レアル・ソルトレイク、オーナーがクラブ売却へ

ここ数日間、レアル・ソルトレイクは難局に立たされている。

先週27日、オーナーのデル・ロイ・ハンセン氏が人種差別的な発言をしたという前職員の告発が報道された。

翌28日には、MLSとNWSLが調査を開始。

そして30日、ハンセン氏は声明を発表し、差別的な発言をしたことについて深く謝罪した。

さらに「レアル・ソルトレイクが先に進んでいく上で最善なのは、新しいオーナーを迎えること」として同クラブの売却に向けて準備を進めていることを認めた。

なお、ハンセン氏が売却しようとしているのは、「ユタ・サッカー・ホールディングス」というレアル・ソルトレイクの親会社で、同社はユタ・ロイヤル(NWSL)とレアル・モナークス(USL)という2クラブも所有している。

この報道を受けて、すでに複数の人物が買収に名乗りを上げている。

元アメリカ代表選手で、現在はトロントFCでプレーするジョジー・アルティドール氏。

NFLのスター選手JJ・ワット氏。

Qaultricsというソフトウェア会社の創設者であるライアン・スミス氏。

そして、ユタ・ジャズを所有しているLarry H Miller Sports Group。

バラエティーに富んだ候補者が並ぶが、果たして、新オーナーは誰になるのだろうか。

参考文献:
https://www.sportspromedia.com/news/dell-loy-hansen-real-salt-lake-sale-racism-allegations-mls-nwsl
https://theathletic.com/2027796/2020/08/27/dell-loy-hansen-has-history-of-racist-comments-as-rsl-owner/

Dr. Turickインタビュー⑧なぜ人種問題を理解する必要があるのか

Q. 最後に、スポーツビジネスに携わる上でなぜ人種問題を理解しなくてはいけないのか教えてください。

A. 理由は大きく2つあります。

まず、先述したように、人種問題への理解が乏しいとそれが原因で様々な問題が起こります。

実際、多くのスポーツ関係者が人種差別的な言動をしたとして公に謝罪をしたり、減給されたり、解雇されたりしています。こういった事態を避けるためには、人種問題に対する深い理解が必要です。

次に、人種問題への深い理解は、効率的なスポーツ組織運営を助けます。

たとえば、私が20人のスタッフを雇って、新しくビジネスを始めるとします。ここで白人だけを雇ったらどうなるでしょう。おそらく同じような経験と考え方をもった集団になってしまいます。そのような状況で問題を解決しようとしても画期的なアイデアはなかなか生まれません。

一方で、マイノリティを雇っていれば、育ってきた環境や経験、交友関係も大きく異なります。結果として、様々な切り口と新鮮な意見を得ることができます。

アメリカでは2050年までに白人の割合が50%を切ります。人種的多様性は社会の大きな一部であり、スポーツ業界の大きな一部なのです。

スポーツビジネスに携わる人々には、「あらゆる人種は平等な機会が与えられるべき」という社会的な視点だけでなく「人種的多様性はビジネスに役立つ」という経営的な視点からも人種問題の理解を深めていってほしいですね。


Dr. Turickのインタビューは以上です。「もし追加で質問があれば、いつでもどうぞ」と言ってくださったので、Dr. Turickに質問のある方はコメント欄にてお知らせください。お読みいただきありがとうございました!

Dr. Turickインタビュー⑦スポーツに政治は持ち込むべきではない?

