「バイデン大統領」は米スポーツ界にどのような影響を及ぼすか①

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報道によれば、アメリカ大統領選挙は、バイデン氏の当選が確実となった。この結果はスポーツ界にどのような影響を及ぼすのだろうか。

一部関係者によれば、バイデン大統領誕生までに、プロチームの売却が頻発する可能性があるという。それはなぜか。

民主党に所属するバイデン氏は、富裕層への課税強化を推進すると見られる。

たとえば、資本利得(Capital Gain)に対する税率を最大20%から39.6%まで引き上げることを提案している。

資本利得というのは、購入した資産(株式や不動産など)の価値が上昇することによって生まれる利益である。単純化すれば、資産の購入価格と売却価格の差が資本利益となる。

そしてこの資産にはスポーツチームも含まれる。しかも、スポーツチームはかなり優秀な資産である。

Forbesの査定によれば、プロチームの年平均成長率(CAGR)は、NBAが約19%、MLBが約14.2%、NFLが約11.6%だという。これだけ成長率の高い資産はなかなかない。

つまり、長年所有していたチームを売却するときには、大きな資本利得が生まれるということである。

しかし問題はそれにかかる税金である。これが20%か39.6%によって、何百、何千億円という差が生まれかねない。

「そうなる前にチームを売却しよう」。そう考えるオーナーも少なくないのではないか。これが、「プロチーム売却が頻発する」と予想する根拠である。

(次回は具体的な事例を見ていきます)

参考文献:
https://www.sportsbusinessdaily.com/Journal/Issues/2020/11/09/Law-and-Politics/Election-teams.aspx

NFLと社会問題に関するCM

NFLのプレーオフが佳境を迎えている。

先週末にカンファレンス・チャンピオンシップが行われ、あとは2月2日に開催されるスーパーボウルを残すのみとなった。

そんななか、先週の試合中継で流れたあるCMが話題となっている。

それは、2015年にフロリダ州で起こった、警察官による黒人男性射殺事件に関する映像である。

事件で犠牲となったコーリー・ジョーンズさんのいとこである元NFL選手のアンクワン・ ボールディン氏のナレーションでCMは始まり、事件の再現映像、そして事件後にNFL選手たちがとった行動などが映し出される。

これはNFLが2019年に立ち上げた「Inspire Change」というプログラムのCMである。

Inspire Changeは、社会にポジティブな変化をもたらすことが目的で、主に「教育・経済的発展」、「警察とコミュニティの関係改善」、「刑事司法の構造改革」に重きが置かれている。

NFLと社会問題と言えば、2016年にコリン・キャパニック氏が始めた抗議運動を思い出される人も多いだろう。

当時、NFLはキャパニック氏の行動を積極的に支持することを避けたため、社会問題解決に対して消極的なイメージが浸透してしまった。

このInspire Changeにはそんなイメージを払拭する狙いがある。

NFLはこのCMをスーパーボウルの中継でも流す予定だが、NFLのファンには警察に理解を示す保守的な層も多く、そういったファンはこのCMを見たときに良い思いはしないだろう。

また、今年のスーパーボウルは、大統領選に出馬しているマイケル・ブルームバーグ氏とトランプ大統領が自身の選挙CMを流すことも明らかになっている。

例年にも増して社会的・政治的なメッセージが多いスーパーボウルとなりそうだ。

参考文献:
https://adage.com/article/special-report-super-bowl/nfl-takes-police-shootings-black-men-new-ad/2228616
https://operations.nfl.com/football-ops/economic-social-impact/inspire-change/

NCAAと司法省の職員が会合

先週の報道によれば、昨年11月、NCAAとアメリカ合衆国司法省の職員が会合を開き、同団体の新アマチュア法に関して話し合ったという。

NCAAは、これまでアマチュア法を厳守し、学生アスリートが給与を受け取ることを一切禁止してきた。

しかし、昨年、カリフォルニア州が州内の大学に通う学生アスリートにスポンサー契約から収入を得ることを許可する法律を成立させ(2023年施行)、それにオハイオ、コロラド、イリノイ、フロリダ州が続く意向を示している。

