ラムズのグッズ配達サービス

Image Credits: Postmates

今週月曜日、ロサンゼルス・ラムズは、オープンしたばかりのSoFiスタジアムで最初のホームゲームを迎えた。

スタジアムで生観戦ができない地元ファンのために、ラムズはグッズの生産・流通を担当するFanaticsと配達業者のPostmatesとユニークなサービスを企画した。

それがグッズの即配達サービスである。

これはロサンゼルス市内に住むファンが対象で、利用者はPostmatesのアプリから特設オンラインストアにアクセスし、ラムズグッズを購入することができる。

そして購入完了からすぐPostmatesの配達員が自宅にそのグッズを届ける。宅配ピザのような手軽さとスピードでグッズが手元に届くのだ。

同様のサービスはFanaticsが以前スーパーボウルやワールドシリーズの際に実施しているが、その時はUberが配達を担当していた。今年7月にUberがPostmatesを26.5億ドルで買収したことに伴い、今回はPostmatesが配達することとなった。

グッズビジネスにおける携帯端末の役割は年々増している。

Sportico社の調査によれば、今月ロサンゼルス・レイカーズがNBAファイナルを制した際にはFanaticsのウェブサイトで多くのグッズが売れたが、その85%は携帯電話からの購入だったという。

参考文献:
https://www.sportspromedia.com/news/la-rams-fanatics-postmates-merchandise-jersey-delivery-service-sofi-stadium

LAVA、プロスポーツ界に浸透中

現在アメリカでは、LAVAを導入するプロスポーツチームが増加している。NFLではデンバー・ブロンコスなど、NBAではサクラメント・キングスなど、MLSではLAギャラクシーなどがLAVAを活用している。

LAVAは、スタジアム中のコンセッション情報をリアルタイムで収集・分析するソフトウェアである。

たとえば、繁盛しているコンセッションと閑散としているコンセッションを特定することでスタッフの再配置に役立てたり、不足しつつある商品を見つけることで売り切れる前に補充したり、といったことを可能にする。

LAVAが提供するデータは、試合中のプロモーションにも生かすことができる。

たとえば、試合終盤に差し掛かった段階で、多くのホットドッグが売れ残っていることがわかれば、「1個買ったら1個無料」のような割引ができる。このようなシンプルなプロモーションならば、LAVAのデータを見てから数分で実行可能だという。

ロサンゼルスFCは、最近LAVAを導入したチームの一つである。
同チームのクリスチャン・ラウ氏は「LAVAを活用することで、携帯電話からデータを獲得し、それを運営上の変更に生かすことができます。これは大きいです。より迅速な対応ができています」と言う。

参考文献:
https://www.sportsbusinessdaily.com/Journal/Issues/2019/11/11/Technology/LAVA.aspx

Fanatics、Walmartと業務提携

Fanaticsは2019年1月、世界最大のスーパーマーケットチェーン、Walmartと業務提携を結んだ。今後、Fanaticsが生産するスポーツグッズがWalmart.comで販売されることになる。

現在Walmartは、Amazonという強力なeコマース企業との競争に勝つためにネット販売に力を入れている。Amazon.comは毎月およそ1億9700万のHP閲覧を記録する一方、Walmart.comは1億2700万閲覧である。

多くのスポーツリーグ(NFL, MLB, NBA, NHL, NASCAR, MLS, PGA)のグッズを生産・販売しているFanaticsとの提携は、Walmart.comの利用者を上げ、Amazonに対抗するための戦略なのである。

一方でFanaticsは、様々な商品を取り扱うWalmart.comに出品することで、未開拓の顧客層にアプローチすることができる。

FanaticsのMichael Rubin氏は「これはとてつもないチャンスです」と言う。「我々は弊社の商品をあらゆるところで販売したいと考えています。『どうすればスポーツグッズ産業を拡大することができるか』とよく聞かれますが、これが一つの答えではないでしょうか」。

Rubin氏は、Walmartとの業務提携を通して、Fanaticsの収益が23億ドルから27億ドルに拡大すると予測している。

FanaticsがWalmartに支払う金額に関しては明らかにされていないが、Walmart.comでの売り上げの7~15%がWalmartに還元されると見られている。

Rubin氏によれば、FanaticsはWalmart以外に2社と同様の契約を結んだというが、詳細はまだ発表されていない。

参考文献:
https://www.cnbc.com/2019/01/29/walmart-is-bringing-fanatics-to-its-website-to-sell-sports-apparel.html
https://news.walmart.com/2019/01/29/walmart-scores-big-for-fans-partners-with-fanatics-to-launch-specialty-shop-offering-sports-merchandise-on-walmartcom
https://www.sportsbusinessdaily.com/Journal/Issues/2019/02/11/Marketing-and-Sponsorship/Fanatics.aspx

