MLB、マイナーリーグ選手に和解金1億8500万ドル支払いへ

LAS VEGAS, NV – MARCH 08: The American flag waves in the breeze along with the Nevada state flag and a Minor League Baseball flag during Big League Weekend featuring the Chicago Cubs and Cincinnati Reds on March 8, 2020 at Las Vegas Ballpark in Las Vegas, Nevada. (Photo by Jeff Speer/Icon Sportswire via Getty Images)

2014年2月、元マイナーリーガー3名がMLBを相手に訴訟を起こした。原告側は、MLBの各球団が最低賃金や時間外労働に関する法律に違反していると主張。

MLB側は訴えの棄却を試みたが、2020年10月、最高裁がこれを退けた。

実際に裁判が行われて莫大な損害賠償を命じられる可能性もあったが、MLBはそうなる前に原告と和解に達した(和解は現在裁判官の承認待ち)。

とはいえ、この和解が正式に成立すれば、MLBはマイナーリーグの選手たちに対して1億8500万ドル(約255億円)を支払うことになる。

そして、そこから弁護士費用などを差し引いた約1億2019万ドルが、数千人の選手に配分されるという。

加えて、MLBは、春季キャンプや教育リーグの期間中にマイナーリーグの選手に給与を支払うことを各球団に認めた(従来、そのような行為を禁じられていた)。

現在、マイナーリーグの選手は5000人以上おり、その大半は年間4800ドル(約66万円)から1万4700ドル(約202万円)の収入を得ている(給与はシーズン中にのみ支払われる)。一部の選手は貧困ライン以下の給与を受け取っているのが現状だ。

訴訟を主導したギャレット・ブロシュース弁護士は以下のようにコメントしている。

「メジャーリーグの夢を追い求める選手たちが、貧困レベルの賃金、あるいは全く賃金を得られず、経済的に苦しい状況にあることを目の当たりにしてきました」

「今回の和解は、マイナーリーグの選手にとって、公平で公正な補償制度に向けた記念すべき一歩です」

マイナーリーグの選手たちは、さらなる労働環境改善のためにリーグへの働きかけを続けていくという。

参考文献:
https://www.sportspromedia.com/news/mlb-minor-league-baseball-players-pay-lawsuit-settlement/

ヨーロッパに広がるベッティング広告禁止の流れ

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今月、ベルギーでは、2022年末までにギャンブル産業の広告活動を抑制するための新法案が提出された。

これが成立すれば、テレビ、ラジオ、SNSを含む多くの媒体での広告活動が禁止されることになる。

また、スポーツクラブのユニフォームやスタジアムの看板などを使った広告にも厳しい制限がかけられる。

新法案の背景にある問題について、ベルギーのクイッケンボーン連邦司法大臣は以下のように説明した。

「わが国でギャンブル産業が利益を拡大しているのは、すべてギャンブル依存症の人たちのおかげです」

「毎日あらゆる方面からギャンブル広告が流れ、ギャンブル依存を助長しており、依存者のなかには若者も含まれます。10万人以上がギャンブル依存症と見られる行動を見せ、その3分の1はすでに深刻な状態に陥っています」

ヨーロッパでは、昨今、ギャンブル関連の広告を制限する動きが広まっており、これがスポーツ界にも影響を及ぼしている。

たとえば、先日の投稿でも解説した通り、イギリスではギャンブル関連の広告にアスリートを起用することが禁じられた。

スペインでも、2020年、ギャンブル関連企業のロゴをユニフォームに掲出することを止めるようにサッカークラブが指示を受けている。

アメリカでスポーツベッティングが人気を拡大し、日本でも全面解禁を望む声が上がり始める中、ヨーロッパでは逆にベッティング企業が批判を集めているのは、興味深い現象である。

参考文献:
https://www.sportspromedia.com/news/belgium-betting-advertising-ban-sports-sponsorship/
https://www.sportspromedia.com/news/la-liga-betting-shirt-sponsors-2020-21-season/

イギリス、ギャンブル広告のアスリート起用を禁止へ

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イギリス広告慣行委員会は、ギャンブル関連企業が広告(テレビ・ネットCM、印刷出版物、看板広告など)にアスリートを起用することを禁止する方針を発表した。