これを受け、NCAAもアマチュア法変更の意向を発表。具体的な内容はまだ発表されていないが、4月頃に草案が発表されると見られている。

今回の司法省職員との会合は、NCAAに寄せられる政治的なプレッシャーを表す出来事の一つと捉えられる。

実際、ある関係者によれば、NCAAの新アマチュア法の内容次第では、司法省が、反トラスト法に基づき、何かしらの行動を起こす可能性があるという。

NCAAのアマチュア法が、反トラスト法に違反するという指摘は以前からある。

たとえば、昨年9月、大学選手会(National College Players Association)の幹部が、司法省のワークショップに参加し、NCAAの反トラスト法違反を調査するよう求めている。

昨年までは、州議員・知事がNCAAにプレッシャーをかけているという構図であったが、今後はそこに司法省も加わるかもしれない。

参考文献:
https://www.cnbc.com/2020/01/14/doj-antitrust-chief-met-with-ncaa-over-rules-for-paying-college-athletes.html

IOC、政治的メッセージに関する新基準を発表

先週木曜日、IOCは新たな基準を発表した。新基準の目的は、オリンピック期間中にアスリートが政治的なメッセージを発信することを厳格に取り締まること。東京オリンピックから適用される。

アスリートが政治的なメッセージを発信すること自体は、オリンピック憲章50条によって禁止されてきたが「どういった言動が政治的と見なされるか」に関しては明確な基準がなかった。

今回発表された基準では、「膝をつくこと」「アームバンドに政治的なメッセージを書き込むこと」「メダル授賞式を妨げること」「拳を突き上げるような手を使ったジェスチャー」などが禁止事項として挙げられた。

一方で、新基準はアスリートが自由に意見を発信できる場も明確にした。

たとえば、インタビュー、プレスカンファレンス、SNSなどでは、メッセージを自由に発信することが認められた。

新基準を違反した場合の罰則に関しては、IOCではなく各国のオリンピック委員会(日本の場合はJOC)に一任するとも発表された。

IOCが罰則を与えない以上、メダルはく奪のような重い罰則は与えられないとも推測される。

たとえば、昨年8月、ペルーで開催された国際大会においてハンマー投げのウェン・ベリー選手が国歌斉唱中に拳を突き上げた。

アメリカオリンピック委員会は、これを政治的な行動と見なし、「12か月の保護観察」という罰則を科している。

さて、東京オリンピックでは、禁止された行動を強行するアスリートは現れるのか。現れた場合、どのような罰則が与えられるのか。SNSではどのようなメッセージが発信されるのか。注目である。

参考文献:
https://www.nytimes.com/2020/01/09/sports/olympics/olympics-protests-politics.html
https://www.olympic.org/-/media/document%20library/olympicorg/news/2020/01/rule-50-guidelines-tokyo-2020.pdf

2019年、北米スポーツ業界の動向①

北米スポーツビジネスの動向を伝えるメディアであるSports Business Journalが毎年恒例の読者アンケートの結果を公表した。

この雑誌の読者の多くはスポーツビジネスの関係者・有識者なので、この調査結果を見ることで北米スポーツ業界の現状を概観することができる。

今週は5日間に渡って、興味深い結果をいくつか紹介していく。

Q. 今年のスポーツ業界で一番の話題は?

  1. カリフォルニア州が学生アスリートのエンドースメント契約を認める法案を成立させたこと(43%)
  2. NBAと香港デモを巡る論争(37%)
  3. 四大スポーツリーグとスポーツ賭博業者の業務提携(29%)
  4. アメリカ女子サッカー代表のワールドカップ優勝と賃金問題(29%)
  5. MLB、ヨーロッパで初の公式戦(26%)

Q. 今年最も興味を引いたアスリートは?

  1. ザイオン・ウィリアムソン(23%)
  2. ミーガン・ラピノー(13%)
  3. レブロン・ジェームス(6%)
  4. カワイ・レナード(5%)
  5. タイガー・ウッズ(4%)

