ATPとWTA、テニスの2協会が新アプリ共同開発

男子プロテニス協会(ATP)と女子テニス協会(WTA)が、「ATP WTA Live」という新アプリを発表した。

このアプリでは、結果速報、公式スコア、ランキング、スタッツ、そして大会の舞台裏を捉えた写真や映像を提供する。さらに、ストリーミングやゲームといった機能を今後追加することも検討しているという。

ATPとWTAは四大大会(通称グランドスラム)を初め、多くのテニス大会を主催している。それらの情報を一つにまとめることで、あらゆるテニスファンが集う場所をつくる。これが新アプリ開発の目的である。

同じプラットフォームで、同じ機能を使って、様々な大会の情報を得られる。この一貫性や使いやすさは、ファンの興味を維持するために重要である。

また、特定の選手や大会を追っているファンが、他の選手や大会の情報に触れる機会を増やすことにもつながる。

男子・女子スポーツ組織による協働という点で言えば、ヨーロッパのサッカークラブ(バルセロナ等)において、男子チームと女子チームをまとめてプロモーションすることで両チームを応援するサポーターを増やすという試みが近年よく見られる。

ATPとWTA両協会のブランディング・マーケティングを統括するダン・ジンジャー氏は、「私たちは同じファンを持つひとつのスポーツです」と語り、組織の垣根を越えて一貫性の高いサービスを提供することの重要性を説いた。

参考文献:
https://www.sportspromedia.com/categories/technology/atp-wta-live-mobile-app-tennis/

ジョコビッチ、男子プロテニス選手会の新設を発表

先週、プロテニス選手のノバク・ジョコビッチは「Professional Tennis Players Association(PTPA;プロテニス選手会)」の設立を発表した。

男子のプロテニス選手を代表し、大会のルール、賞金、年金、そして健康保険などに関する意見を発信することを目的とする。

他のメジャースポーツと異なり、テニスには労働組合が存在しない。選手個々が「個人事業主」として大会に参加し、その他ビジネスを展開する。

結果として、選手が一つの集団として意見を形成し、大会運営等に変化をもたらすことが難しかった。

Association of Tennis Professionals(ATP)がそういった役割を担ってきたはずだったが、ATPは自ら大会も主催しており、純粋な選手会とは異なる性質を持っている。

実際、ATP選手評議会のメンバーであったバセク・ポシュピシルは「現在のATPの組織構造では、選手が大会運営に重要な影響を与えることは極めて難しいことを痛感した」と話している。

選手会の新設にあたり、ジョコビッチは「これは労働組合ではなく、あくまで選手会です。ボイコットを呼びかけるようなことはしません。独自の大会を始めることもありません」と説明し、また、ATP選手評議会との共存も明言している。

しかし、ロジャー・フェデラー、ラファエル・ナダル、そしてアンディ・マリーといったトップ選手を初め、この動きに反対する選手も少なくない。

ナダルは「テニス界が一つになることで、大きなことを達成できます。選手、大会運営、そして競技団体が協調しなくてはいけません」とコメント。またマリーは、新選手会に女子選手が関わっていないことも大きな懸念材料だとした。

果たして、新団体の設立はテニス界にどのような変化を生むのだろうか。

参考文献:
https://www.sportspromedia.com/news/novak-djokovic-mens-player-association-ptpa-nadal-federer-murray-us-open
https://www.washingtonpost.com/sports/2020/08/30/novak-djokovics-new-players-association-proposal-divides-tennis-difficult-time/

コロナウイルスの影響:テニス業界のケース

テニスは、スポーツ業界のなかでも色々な面で特殊である。そして、その特殊性ゆえに、コロナウイルスの影響も他のスポーツ組織とは異なる。

たとえば、テニス界には主要団体が3つあり(ATP、WTA、ITF)、それぞれが独自に大会を運営している。加えて、全仏オープンや全米オープンなどは独自の主催者がいる。

その結果、大会によってコロナウイルスへの対処法が異なり、関係者に混乱をもたらしている。

また、NBAやMLBは試合中止に備えて保険に加入しているが、ATPなどのテニス団体は、大会中止用の保険に加入していないことが多い。

その結果、損失の埋め合わせができず、経済的な影響が大きくなってしまっている。

選手にも特異な点がある。

まず、テニス選手は大会に合わせて世界中から集まるため、運営側は選手の管理が難しい。選手によっては入国制限がかかっている場合もある。そういった問題を個別に対応していくのは手間がかかる。

また、巨額のエンドースメント契約を結んでいるトップ選手を除けば、ほとんどの選手は大会賞金を主な収入源としている。そういった選手にとって、試合中止は収入ゼロを意味する。

チームと雇用契約を結び、固定給をもらうNBAやMLBの選手とは、試合中止の意味合いが異なるのである。

参考文献:
https://www.sportsbusinessdaily.com/Journal/Issues/2020/03/16/Leagues-and-Governing-Bodies/Tennis.aspx

スポーツ賭博⑧ テニス団体の強硬姿勢

ここまで解説してきたように、四大スポーツリーグはスポーツ賭博に関して概ね肯定的である。一方で、そんな流れと逆行するように、スポーツ賭博から距離を取ろうとしているスポーツがある。テニスである。