Fanatics、eスポーツ産業に参入

2018年12月、FanaticsはeスポーツのOverwatch Leagueと業務提携を結んだ。この契約でFanaticsは同リーグのライセンシーとなり、今後チームや選手の著作権・肖像権を使ったグッズの生産と流通を担当する。

多くのスポーツ組織のグッズビジネスに携わってきたFanaticsにとって、eスポーツリーグとの業務提携は今回が初である。

Overwatch Leagueは2018年に開始したばかりの新興リーグだが、すでにIntelやToyota、T-Mobileといった大手企業とスポンサー契約を結び、試合中継に関してはTwitchと2年9000万ドルでネット放映権契約を締結している。現在、eスポーツ業界で最も注目を集めるリーグの一つである。

Overwatch Leagueは、放映権やスポンサーシップのビジネスが好調な一方、グッズビジネスは未だ発展途上にある(Overwatch Leagueだけでなく、多くのeスポーツリーグ・チームがグッズビジネスには苦戦している)。

Overwatch Leagueのグッズ販売は、これまで同リーグの親会社であるActivision Blizzard社が行ってきたが、同社が持つ施設やノウハウに頼ったビジネスモデルには限界があった。今回のFanaticsとの業務提携は、そういった弱点を克服し、同リーグのグッズビジネスに新たな可能性をもたらすものと言える。

また、Fanaticsとの提携は、Overwatch Leagueのブランディング的にも意味がある。Activision BlizzardのBrandon Snow氏によれば、eスポーツがメジャースポーツとして認識されるためには、従来の限定的なグッズ販売ではなく、様々な場所でeスポーツのグッズが目につく状態にする必要があるという。300を超えるグッズショップ・ショッピングサイトを運営しているFanaticsがOverwatch Leagueのグッズ販売を行えば、その知名度は広く知れ渡り、同リーグのブランドに好影響を与えるだろう。

ちなみに、Overwatch Leagueに所属するチームの中には、独自にグッズ販売を行うチームもあった。たとえば、New York ExcelsiorはUndefeatedとNikeと協同でグッズ販売をしている。今回Overwatch LeagueがFanaticsと契約を結んだことは、そういった各チームが展開するグッズビジネスの自由度を限定することを意味するが、元々グッズ収入が大きくないeスポーツチームにとってそれほど痛手ではなく、今回の契約は好意的に受け止められている。

参考文献:
https://www.engadget.com/2018/12/03/overwatch-league-fanatics-blizzard-merchandise-gear-apparel/
http://www.espn.com/esports/story//id/24200145/sources-paris-guangzhou-teams-expected-join-overwatch-league http://www.espn.com/esports/story//id/22015103/overwatch-league-broadcast-twitchtv-two-year-90-million-deal
https://www.sportsbusinessdaily.com/Journal/Issues/2018/12/03/Esports/Overwatch.aspx

Fanatics④ ユニークなプロモーション

近年Fanaticsは、様々なユニークなプロモーションキャンペーンを展開している。

たとえば、2018年1月、American Expressと共同で「Jersey Assurance (ユニフォーム保証)」を提供することを発表した。このサービスでは、あるNBA選手のユニフォームを購入したあと1年以内にその選手が他チームに移籍した場合、無料で別のユニフォームと交換することができる。

Fanaticsの調査によれば、ファンがユニフォームの購入をためらう一番の理由は、その選手が自分が応援するチームを抜けてしまうことであり、今回のサービスはその不安感を取り除く狙いがある。

また、2018年のスタンリーカップ(NHLのチャンピオンを決定するシリーズ)開催中には、Uberと共同でNHLグッズを配達するサービスを実施した。消費者は、Uberのアプリでグッズを購入することができ、それが10分以内には手元に届く。Fanaticsは同様のサービスを2016年のワールドシリーズと2017年のスーパーボウル期間中にも実施しており、好評を得ている。

参考文献:
https://www.sportsbusinessdaily.com/Journal/Issues/2018/01/22/Marketing-and-Sponsorship/Lefton-Report.aspx
https://www.sportsbusinessdaily.com/Daily/Morning-Buzz/2018/06/08/Uber.aspx

Fanatics② 顧客第一の姿勢

現在Fanaticsは、NFL、NBA、MLB、NHLといったメジャーリーグとライセンシング契約を結んでいる。

NBAの場合、正規ユニフォームのライセンシーはNikeで、レプリカユニフォームのライセンシーがFanaticsである。Nikeが提供する正規ユニフォームは200ドルするが、 Fanaticsが提供するレプリカユニフォームは70ドル程度。NBAのユニフォームの売り上げは、95%以上がレプリカユニフォームであり、 Fanaticsはこのマーケットを獲得したことになる。