Q. それでもアスリートが政治的なメッセージを発することには賛否両論ありますね。

A. 数年前、レブロン・ジェームス選手が社会問題に関する発言をした際、Foxニュースのローラ・イングラハムというキャスターは「Shut up and dribble(黙ってドリブルしろ)」と言いました。

このような発言はしばしば耳にしますが、これは「アスリートは政治的な発言をするべきではない」という考えから生じるものです。

スポーツが果たす重要な役割の一つは、実社会の問題やストレスを忘れる機会を与えることです。

たとえば、現在、コロナウイルスの影響で多くの人が不安やフラストレーションを抱えています。人々は、そういった問題から一瞬でも解放されたくて、スポーツイベントの再開を心待ちにしています。

しかし、この社会には、生まれてからずっと大きな不安や恐怖、ストレスに苦しめられている人々がいます。それもただマイノリティというだけで。

そういった人々の苦しみを無視して、なぜ多数派の息抜きを優先しなくてはいけないのか。すべての人が平等にスポーツを楽しめる社会にすることが先決ではないか。

これが政治的な動きに参加するアスリートたちの立場です。

Dr. Turickインタビュー⑥アスリートの影響力

Q. プロ選手に関してはいかがでしょう。

A. プロ選手も積極的に政治的なメッセージを発信していますよね。

たとえば、WNBAのマヤ・ムーア選手は世界最高のバスケットボール選手の一人ですが、今はバスケットボールではなく、社会問題に取り組むべきだとしてリーグ戦不参加を表明しています。

Q. プロ選手にとってスポーツは仕事であり、所属チームに対する責任もありますよね。その責任よりも、社会問題を解決する責任感を優先するわけですか。

A. その通りです。どんなトップ選手であっても、マイノリティであれば、マイノリティとしての扱いを受けた経験があります。同じ境遇の家族や友人がどのような思いをしているかを理解しています。彼ら・彼女らが感じる責任感はそうした実体験に根差しているのです。

そして有名人としてのステータスを確立したトップ選手は、多くのメディアや人々から注目を集めることができます。同じことを言っていても、一般人であれば無視されることも、彼ら・彼女らが言えば人々は耳を傾けるわけです。それなら自分には声を上げる責任があるだろう。そう感じるわけです。

象徴的な例があります(これはまたカレッジスポーツになってしまいますが)。

数年前、ミズーリ大学では学生が学長の辞職を求めて抗議活動を行いました。大学構内で人種差別的な事件が多発したにも拘わらず、何の対処もしなかったからです。しかし、数か月に及ぶ抗議活動を受けても、学長は辞職を否定し続けました。

そこで、同大学のフットボールチームが動きました。練習・試合の不参加を表明したのです。するとどうでしょう。2日もしないうちに学長は辞職を発表したのです。

何か月にも渡る学生の抗議運動を意にも介さなかった学長が、フットボールチームが動いた途端すぐに辞職した。これがアスリートの影響力です。

Dr. Turickインタビュー⑤声を上げるアスリート

Q. ここまでスポーツにおける人種問題について話してもらいました。もう一つの観点として、スポーツを通した人種問題の解決というテーマがあると思いますが、その点についてはどう思いますか。

A. 現在アメリカでは人種差別に対する抗議活動が広がっていますが、そのなかで、アスリートが自分の影響力を認識し始めています。

たとえば、カイリン・ヒル選手(ミシシッピ州立大)は「ミシシッピ州が州旗を変えるまで、ミシシッピ州立大学では一切プレーしない」と宣言しました。

補足:ミシシッピ州は最近まで連合国旗を取り入れた州旗を使用していたが、今月、州旗の変更が可決された。

マーヴィン・ウィルソン選手(フロリダ州立大)は、同大学の「ドーク・キャンベル・スタジアム」の施設名変更を求める署名活動に参加しました。ドーク・キャンベルという人物に人種差別的な歴史があるという理由です。

チュバ・ハバード選手(オクラホマ州立大)は、同大学コーチのマイク・ガンディ氏が「OAN」のTシャツを着て撮った写真をSNSに投稿したとして「これは我慢できない。状況が変わらない限り、もうオクラホマ州立大には一切関わらない」と宣言しました。

OANはOne American Newsという極右メディアで、人種差別に対する抗議運動を「茶番」「テロ活動」などと批判していました。

ハバード選手のコメントは大きな反響を呼び、ガンディ氏は選手たちに謝罪しました。

上記の例は、言ってしまえば、すべて一大学生の言動です。それが各所に大きな影響を与えているのです。それはひとえに彼らがアスリートであり、彼らが多くの人の注目を集め、多くの人と特別なつながりを持っているからなのです。