同時に、スポーツチームの公式ユニフォームやスタジアムを活用した広告活動も禁止された。

イギリススポーツ界において、ギャンブル関連企業は重要なスポンサーであった。

たとえば、2021年9月時点で、プレミアリーグ20クラブのうち9クラブのユニフォームスポンサーがギャンブル企業で、下位リーグの6クラブと合わせると、その合計契約金は年間1億ポンド(約150億円)を超えていた。

今回の決定は、これらのスポンサー収入源が今後なくなる(もしくは減少する)可能性を示している。

さらに、現在イギリス政府は「Gambling Act 2005」というギャンブルに関する法律の見直しを行っており、ギャンブル関連企業によるスポーツへの投資がさらに厳しく制限される可能性がある。

興味深いのは、イギリスのサッカークラブのなかにはこの流れを歓迎する動きがあることだ。

2022年3月、イングリッシュ・フットボールリーグ(プレミアリーグの下部リーグ)に所属する複数クラブが、「ギャンブル関連企業のユニフォームスポンサーシップを禁止するべき」という内容の書簡をイギリス政府に送っている。

参考文献:
https://www.sportspromedia.com/news/uk-sports-betting-gambling-advertising-ban-cap-asa/
https://www.sportspromedia.com/news/premier-league-betting-gambling-shirt-sponsorship-ban/
https://www.sportspromedia.com/news/betting-gambling-shirt-sponsorship-ban-efl-luton-bolton-forest-green-tranmere/

最高裁、「アルストン訴訟」で原告側を支持

今週、カレッジスポーツに関する重要な判決が下された。この裁判に関しては、今年2月に解説している

簡単におさらいすると、この裁判は2014年に元カレッジフットボール選手のショーン・アルストン氏が起こしたもので「アルストン訴訟」とも呼ばれる。

この訴訟で原告側は「NCAAは、学生アスリートが大学から受け取れる便益は奨学金とその他の受講料のみとしているが、この規則は独占禁止法に違反している」と主張した。

これに対し、NCAAは「この規則はアマチュア性を維持するために必要であり、優秀な選手を大学が過剰な報酬で誘惑するのを防ぐものだ」と弁護していた。

この訴訟は下級裁判所での審議を経て、2020年12月、連邦最高裁判所が審議することを発表し、その判決に注目が集まっていた。

そして今週、最高裁は原告側の主張を支持する判決を全会一致で下した。

これにより、今後、学生アスリートに与えられる便益が拡張される(たとえば、コンピューター、科学器具など)。

なお、この訴訟では大学から学生アスリートへの直接的な報酬は争点になっていない。したがって、この判決を以って「学生アスリートがスポーツをすることで大学から収益を得るようになる」とは言えない。

しかし、ここ数年論争を呼んでいるNIL問題に影響を与えることは必至で、NCAAはビジネスモデルの大改革を強いられる。

参考文献:
https://www.sportspromedia.com/news/ncaa-compensation-case-supreme-court-ruling-student-athletes-college-sports

NIL問題と最高裁の判断④

2020年12月16日、連邦最高裁判所は「アルストン訴訟」を審議することを発表した。

最高裁がカレッジスポーツの反トラスト法に関する訴訟を扱うのは1984年以来となる。

この訴訟自体はNIL問題とは関係ないが、最高裁の判決がNIL問題に及ぼす影響も否定できない。

専門家のベアード・フォゲル氏は「最高裁の判決はアマチュアスポーツに大きな影響を及ぼすでしょう。NCAAと各大学のビジネスモデル全体にもインパクトがあるはずです」は言う。

ボイシ州立大学のサム・エーリック教授は、もしNCAAの主張が認められればここまで進展してきたNIL規則改定が振り出しに戻る可能性が出ると話す。

注目の判決は今年6月に下される。

参考文献:
https://www.washingtonpost.com/politics/courts_law/supreme-courtncaa/2020/12/16/90f20dbc-3fa9-11eb-8db8-395dedaaa036_story.html
https://www.washingtonpost.com/sports/2020/12/31/ncaa-supreme-court-compensation/
https://www.sportsbusinessdaily.com/Journal/Issues/2021/02/08/Law-and-Politics/NCAA-Supreme-Court.aspx

