アメリカ、ラグビーW杯招致へ

写真:AFP/アフロ

米国ラグビー協会は、2027年または2031年に開催されるラグビーワールドカップの招致活動を正式に開始した。

実現すれば、アメリカ大陸(北米・南米)で初めての開催となる。

現時点でロサンゼルス、ラスベガス、シカゴ、ニューヨークなどの都市が開催に関心を示しており、試合の一部はNFLのスタジアムで行われる予定だ。

招致委員長のジム・ブラウン氏は次のようにコメントしている。

「アメリカの地でワールドカップを開催するという私たちのビジョンを紹介する、誇らしい瞬間です」

「私たちは、この招致活動に自信を持っています。関係者のサポート、開催に関心を示す都市、メガスポーツイベントを開催できる世界トップクラスのインフラ、そしてアメリカのスポーツファン人口。ラグビーをアメリカ国内そして世界中でより大きくする絶好の機会です」。

参考文献:
https://www.sportspromedia.com/categories/major-events-sustainability/usa-launches-official-bid-host-2027-2031-rugby-world-cup/

ラグビーワールドカップ、開催国決定方法を変更

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World Rugbyは、ラグビーワールドカップの開催地決定方法を変更すると発表した。

これまでの決定方法は不透明な点が多く、それが時に論争を呼んできた。

たとえば2023年大会の開催国を選ぶ際、大会組織委員会は南アフリカを推薦したが、World Rugbyはその意見には従わず、代わりにフランスを開催国に選んだ。

決定方法をより公正でわかりやすくするために、今後は電子投票システムを導入し、すべての投票の詳細を公開するという。

今回の決定に際してWorld Rugbyのビル・ボーモント会長は「私は組織の透明性や意思決定における一貫性を高めるために取り組んできました。特にラグビーワールドカップは、男子・女子ラグビー最高峰の大会かつ主な収入源として、念頭に置いています」と語った。

次に開催国が決定されるのは2027年大会で、現在オーストラリアとロシアが立候補している。投票は2022年5月に実施される予定だ。

参考文献:
https://www.sportspromedia.com/news/rugby-world-cup-host-2027-usa-russia
https://www.thenationalnews.com/sport/rugby/world-rugby-to-review-process-of-picking-world-cup-hosts-after-france-beat-south-africa-to-2023-event-1.676196

Dr. McLeodインタビュー⑫日本ラグビー界への知見

Q. 日本では今、ラグビーのプロリーグ設立が議論されています。新リーグに際して注意すべきことは何でしょう。

A. 先ほどお話したように、ラグビー市場に存在する組織は互いに影響を及ぼしています。

したがって、新リーグ立ち上げに際しては、「リーグを成功させるために自分たちは何をすべきか」とだけ考えるのではなく「リーグ成功のために、他のラグビー関係者は何をすべきか」も考える必要があるでしょう。

それが明確になれば、それをサポートすることが可能になります。

また、「他のラグビー関係者(たとえば高校ラグビーや大学ラグビー)が成功するために、自分たちプロリーグは何をすべきか」も考えなくてはなりません。

アメリカの場合、プロリーグが果たすべき重要な役割は、アマチュア選手に明確な目標を与えることでした。日本の場合も同様の役割が期待されるかもしれませんが、全く異なるかもしれません。

