatics-oneteam-ncaa-college-football-licensing-deal-nil-merchandise/

ジョージア工科大学、Legendsと業務提携

Photo Credit: Rob Felt

ジョージア工科大学体育局は、代理店のLegendsと業務提携を結んだことを発表した。報道によれば、契約は11年間で契約金は明らかになっていない。

今後Legendsは、放映権、チケット販売、寄付金管理、ホスピタリティ、顧客データ管理、そしてeコマースなど、ジョージア工科大学体育局のあらゆる収入源を一括管理することになる。

体育局長のトッド・スタンズバリー氏によれば、Legendsのシステムを活用することで、総額4億ドル(約400億円)の収入を生むことが期待できるという。

カレッジスポーツの代理店としては、Learfield IMG Collegeが業界最大手として大多数の人気校と契約を結んでいる

ジョージア工科大学も、今回の契約を結ぶまではLearfield IMG Collegeと契約していたが、今回その関係を解消することになった。

一方Legendsは、ジョージア工科大学以外にも、ノートルダム大学やサンディエゴ州立大学と(そしてプロスポーツではニューヨーク・ヤンキースやダラス・カウボーイズなどと)契約を結んでいる。

参考文献:
https://www.sportspromedia.com/news/georgia-tech-yellow-jackets-legends-multimedia-rights-ticketing-ecommerce

LearfieldとIMG College②司法省の結論

LearfieldとIMG Collegeという二大マーケティング・エージェンシーの合併の申請を受けた司法省は一年以上をかけてその可否を検討した。そして2018年12月末、司法省が出した結論は「条件付きで可」であった。

司法省が提示した条件は2つ。

まずは「Exclusive negotiating window(独占交渉窓口)」の撤廃。Exclusive negotiating windowは、大学体育局がマーケティング・エージェンシーと契約を結ぶ際によく組み込まれる契約事項で、これによって大学はエージェンシーとの契約が切れる前に、まずそのエージェンシーと契約延長の交渉をする義務が生まれる。

エージェンシーの立場からすれば、一度契約を結んでしまえば、あとはその大学をキープできる可能性が高くなるので競争上の強みとなる。

逆に、新規エージェンシーにとっては厄介なシステムである。いくらクライアントを増やそうと思っても、ほとんどの大学はすでにパートナーがいて、しかもいつの間にか契約が延長されてしまう。交渉の機会さえ訪れないのだ。

公正な競争状態を実現するためにはこの契約事項を禁止することが有効。それが司法省の判断である。

もう一つの条件は「Non-compete clause(競合禁止条項)」の撤廃。Non-compete clauseは雇用主と従業員の間に結ばれる合意で、従業員の転職・独立の自由を制限することが目的である。具体的には、「州内の営業禁止」、「退職後2年間は起業不可」といった地理的・時間的な制限がつくことがある。

Non-compete clauseが撤廃されることで、LearfieldやIMG Collegeで実績を積んだ優秀なスタッフが起業したり転職したりする可能性が生まれる。その結果、業界内の人材の流動性が増し、より公正な競争状態が実現されやすくなる。

LearfieldとIMG Collegeはこれの条件を受け入れ、新会社Learfield-IMG Collegeの設立を発表した。

Learfield-IMG Collegeはどのような革新的なビジネスを展開するのか。Learfield-IMG Collegeの地位を脅かすような新規エージェンシーは現れるのか。今後のカレッジスポーツ・エージェンシー業界に注目である。

参考文献:
https://www.sportsbusinessdaily.com/Journal/Issues/2017/09/25/Colleges/Learfield.aspx
https://www.sportsbusinessdaily.com/Journal/Issues/2019/01/07/Colleges/Learfield.aspx

LearfieldとIMG College① 二大マーケティング・エージェンシーの合併

一般的に、アメリカの大学には「Athletic Department(体育局)」があり、そのなかに大学公認のスポーツチームが位置づけられる。この体育局のなかには他にも、学生アスリートの学業をサポートする部署、卒業生から寄付金を募る部署、そしてグッズ製作やスポンサーシップ販売を担当するマーケティング部署もある。

大学スポーツの人気と経済規模を考えれば、各大学が大きなマーケティング部署を持っているかと思うかもしれないが、実際はどの大学も少数のマーケティングスタッフでやり繰りしている。

それというのも、ほとんどの大学はマーケティング・エージェンシーと業務提携を結んでおり、そのエージェンシーがスポンサーシップ営業などの業務を代行しているからである。