Q. 他業界と比較して、スポーツ業界が遅れているところは?

  1. 男女の平等(59%)
  2. 福利厚生(44%)
  3. 人種的平等(33%)
  4. 顧客サービス(16%)
  5. データ・アナリティクスの活用(16%)

Q. 各スポーツ組織はアメリカ国内での、社会的・政治的な立場を明確にすべき?

  1. そう思う(49%)
  2. そう思わない(51%)

参考文献:
https://www.sportsbusinessdaily.com/Journal/Issues/2019/11/25/Reader-Survey/State-of-industry.aspx

トランプ大統領、スーパーボウル中継で選挙CMを流すことを検討

NFL王者を決めるスーパーボウルは、全テレビ番組を対象にした総合視聴率ランキングで常にトップ争いをするキラーコンテンツである。

当然、その中継で流れるCMも価値が高い。たとえば、一般的な30秒CMの値段は560万ドル(約6億円)とも言われている。

そんなスーパーボウルのCMに関して興味深いニュースが飛び込んできた。

トランプ大統領が、2020年のスーパーボウルで自身の選挙CMを流すことを検討しているというのである。これが実現すれば、アメリカ大統領としては前代未聞である。

トランプ大統領は、今年のワールドシリーズでも選挙CMを流しており、この時は25万ドル(2700万円)を支払ったと伝えられている。

スーパーボウルが中継される2020年2月2日は、アイオワ州で行われる討論会の前日。大統領選を戦う上で重要となるこの討論会を前に、国民のイメージを向上させることが狙いだと考えられる。

一方で、国民的スポーツイベントの最中に選挙広告が流れることに関して批判的な意見を持つファンは少なくない。実際に選挙CMが流れた場合、どのような反応が起こるのか、注目である。

なお、トランプ大統領陣営は、スーパーボウル中継を担当するFox Sportsとすでに交渉を始めているが、まだ最終的な合意には至っていないという。

参考文献:
https://sports.yahoo.com/president-trump-super-bowl-liv-campaign-ad-034742991.html

マイナーリーグの構造改革に国会議員が待った

先日の投稿で解説した通り、現在、MLBはマイナーリーグの抜本的な構造改革を検討している。42ものチームが消滅すると言われるこの改革案に対して、マイナーリーグのオーナーを中心に大きな反発が起こっていることはすでにお伝えした通りだ。

これに加え、国会議員からも反対の声が上がった。

今週火曜日、共和党・民主党の垣根を越えて、104名の国会議員が「MLBが提案した改革案に強く反発する」という趣旨の文書を連名で発表。

文書には「仮にこの案が実行されれば、選手育成や強いファンの愛着を実現してきたマイナーリーグという仕組みの健全性が損なわれてしまう」「MLBには改革案の再考を強く勧める」と記されている。

アメリカの小さな町では、マイナーリーグが数少ないエンターテインメントとして地元住民から愛されているケースが多く、それがなくなることの精神的・経済的な影響は小さくない。そのような考えが今回の議員たちの行動に繋がったと考えられる。

なお、MLBとマイナーリーグ側は近くミーティングを予定している。また進展があり次第、お伝えします。

参考文献:
https://sports.yahoo.com/congress-urges-mlb-to-scrap-minor-league-overhaul-in-bipartisan-letter-002602003.html
https://www.theday.com/local-news/20191119/congressmen-urge-major-league-baseball-to-scrap-radical-minor-league-overhaul

米中貿易戦争、スポーツ界への影響

「米中貿易戦争」と呼ばれるアメリカと中国の政治的対立は様々な産業に影響を与えているが、それがスポーツ業界にも及びつつある。

2019年1月、テニスのWTAはスポンサー契約合意間近であった中国企業との交渉決裂を発表した。

中国ではあらゆる契約に政府の署名が必要であり、この署名を得るのが現状難しいと判断した上での決定ではないかと関係者は見ている。

WTA会長のMicky Lawler氏は「国際的な政治情勢を鑑みて交渉は中断することになった」として、米中貿易戦争の直接的な影響については明言しなかった。

しかしある関係者によれば、合意間近であった交渉が急転したのは中国企業のファーウェイのCFOがカナダで逮捕された翌日であったという(ファーウェイのCFOは、米国の対イラン貿易制裁に違反した疑いで逮捕された)。