それをきちんとクリアにすることが第一だと思いますね。

Q. それは非常に重要な知見ですね。プロ化の議論では、「需要はあるのか」「ターゲットは誰なのか」というように、消費者に注目することが多いのですが、ラグビー市場に存在する他の組織や関係者の視点も重要ということですね。

A. 日本というユニークな文化のなかでラグビー市場がどのように形成・機能しているのか、私も非常に興味を持っています。いつか日本に行って、研究したいですね。

Dr. McLeodインタビュー⑪アメリカのラグビー市場

Q. 話を戻すと、Dr. McLeodは、アメリカで設立予定であった4リーグの経営陣にインタビュー調査をされましたよね。どのような知見が得られたのでしょうか。

A. 設立の経緯やルールなど大きく異なる4リーグですが、いくつかの共通点がありました。

まずは、リーグ設立時の目標が「ラグビーを人気にしたい」という非常にざっくりとしたものだったということ。

これは、これからビジネスを始めようとする組織の目標としてはあまり良いものではないですよね。

一般的に言って、新しくビジネスを始めるのであれば、収益率や持続可能性を考えた具体的な目標が必要です。彼らにはそれがなかった。これは非常に興味深い点でした。

そこで、さらに話を掘り下げていくと、そもそも彼らは自分たちの力だけで成功を収められると思っていないことがわかりました。

「プロリーグが成功するためには、ユースや高校、大学、社会人といったあらゆるレベルのラグビー組織の貢献が必要である。またプロリーグ側もそういったアマチュアラグビーの成功に貢献する」。そういった考えを持っていたのです。

アメリカには、長らくプロラグビーリーグが存在しませんでした。そのため、たとえ有望な選手であっても、将来ラグビーを職業にして大金を稼ぐというイメージが湧かなかった。先ほど私が説明した言葉を使うなら、「時間差の報酬」を期待することができなかったわけです。

目標を失った選手は、アメリカンフットボールのようなスポーツに流れてしまいます。

プロリーグが成立すれば、アマチュアの選手にとって目指すべき場所が明確になり、選手の流出が食い止められ、アマチュアリーグの競技力維持に繋がります。

そして、アマチュアリーグが高い競技力を維持し、優秀な選手を育成すれば、それがプロリーグの競技力向上にも繋がります。

この相互の影響こそが、アメリカのラグビー市場を理解するポイントで、4リーグが共通して「プロリーグの成功にはアマチュアリーグの貢献が不可欠だ」と考えていた理由です。

