一般的に、アメリカの大学には「Athletic Department(体育局)」があり、そのなかに大学公認のスポーツチームが位置づけられる。この体育局のなかには他にも、学生アスリートの学業をサポートする部署、卒業生から寄付金を募る部署、そしてグッズ製作やスポンサーシップ販売を担当するマーケティング部署もある。
大学スポーツの人気と経済規模を考えれば、各大学が大きなマーケティング部署を持っているかと思うかもしれないが、実際はどの大学も少数のマーケティングスタッフでやり繰りしている。
それというのも、ほとんどの大学はマーケティング・エージェンシーと業務提携を結んでおり、そのエージェンシーがスポンサーシップ営業などの業務を代行しているからである。
そんな大学スポーツのマーケティング・エージェンシーとして業界トップに君臨してきたのがLearfieldとIMG Collegeの二社である。この二社は合計で200を超える大学と提携を結んでおり、そのマーケットシェアは83%に上る。
アメリカのカレッジスポーツは特に人気のあるカンファレンスが5つあり(ACC、Big Ten、Big 12、Pac-12、SEC)、それらをまとめて「Power Five」と呼ぶが、2017年9月時点で、Power Fiveに属する65校のうち56校がこの二社のいずれかのパートナーであった(下図参照)。
2017年9月、そんな二大マーケティング・エージェンシーが合併するという報道が業界に衝撃を与えた。オクラホマ大学のAthletic Director(体育局長)のJoe Castiglione氏は「あまりに信じられなくて何度も記事を読んでしまったよ」と言う。
この合併が意味するものは何か。
まず、二社間の競争がなくなる。これまでは「IMG CollegeとLearfieldの条件を比較してよい方と契約しよう」と考える大学やスポンサー企業も多くあったはずだが、そういった選択の自由がなくなる。
そしてそれに伴い、スポンサー料も上昇することが予想される(同じ理屈で、大学がエージェンシーに支払う契約金が上がる可能性もあるが、これについては両社とも否定している)。
また、数多くの人気チームの権利を保有することになるため、これまでより革新的なビジネスを展開することできる。
たとえば、Learfieldの「Campus+」や、IMG Collegeの「Social+」といったユニークなスポンサーシップをより拡大させる、あるいはそれらを発展させた新しいスポンサーシップをつくり出す、そういった可能性がある。
一方で「この二つが合併したら独占市場になっちゃうんじゃないの?」という疑問も当然出てくる。実際、LearfieldとIMG Collegeの合併の申請はアメリカ合衆国司法省によって審査されることになった。
参考文献:
https://www.sportsbusinessdaily.com/Journal/Issues/2017/09/25/Colleges/Learfield.aspx
https://www.sportsbusinessdaily.com/Journal/Issues/2019/01/07/Colleges/Learfield.aspx