スポーツビジネスコンサルタントのMarc Ganis氏は、今回の交渉中断は全く驚きではないという。中国でのビジネスにも携わる同氏曰く「中国政府はほぼすべてのことに関与してくる」と言う。「WTAのスポンサー契約ともなれば国際的な注目も浴びる。これは中国では慎重に扱うべき問題です。これほど大きなスポンサー契約を締結するためには政治的な問題が解決される必要があるでしょう」。

WTAは5社のスポンサー企業を抱えるが、WTAはさらに包括的なトップスポンサーを2012年から探していた。

参考文献:
https://www.sportsbusinessdaily.com/Journal/Issues/2019/01/28/Marketing-and-Sponsorship/WTA-China.aspx

スポーツ賭博⑤ スポーツリーグの反応

2018年5月の最高裁判決後、スポーツリーグはどのように動いたのだろうか?

まず、NBAとMLBは、すぐさま政治家たちに対するロビー活動を開始した。つまり「スポーツ賭博を合法化する法案を通してくれませんか?」というお願いをして回ったのである。これに少し遅れたが、NFLも同様の動きを見せた。NHLはこの動きには加わらず、独自のアプローチを試みた(各リーグの動きの詳細は次回以降詳しく解説します)。

スポーツリーグがスポーツ賭博合法化のお願いを始めたのにはいくつか理由がある。

まず、法を整備することで、合法と非合法の区別を明確にし、ギャンブル市場に秩序を持たせることができる。

スポーツ賭博に関してスポーツリーグが最も恐れているのは、ギャンブル運営業者が選手に働きかけて八百長をさせる可能性である。

法が未整備だとそういった動きを効果的に取り締まることが難しい。一方で、昨日説明したように、州がスポーツ賭博に関する法律を制定すると、ギャンブル運営業者に免許取得が義務付けられる。これによって、いかがわしい業者がスポーツ賭博に関わろうとするのを防ぐことができる。

スポーツリーグがスポーツ賭博合法化の働きかけをするもう一つの大きな理由は「新たなビジネスチャンスを創造するため」である。

具体的には、以下の2分野で好影響を期待する。

1つ目はスポンサーシップ。これまで多くのメジャーリーグ・チームは、ギャンブル関係の企業(カジノやブックメーカー等)をスポンサーにすることを禁止していた。スポーツ賭博が合法になることで、そのような制限が取り払われる。

スポーツ賭博が一般的であるイギリスでは、プレミアリーグの20チーム中9チームのユニフォームスポンサーがブックメーカーで、EFL Championshipでも24チーム中17チームがユニフォームにブックメーカーのロゴをつけている。また、ロシア・ワールドカップでは、試合中継の合間に流れたテレビCMの約20%がブックメーカーのものであった。

もう一つが、観戦経験の向上によるファン拡大。ただ試合を見るだけでは飽きてしまう人も、自分がお金を賭けることでそのチームを全力で応援するようになる。結果として、より試合を楽しむようになり、ファンの拡大につながる。これがスポーツリーグ・チームが期待する効果である。

参考文献:
https://www.si.com/nba/video/2015/10/02/nba-commissioner-legalize-federal-sports-betting-david-stern-adam-silver
https://www.sportsbusinessdaily.com/Journal/Issues/2017/11/27/Law-and-Politics/Gambling.aspx
https://www.sportsbusinessdaily.com/Journal/Issues/2017/12/11/Law-and-Politics/Gambling.aspx
https://www.sportsbusinessdaily.com/Journal/Issues/2018/05/21/Law-and-Politics/Gambling.aspx
https://www.sportsbusinessdaily.com/Journal/Issues/2018/07/23/Opinion/SCOTUS.aspx
https://www.wsj.com/video/nba-adam-silver-on-why-he-supports-legal-sports-betting/27DC4F82-D2D1-4890-AF3D-C551375620A2.html