テニスは、現在、最も八百長が確認されているスポーツである。たとえば、European Sports Security Associationという団体は八百長の疑いのある賭けを報告しているが、2017年の第4四半期に報告された114の疑わしい賭けのうち71がテニスにおけるものであった(次に多いのはサッカーで18)。

テニスは、四大大会で活躍するようなトッププレーヤーを除くほとんどのプロ選手が金銭的な問題を抱えている。ランキング下位の選手が獲得できる賞金は限られており、ランキングを上げようと思うと遠征費がかさむからである。

大会で得られる賞金よりも、闇賭け業者から得られる金額のほうが大きい。 ランキング下位選手にとって八百長の誘いは悪魔のささやきなのだ。

「Independent Review of Integrity in Tennis」というレポートによれば、テニスの試合で起こった八百長のほとんどはランキング下位の選手が関与しているという。

同様の問題は他のスポーツでも懸念されており、たとえば野球ではマイナーリーグが、バスケットボールではGリーグが賭けの対象外とされるケースが多い。

Independent Review of Integrity in Tennisでは、「テニスイベントおよびツアーはランキング下位の試合に関するデータをブックメーカーに販売したり、ブックメーカーとスポンサー契約を結んだりすることは禁止すべき」と結論付けている。

これと同調するように、2018年、主要なテニス団体の一つであるAssociation of Tennis Professionals(ATP)は、ATP World TourおよびChallenger Tourのスポンサーとしてギャンブル業者と契約を結ぶことを禁止した。

現在ATP関連のツアーは、全豪オープンのWilliam Hillを始め、いくつかのギャンブル業者がスポンサーとしてついている。今後、これらの業者とスポンサー契約を更新することは禁止される。

他のテニス団体では、Women’s Tennis Association(WTA)は、選手のスポンサーにギャンブル業者がつくことは禁止しているが、大会のスポンサーになることは禁止していない。そして全米オープンの主催者は「ギャンブル業者とは一切スポンサー契約を結ぶつもりはない」としている。

参考文献:
https://www.sportsbusinessdaily.com/Journal/Issues/2018/05/07/Leagues-and-Governing-Bodies/Tennis-gambling.aspx
http://www.tennisintegrityunit.com/storage/app/media/Independent%20Reviews/Final%20Report_191218.pdf
https://www.apnews.com/be7648ab16e54b679a027b25b469d5f0
https://www.sportsbusinessdaily.com/Journal/Issues/2018/06/25/Leagues-and-Governing-Bodies/Tennis-gambling.aspx

ピケが変えるデビスカップ

男子テニスの国別対抗戦「デビスカップ」は、1900年から続く伝統ある大会である。2019年、そのルールが一人のサッカー選手によって変えられる。

FCバルセロナに所属するジェラール・ピケは、2017年にKosmos Tennisというベンチャー企業を設立した。

31歳のピケはトップアスリートでありながら、起業家精神があり、他にもKosmos Studiosという映像制作会社を立ち上げている。

Kosmos Tennisの他の創設者は、音楽プロデューサーのNullah Sarker氏、Timbaland ProductionsのMike Evans氏、中国の大手代理店SecaのEdmund Chu氏、そして楽天の三木谷氏である。興味深いことに、テニス関係者は一人もいない。

2018年、Kosmos Tennisはデビスカップを主催するInternational Tennis Federation(ITF)と業務提携を結んだ。ITFの発表によれば、契約は25年30億ドル。

同年8月、ピケはFCバルセロナの練習を休み、フロリダ州オーランドで行われたITFの会議に参加した。そこで、207の加盟国を前に、Kosmos Tennisの計画をプレゼンした。その結果、加盟国の70%以上がこの計画を支持し、デビスカップのルール変更が公式に認められた。

Kosmos Tennisの計画によって、最も大きく変わるのが大会スケジュールだ。従来のデビスカップは、一回戦(2月)と二回戦(4月)、二回戦と準決勝(9月)、準決勝と決勝(11月)の間にそれぞれ数ヶ月のギャップがあった。これを、新ルールでは、全試合を11月の1週間に一気に行う。

この形式のほうが、スポンサー獲得や放映権販売が容易になるとKosmos Tennisは見ている。

しかしKosmos Tennisのビジョンは、大会の収益拡大に留まらない。同社のSarker氏は、2018年のインタビューの中で、ITFともう一つの国際的なテニス団体であるAssociation of Tennis Professionals(ATP)の統合に言及した。

「我々は2団体の統合を期待しています。我々がやろうとしているのは、テニスコミュニティを一つにすることなのです。それは選手だけではなく、組織も。それができたら素敵ですよね。全力を尽くして、あらゆる誤解を解いていたいと思います」。

参考文献:
https://www.sportsbusinessdaily.com/Journal/Issues/2018/12/17/Events-and-Attractions/Kosmos.aspx
https://www.daviscup.com/news/281842.aspx
https://www.kosmosholding.com/#about
https://www.kosmostennis.com/