NIL問題と最高裁の判断③

ウエストバージニア大学時代のショーン・アルストン氏

2014年に元カレッジフットボール選手のショーン・アルストン氏が起こした、いわゆる「アルストン訴訟」では、学生アスリートが大学から受け取ることのできる便益が争点となった。

それまでNCAAが認めていたのは奨学金とその他の受講料のみ。

これに関して原告側は「NCAAの規則は独占禁止法に違反している。どのような便益を学生アスリートに与えるかは各大学が自由に決定できるはずだ」と主張した。

2019年3月、カリフォルニア州の地方裁判所は、原告側の主張を概ね支持。

学生アスリートに与えられる便益を大学教育に関係する品々(コンピューター、科学器具、楽器など)まで拡大するべきという判決を下した。

NCAAはこの判決を不服として控訴したが、2020年5月、控訴審が第一審の判決を支持した。

ここまではオバノン訴訟と同じ流れだが、違うのはここから。

控訴審の判決にも納得のいかないNCAAが上告をしたところ、最高裁がこれを審議すると発表したのである。

オバノン訴訟ではNCAAの上告を棄却した最高裁が、なぜ今回は受け入れたのか。そこにはどのような意図があるのだろうか。

つづく。

参考文献:
https://www.si.com/college/2018/09/04/alston-v-ncaa-trial-news-updates-ncaa-cost-attendance
https://www.espn.com/college-sports/story/_/id/29191519/appeals-court-upholds-ruling-colleges-pay-all-ncaa-athletes-education-expenses

NIL問題と最高裁の判断②

カレッジスポーツのNIL問題が大きな注目を浴びるきっかけとなったのが、エド・オバノン氏が2009年に起こした訴訟である。

この訴訟で問題となったのが、NCAAによる学生アスリートの名前・肖像の商用利用(ビデオゲーム制作など)であった。

「NCAAは選手の名前・肖像を使って収益を上げていながら、それを一切選手に還元していない。これは反トラスト法・独占法違反だ」というのが原告の訴えである。

2014年、カリフォルニア州の地方裁判所は原告の訴えを認めた。その後NCAAは控訴・上告したが、最後まで判決が変わることはなかった。

このオバノン訴訟を契機に、NCAAの規則に関する訴訟が続いた。

その代表的なものがショーン・アルストン氏の起こした訴訟で、こちらもカリフォルニア州の地方裁判所が舞台となった。

そしてこの「アルストン訴訟」こそ、現在アメリカスポーツ業界で話題となっている訴訟なのである。

つづく。

参考文献:
https://www.lexisnexis.com/community/casebrief/p/casebrief-o-bannon-v-ncaa
https://www.washingtonpost.com/politics/courts_law/supreme-courtncaa/2020/12/16/90f20dbc-3fa9-11eb-8db8-395dedaaa036_story.html

NIL問題と最高裁の判断①

ここ数年のアメリカスポーツ業界で最もホットなトピックの一つが「学生アスリートが自らの名前や肖像権を使用して収入を得ることは認められるべきか」という問題である。

ちなみに、この問題はName(名前)、Image(イメージ)、Likeness(肖像)の頭文字をとって「NIL問題」と呼ばれることがある。

現在、この問題に関連する重要な裁判が連邦最高裁で行われているのだが、その内容が大きな注目を集めている。

その重要性と今後の流れを理解するために、今週はこのトピックを掘り下げていきたい。今日は、ここまでの簡単なおさらいをする。

・NCAAはアマチュアリズムの精神に基づき、学生アスリートが給与を受け取ることを禁止してきた。
・カレッジスポーツが巨大なビジネスとなり、NCAAが毎年何十億ドルという収入を上げている一方、それが一切選手に還元されないことに疑問や批判の声が集まり始めた。