Dr. Turickインタビュー④コーチの待遇にも現れるRacial Tasking

Q. 他にRacial Taskingが現れる場面はありますか?

A. この概念は、コーチの待遇にも応用できます。

昔と比べ、黒人のコーチは増加しています。しかし、求められる役割は白人コーチと必ずしも同じではありません。

カレッジフットボールを例にとると、黒人コーチに求められがちな役割は以下の2つです。

一つ目は、リクルーティング(有望な高校生選手をスカウトすること)。黒人の有望選手がいたときに、白人コーチではなく黒人コーチが選手や家族に挨拶に行ったほうが、その選手を獲得しやすいだろうという狙いです。

もう一つは、選手の世話役です。黒人選手が入学したあとに悩みを抱えた際、相談に乗るのは白人コーチよりも黒人コーチのほうが適任だろうという発想です。

つまり、戦略を練ったり試合の組み立てを考えたりする役割は、黒人コーチには必ずしも期待されていないのです。

言い換えれば、白人コーチが試合を勝つことに専念する傍らで、黒人コーチは選手の獲得や世話に時間や労力を割いているということですね。これはフットボールコーチとしてキャリアを築く上で大きな問題です。選手の獲得や世話の経験をいくら積んでも、試合での成果がないと上には上がれません。

Q. 問題はそのコーチの評価や役割が能力ではなく人種に基づくものだということですね。

A. はい、その通りです。

Dr. Turickインタビュー③浸透するRacial Taskingという観点

Q. Racial Taskingはそれまでの人種差別と比べると非常に微妙なものだと思うのですが、研究者だけでなく、選手や一般の人も問題視しているのでしょうか。

A. ヒューストン・テキサンズのデショーン・ワトソン選手は「デュアル・スレット・クォーターバック(Dual-threat quarterback)」と呼ばれることを嫌います。

「デュアル・スレット・クォーターバック」はパスもランも得意なクォーターバックを指す褒め言葉なのですが、彼にとっては自分のパス能力を十分に評価されていないと感じるようなのです。

ワトソン選手だけでなく、黒人クォーターバックは、「自分のパス能力が正当な評価を受けていない」と感じ始めています。

一般の人たちも、この問題を認識し始めています。

たとえば、昨年NFLでMVPを獲ったラマー・ジャクソン選手は、カレッジフットボールでとてつもない成績を収めたのですが、ドラフトでは31チームが1巡目での獲得を見送りました。

「彼はいい選手だけど、NFLのクォーターバックとして活躍できるのか?」、「十分なパス能力があるのか?」ということを疑問に思うチームが多かったわけですね。それと言うのも、彼は大学時代にパスではなくランを選択する機会が多かったからなんです。

これを見た人々は「なんでこんないい選手がずっとドラフトで選ばれなかったのか」と不思議に思い、この問題に気付いたわけです。

Racial Taskingという言葉を知らなくても、この観点は浸透し始めているように感じます。

Dr. Turickインタビュー②Racial Taskingとは

Q. Dr. Turickが研究している「Racial Tasking(人種的タスク決定)」という概念について教えてください。

A. Racial Taskingは、アメリカのカレッジフットボールで検証された概念です。

アメリカのカレッジフットボールでは、長らく、黒人選手がクォーターバックというポジションをやる機会に恵まれませんでした。それが現在では多くの黒人クォーターバックがいます。

これはいいことですよね。人種に拘わらず色々なポジションをやる機会が与えられているわけですから。

じゃあ、人種差別はなくなったと言っていいのでしょうか?ここで重要な知見を与えてくれるのがRacial Taskingという概念です。

ある研究者は、アメリカのカレッジフットボールのコーチは、白人クォーターバックにはパスをするよう指示することが多く、黒人クォーターバックにはランをするよう指示することが多いという傾向を発見しました。