FanaticsはNHLのレプリカユニフォームのライセンシーでもある。2015年にNHLと16年間契約を結んだFanaticsは、まず数ヶ月をかけて顧客調査を行った。

同社のRaphael Peck氏は「当時販売されていたユニフォームは、選手が着ているのと全く同じものか、ちょっとだけ安くしたものしかありませんでした。グッズの製作段階でファンの意見が全く取り込まれていなかったんです」と言う。「まずは、ユニフォームのどの要素がファンにとって最も重要かを調べました。その結果、ファンはもう少し軽くて洗濯できるものを求めていることがわかりました。ごわごわしていない、直に着たとしても着心地がいいようなもの。その意見に基づいて、柔軟性の高い新素材を使うことにしました」。

さらに、Peck氏は「ファンにとって今欲しいものがすぐに手元に届かないのは最悪でしょう」と言い、流通経路の拡大も課題に挙げた。「数年前NBAでジェレミー・リンがフィーバーとなったときのように、だれか流行の選手が現れると、多くの人は今すぐにその選手のユニフォームが欲しくなる。そのニーズに応えるためには、24時間年中無休で商品を販売する必要がある。従来の流通方法ではそれが不可能でした」。

これらの発言から、Fanaticsが顧客第一に徹していることがわかる。そしてそれを実際のビジネスに反映できているのは、Fanaticsが縦型生産モデルを拡大してきたからに他ならない。

Fanaticsは2020年からMLBのレプリカユニフォームの製造も開始する見込みであり、同社がどのようなデザインでどのように販売するのか注目される。

参考文献:
https://www.sportsbusinessdaily.com/Journal/Issues/2017/01/16/Marketing-and-Sponsorship/Fanatics.aspx
https://www.sportsbusinessdaily.com/Journal/Issues/2017/07/10/Marketing-and-Sponsorship/Fanatics.aspx

Fanatics① 縦型生産モデル

スポーツリーグ・チームがグッズを販売する際、自らグッズを生産することは稀で、通常グッズ製作会社とライセンシング契約を結ぶ。

人気チームの場合、ライセンシング契約の申し込みが殺到するため、その申し込みを精査する代理店(IMG LicensingやLearfieldなど)が間に入ることもある。

ライセンシング契約を結んだグッズ製造会社(ライセンシーと呼ばれる)は、生産したグッズを卸売業者に出荷し、卸売業者はそれを小売店に出荷、最終的に小売店が顧客にグッズを販売する。これが一般的なグッズの流通経路である。

ところが、近年、その一般的な流通モデルに改革が迫られている。

NFLのChris Halpin氏は「NFLのグッズの需要は落ち込んでいない。しかし伝統的な小売業の状況は厳しい」と話す。「我々は、NFLのライセンシーに、卸売・小売業者に頼るのではなく、グッズを顧客に直接届けるシステムを構築するように働きかけている。それを実現した企業が、大きな需要をつかむことができる」。

これを実現しているのが、Fanaticsである。

Fanaticsは元々小さなeコマース会社であったが、それを2011年に買収したMichael Rubin氏が会社を抜本的に改革。小売だけでなく自らグッズを生産しそれを顧客に直接販売するようになった。

Fanaticsはこれを「Vertical Manufacturing Model(縦型生産モデル)」と呼んでいる。

縦型生産モデルを採用することによって、Fanaticsは流通の過程をすべてコントロールでき、注文を受けてから素早く商品を発送できるようになった。たとえば、ある選手が突然移籍しても、その選手の新しいユニフォームをいち早く生産し販売できる。また、仲介業者が手数料を取ることもないので、比較的安値で商品を提供することもできる。

Fanaticsは北米のスポーツ業界で今最も注目されている企業と言っても過言ではない。今回の連載ではこのFanaticsにスポットを当てたい。

参考文献:
https://www.sportsbusinessdaily.com/Journal/Issues/2018/02/12/Leagues-and-Governing-Bodies/SB-merch.aspx
http://fanaticsinc.com/about/our_history/
http://www.espn.com/mlb/story/_/id/18208401/mlb-announces-uniform-deal-armour-fanatics-starting-2020
https://www.recode.net/2018/5/23/17380964/nfl-nike-fanatics-sports-gear
https://www.sportsbusinessdaily.com/Journal/Issues/2017/07/10/Marketing-and-Sponsorship/Fanatics.aspx