・2019年9月、カリフォルニア州が「カリフォルニア州の大学に通う学生アスリートは、企業とスポンサー契約を結び、収益を上げる権利が認められる」という州法を成立させた。
・フロリダ州やイリノイ州などの州議会、さらには合衆国議会でもカリフォルニア州と同様の法案が審議され始めた。
・これを受け、2019年10月、NCAAは学生アスリートのスポンサー契約を解禁する方針を発表した。
・現在NCAAは新規約の内容を議論している。

次回の投稿では、現在注目を集めている裁判について解説する。

参考文献:
https://www.sportsbusinessdaily.com/Journal/Issues/2021/02/08/Law-and-Politics/NCAA-Supreme-Court.aspx

イギリス政府、ギャンブル業者によるスポーツスポンサーシップを禁止か

イギリス政府が、ギャンブル業者によるスポーツ組織へのスポンサーシップの禁止を検討していることが明らかになった。

イギリスには2005年に成立した「Gambling Act 2005」という法律があり、これに基づいて、多くのギャンブル業者がスポーツ組織の協賛となり、広告活動を展開してきた。

たとえば、プレミアリーグの8クラブがギャンブル業者のロゴをユニフォームの胸部分につけている。

しかし現在、イギリス政府はギャンブルに関する法律のあらゆる分野を抜本的に見直しており、その分野の一つとして「ギャンブル業者のマーケティングや広告活動」が対象になっているのである。

仮にギャンブル業者によるスポンサーシップが禁止されれば、多くのスポーツ組織がスポンサー契約の変更を余儀なくされる。

この動きに対して、イングリッシュ・フットボールリーグ(EFL)は以下のような声明文を発表している。

「ギャンブル業者は毎年4000万ポンド(約55.7億円)を超えるスポンサー料をリーグ・クラブに支払っており、各クラブの収益に与える貢献度は非常に大きい。とりわけ、コロナウイルスの影響で各クラブの財務状態が厳しくなっているなか、ギャンブル業者の重要性は日増しに高まっている」

参考文献:
https://www.sportspromedia.com/news/uk-gambling-act-law-betting-ban-sports-sponsorship-premier-league-efl
https://www.scoreandchange.com/overview-of-the-2020-2021-premier-league-sponsors/#:~:text=Kit%20sponsors%3A%2020%20clubs%2C%207%20brands&text=We%20will%20see%20Adidas%2C%20Nike,and%20ten%20in%202016%2F2017.

民主党議員、学生アスリートの補償に関する法案を作成中

先週、複数の民主党議員が学生アスリートに関する連邦法を作成していることがわかった。

この法案は「College Athletes Bill of Rights(大学アスリートの権利に関する法律案)」と呼ばれ、学生アスリートが「公平かつ公正な補償」を受け取れるようにすることを目的としている。

スポーツ関係のケガや病気に対する医療保険や、自由に転校する権利(現行の規則では、別の大学に移ると一定期間公式戦に出場できないことがある)、そして自らの肖像権を活用して(スポンサー契約やグッズ販売など)収益を上げる権利などが「公平かつ公正な補償」に含まれる。

肖像権を用いたビジネス権に関しては、すでにカリフォルニア州フロリダ州など複数の州がそれぞれ州法を成立させることでこれを認めているが、今回作成されているのは連邦法である。つまり、大学がある州に拘わらず、全国の学生アスリートにこの権利が保障される可能性があるということである。

さらに、この法案には、大学スポーツの運営組織(NCAA、カンファレンス、体育局など)と学生アスリートとの間で「revenue-sharing(収入分配)」を行うという内容も含まれるという。

これは重大な内容である。

ここで言う「収入分配」が具体的に何を指すのかは現時点では不明瞭だが、大学が学生に給与を支払うことを意味する可能性もある。

そうなれば、学生アスリートに与えられる報酬は飛躍的に伸びるが、タイトルナインとの兼ね合いなど複雑な問題も発生する。

なお、法案の審議は来年初めに行われる見通しである。現時点では、共和党議員からの支持は得られておらず、この法案が成立しない可能性も大きいと言う。

参考文献:
https://www.sportspromedia.com/news/ncaa-college-athlete-bill-commercial-rights