これは選手の将来に多大な影響を及ぼします。というのも、NFLチームが大学生クォーターバックを評価するときに「どれだけパスがうまいか」という点を重視するからなんです。

つまり、白人クォーターバックは自分がどれだけパスがうまいかを十分アピールできるのに対して、黒人クォーターバックにはそのような機会が与えられていないのです。

結果として、カレッジフットボールで結果を残しても「彼は素晴らしい選手だけど、素晴らしいクォーターバックかどうかは判断できないね」と言われてしまうわけです。

このように、表面的には平等な機会が与えられているように見えても、よく見てみると平等には扱われていないことがある。Racial Taskingは、ポジションに基づく差別ではなく、タスクに基づく差別を明らかにする概念なのです。

Dr. Turickインタビュー①スポーツは本当に実力主義?

Q. Dr. Turickが人種問題を研究しようと思った動機を教えてください。

A. 私が大学生のころ、アメリカンフットボールのチームで働いていました。そこで私がとても興味を持ったのは、大勢いる選手の85%くらいが黒人選手なのに対し、コーチ陣はほとんど全員白人だったことです。

そこで私が思ったことは、「何かしらの理由で黒人はコーチになりたがらないのか、それとも、何かしら構造的な欠陥があるのかどちらかだ」ということでした。

そこで調査をしたところ、コーチになりたい黒人は実はたくさんいることがわかりました。問題は、彼ら・彼女らにコーチになる機会が十分に与えられていないことだったのです。

スポーツは実力の世界だと多くの人は思っています。能力があれば活躍できると。しかしそれは間違いです。あなたが黒人なら、あなたが女性なら、あなたがゲイなら、あなたがムスリムなら、あなたが多数派でないなら、能力に見合った機会は必ずしも得られないのです。

Q. 85%の選手が黒人で、ほぼ全員のコーチが白人ということに関して選手たちはどう思っていたのでしょう。

A. 彼らは小さい頃からずっと白人コーチに教わっています。彼らにとってはコーチが白人であることが「普通」なわけです。そうなると、なぜそうなっているのかという疑問すら持ちません。

同様の現象は別の場面でも見られます。たとえば、女性アスリートのなかには女性コーチに教わりたくないという選手がいます。これは彼女たちが小さいころから男性コーチに教わり続けて、それに慣れているためなのです。

「慣れているから」「そういうものだから」と多くの人が納得してしまう。ここに構造的な問題があります。

FedEx、ワシントン・レッドスキンズにチーム名変更要求

先週、大手物流企業のFedExは、ワシントン・レッドスキンズにチーム名の変更を求めた。

このチーム名は「ネイティブアメリカンに対して差別的である」として、10年以上に渡って論争を巻き起こしてきたが、昨今の人種差別に対する抗議運動をきっかけにして、批判の声がさらに強くなっている。

そういった批判の声は、プレッシャーとなって企業に押し寄せる。

FedExのもとには、87の株主・投資会社から「レッドスキンズがチーム名を変更しなければ、同チームとの関係は解消すべき」という趣旨の書面が届いたという。

FedExは、レッドスキンズと2億500万ドル(約220億円)のネーミングライツ契約を結んでおり、また、フェデリック・スミス会長がレッドスキンズの所有権を保有するなど、同チームにとって極めて重要なスポンサーであり、今回のチーム名変更要求には大きな意味がある。

また、もう一つの重要なスポンサーであるNikeは、すでにオンラインストアからレッドスキンズのアパレルを全て削除しており、検索欄で「レッドスキンズ」と打ち込んでも何も出てこないようになっている。

これらを踏まえて、レッドスキンズは先週3日に声明文を発表。「チーム名を慎重に再検討する」としている。

参考文献:
https://www.sportspromedia.com/news/washington-redskins-name-change-fedex-nfl-nike-pepsi-dan-snyder