Dr. McLeodインタビュー⑩ラグビー団体と労働市場

Q. プロクラブを締め出してまでアマチュアリズムを貫いてきたラグビー・ユニオンが1995年にプロ化に踏み切ったのはなぜだったのでしょう?

A. それには、新興ラグビー団体の台頭が大きく影響しています。

新たに立ち上げられたラグビー団体が、選手とプロ契約を結び、給与を与えることで、それまで所属していた団体から有望な選手を引き抜こうとしたのです。

ラグビーの歴史を見てみると、様々なラグビー団体が立ち上がり、それぞれがラグビーと言うスポーツをコントロールしようと覇権を争ってきた歴史であることがわかります。

覇権を奪うには有望な選手を囲い込むことが重要になります。そして、そのためには、選手に給与を支払う、つまりプロ化に向かって進むのは当然の道だったのでしょう。

私はこのインタビューの序盤で労働市場の重要性について話しました(コメント欄参照)。

そこで「アスリートがいなければ何も売ることも買うこともできない」と言いましたが、ラグビーがそれを示す良い例です。

結局、ラグビーというスポーツをコントロールするためには、アスリートという労働者を引き込むことが第一なのです。

Dr. McLeodインタビュー⑨ラグビーとアマチュアリズム

Q. ラグビーがプロ化を拒んだ文化的背景とは?

A. ラグビーが生まれたイギリスでは、アマチュア法が非常に重要視されてきました。

アマチュア法の目的は、スポーツを通じたお金儲けを禁ずること。

この内容から、アマチュア法がスポーツのクリーンさを保っているかのように解釈されることがありますが、実情は少々異なります。

スポーツを通じたお金儲けができないということは、言い換えれば、お金に困らない上級階級だけがスポーツに興じることができるということ。

つまり、アマチュア法には「労働階級に門戸を閉ざす」という役割があったのです。

これが、アメリカにおけるアマチュア法となると少し性質が変わるのですが、それは話が逸れてしまうので、置いておきましょう。

Q. 非常に興味深いですね。

A. 私たちが今「ラグビー」と呼んでいるのは、正確には「ラグビー・ユニオン」というスポーツです。

もともと「ラグビー・ユニオン」は、ラグビーのルール等を決定する統括団体の名前です。

かつては、イギリス全土のクラブがラグビー・ユニオンに所属していたのですが、労働階級の多いイギリス北部のクラブはアマチュアリズムに反対し、プロ化を進めました。

北部のクラブが選手に給与を払い始めたため、南部のクラブが北部クラブをリーグから追放。追放された北部クラブが「ラグビー・リーグ」という新リーグを始めました。

このラグビー・リーグのルールは、ラグビー・ユニオンのそれとは異なります。そのため、今日、ラグビー・ユニオンのルールに則ったゲームを「ラグビー・ユニオン」、ラグビー・リーグのルールを用いるゲームを「ラグビー・リーグ」と呼ぶのです。

世界的に見れば、競技人口や人気はラグビー・ユニオンが圧倒的ですが、オーストラリアやウェールズなどではラグビー・リーグも人気です。

Dr. McLeodインタビュー⑧メジャーリーグラグビー

Q. メジャーリーグラグビーとはどのようなリーグなのでしょうか。

A. メジャーリーグラグビーは、色々な意味でプロ・ラグビーとは一線を画したリーグです。

たとえば、プロ・ラグビーはシングルエンティティと呼ばれるリーグシステムを採用し、リーグ主導で全5チームを新設しました。

一方で、メジャーリーグラグビーは、チームを1からつくるのではなく、ほとんどのチームがすでにあったラグビーチームを活用する形で始まりました。

一番有名なところでいうと、グレンデール・ラプターズ(現コロラド・ラプターズ)があります。

グレンデールは、アメリカのなかでは歴史のあるラグビークラブで、ラグビー専用スタジアムも持っています。

また、市長が「グレンデールをラグビーの町に」ということで、ラグビーをプレーする環境整備に力を入れています。

Q. 当時すでにあったチームと言うのは、プロチームではなかったわけですよね?

A. はい、チームが所属選手に住居を提供したり、就職先を斡旋したり、といったことはありましたが、チームと選手との間に雇用関係はありませんでした。

実はラグビーというスポーツは少し特殊で、他のどのスポーツよりもプロ化することを拒んだスポーツなんですよ。

最初のプロ選手が誕生したのは1995年。野球なんて100年以上前にプロ化していますよ。

そして、ラグビーがプロ化を拒み続けたことには、非常に興味深い文化的な背景があるんです。

Dr. McLeodインタビュー⑦プロ・ラグビーの騒動

Q. 「プロ・ラグビーが起こした騒動」とはどのようなものだったのですか?

A. プロ・ラグビーは、当初、アメリカラグビー協会と「同リーグを唯一の認定リーグとする」という合意をしていました。

「認定リーグ」になると、そのリーグでプレーする選手がアメリカ代表の選考対象となる、ということを意味します。

逆に言えば、認定リーグでないリーグでプレーしてしまうと、どんなにいい選手であっても代表チームには入れません。

プロ・ラグビーはこの権利を独占的に保持していたため、代表チームに入りたい多くのトップ選手と契約することができたわけです。

ところが、協会はこの権利を他のリーグにも与えると示唆し、これにプロ・ラグビーが怒りました。

そして、対抗手段としてプロ・ラグビーは「所属選手との契約を切る」と言い出しました。

「大事なラグビー選手の権利を守りたいなら、我々を唯一の認定リーグにしなさい」と言うことで協会が折れることを期待したわけですね。

ところが結局状況は変わらず、プロ・ラグビーは選手との契約を打ち切り、リーグ自体も休止状態になってしまいました。

Q. では、選手は約束されていた給与を満額受け取っていないということですか?

A. そういう選手が相当数いると考えられます。

したがって「プロ・ラグビーはそもそも資金繰りに苦しんでおり、選手への給与支払いを逃れるため、協会に責任を転嫁した」と見る人もいます。残念ながら真相はわかりません。