そんな大学スポーツのマーケティング・エージェンシーとして業界トップに君臨してきたのがLearfieldとIMG Collegeの二社である。この二社は合計で200を超える大学と提携を結んでおり、そのマーケットシェアは83%に上る。

アメリカのカレッジスポーツは特に人気のあるカンファレンスが5つあり(ACC、Big Ten、Big 12、Pac-12、SEC)、それらをまとめて「Power Five」と呼ぶが、2017年9月時点で、Power Fiveに属する65校のうち56校がこの二社のいずれかのパートナーであった(下図参照)。

2017年9月、そんな二大マーケティング・エージェンシーが合併するという報道が業界に衝撃を与えた。オクラホマ大学のAthletic Director(体育局長)のJoe Castiglione氏は「あまりに信じられなくて何度も記事を読んでしまったよ」と言う。

この合併が意味するものは何か。

まず、二社間の競争がなくなる。これまでは「IMG CollegeとLearfieldの条件を比較してよい方と契約しよう」と考える大学やスポンサー企業も多くあったはずだが、そういった選択の自由がなくなる。

そしてそれに伴い、スポンサー料も上昇することが予想される(同じ理屈で、大学がエージェンシーに支払う契約金が上がる可能性もあるが、これについては両社とも否定している)。

また、数多くの人気チームの権利を保有することになるため、これまでより革新的なビジネスを展開することできる。

たとえば、Learfieldの「Campus+」や、IMG Collegeの「Social+」といったユニークなスポンサーシップをより拡大させる、あるいはそれらを発展させた新しいスポンサーシップをつくり出す、そういった可能性がある。

一方で「この二つが合併したら独占市場になっちゃうんじゃないの?」という疑問も当然出てくる。実際、LearfieldとIMG Collegeの合併の申請はアメリカ合衆国司法省によって審査されることになった。

参考文献:
https://www.sportsbusinessdaily.com/Journal/Issues/2017/09/25/Colleges/Learfield.aspx
https://www.sportsbusinessdaily.com/Journal/Issues/2019/01/07/Colleges/Learfield.aspx

「大学チームのスポンサー」から「大学のスポンサー」へ

カレッジスポーツチームのスポンサーシップ営業やグッズ販売などに長く携わってきた大手代理店のLearfieldが「Campus+ 」と呼ばれる新しいスポンサーシップの販売に挑戦している。

Learfieldはこれまで、大学チームが保有する知的財産(チーム名やロゴなど)の使用権を与えたり、チームが管理する施設やメディアを用いて宣伝する機会を提供したりすることによって、スポンサーを獲得してきた。

しかしCampus+では、チームだけでなく、大学が持つ権利や大学のキャンパス内にある様々な施設も活用してスポンサーシップを作り上げる。

たとえば、ルイビル大学の場合、Learfieldは大学事務とタッグを組み、スポンサーになりそうな企業を選定した。その結果、Canonと長期スポンサー契約を結ぶことに成功した。この契約によってルイビル大学は毎年100万ドル以上のスポンサー収入を得ることになるという。

一方で、Canonはキャンパス内にあるすべてのプリンターを提供する権利を得た。また、学生が印刷等をする学生センターに同社のロゴを掲載するなど広告の機会も得ている。さらに同社はルイビル大学のチームであるカージナルスが保有する施設を用いた宣伝を展開することも検討している。

近年アメリカでは、州立大学への補助金が削減されており、多くの大学が資金繰りに苦労している。ところが、大学事務はスポンサーシップ販売に必要な知識・経験・人脈が乏しい。それらを兼ね備えるLearfieldが提供するCampus+は、大学に新たな収益源を提供するものとして注目されている。

一方で、従来のスポンサーシップ販売にはなかった課題もある。

たとえば、これまでは、チームの許可さえとればどの企業と交渉しても基本的には問題なかったが、Campus+では教授、学生、卒業生など様々な関係者からの了承が必要になる。

プリンターのようにキャンパス全体で必要とされる商品の場合は賛同が得られやすいだろうが、今後どこまでスポンサー企業を広げていけるかは未知数である。

現在Learfieldは、ルイビル大学を含め10の大学とCampus+の契約を結んでいる。

参考文献:
https://www.sportsbusinessdaily.com/Journal/Issues/2018/11/26/Colleges/Learfield.aspx