レッドソックスの「再開試合」、18歳以下は入場無料に

8月7日に行われたボストン・レッドソックス対カンザスシティ・ロイヤルズの一戦は、4対4のまま延長戦に突入したところで雨が激しくなり「延期」となった。

日本であれば、雨天コールドとなり、引き分けで試合が終了するところだが、MLBには引き分けがない。どちらかが勝つまで試合は続く。

このように試合が途中で延期となった場合、翌日に試合が再開されることが一般的だが、今回は試合日程の関係でそれが叶わなかった。

結局、試合が再開したのは2週間後の8月21日。10回表ノーアウトから試合を始めるというなんとも珍しい興行となった。

レッドソックスはこの再開試合を、「18歳以下の観客は無料、19歳以上の観客は5ドル」にすると発表した。また、19歳以上の観客が払ったチケット代をすべてチャリティーに寄付することも明らかにした。

コンセッションでは、ホットドック、綿あめ、ポップコーン、ポテトチップスといった食べ物を一律1ドルとして、お祭り感を演出した。

その結果、一般席はほぼ満員。コンセッションでは1万本以上のホットドックが売れた。

レッドソックス会長のSam Kennedy氏は「何日も間をあけて試合を再開するようなことは、ここ50年間ありませんでした。今回の『再開試合』は、夏休み中の子どもたちに球場を開放し、同時に、チャリティーの寄付金を集めるユニークな機会となったのです」と言う。

ちなみに、試合のほうは、10回裏にレッドソックスがサヨナラ勝ち。試合再開からわずか12分後の決着であった。

試合後のイベントにはおよそ4000人の子どもたちが参加し、フィールドを駆け回った。

参考文献:
https://www.mlb.com/news/red-sox-win-suspended-game-vs-royals
https://www.mlb.com/press-release/press-release-red-sox-are-calling-all-kids-for-thursday-s-continuation-game-vs-r
https://www.boston.com/sports/boston-red-sox/2019/08/22/red-sox-royals-suspended-game-time-brock-holt

MLBのロンドン遠征②

前回の投稿で解説した通り、今回のMLBロンドン遠征は、興行自体のコスト以上のコストが発生していた。したがって、この2試合で大きな利益を上げることは難しかっただろう。

しかし、今回の興行に関しては、利益を上げることは二の次。一番の目的は、MLBの人気をイギリス(ひいてはヨーロッパ)で拡大することであった。

そのため、普段の試合では見られない演出もあった。

たとえば、ヤンキースの勝利テーマ「New York, New York」は、普段は敵地では流れない。しかし、レッドソックスがホームチームという扱いであったロンドン遠征では、それが試合後に流れ、観戦価値向上に貢献した。

MLBの発表によれば、2試合のチケットの70%はイギリスで、20%はアメリカで購入されたという。しかし、現地で観戦したファンの感覚では、イギリス人とアメリカ人の割合は50%-50%だったという。イギリスでチケットを購入した人の多くがイギリス在住のアメリカ人だったのかもしれない。

ここから「イギリスでの人気拡大を狙うならもっとイギリス人ファンを増やさなければならない」という批評もできるかもしれないが、アメリカ人が多く観戦していたことの利点もあった。

たとえば、野球は素人だというイギリス人のMike Dunnさんは「私の席の前にも後ろにも多くのアメリカ人がいたよ」と言う。「みんな野球に詳しいから、ルールなどわからないことがあれば周りに聞けばいいという感じだったよ」。

人がスポーツファンになっていく過程では、そのスポーツのルールやファンとしての嗜みなどを他のファンから学ぶ。野球に関する知識や経験が豊富なアメリカ人ファンは、新規のイギリス人ファンにそういった情報を伝えることができるのである。

MLBは今後もヨーロッパでの興行を継続する。来年は、シカゴ・カブスとセントルイス・カージナルスがロンドンで公式戦を行い、その後はヨーロッパの他都市に遠征する可能性もあるという。

参考文献:
https://www.sportsbusinessdaily.com/Journal/Issues/2019/06/24/Events-and-Attractions/MLB-London.aspx
https://www.nytimes.com/2019/06/30/sports/yankees-red-sox-london.html

MLBのロンドン遠征①

先週末、ニューヨーク・ヤンキース対ボストン・レッドソックスの公式戦がロンドンで開催された。

土曜日の試合は5万9659人、日曜日は5万9059人の観客を動員するなど興行は大きな成功を収めたように見えるが、実際のところはどうなのだろうか。

MLBロンドン遠征の背景と成果について今日と明日、解説したい。

そもそもMLBがイギリス遠征を検討し始めたのは10年以上前のことだという。ところが、イギリスにあるスタジアムはサッカー専用スタジアムが多く、野球の試合を開催するには不向きであった。

MLBのJim Small氏はMLBの試合が開催可能な環境を見つけるために、ロンドンだけでなく、ローマ、ミュンヘン、アムステルダムといった都市を巡った。Paul Archey氏も、1999年から2015年の間にヨーロッパで30以上のスタジアムを視察したという。

今回使用されたスタジアムは、オリンピック用に建設されたもので、陸上トラックを含む大きなスペースが存在したため、なんとか野球用にアレンジすることができた。

しかし、スタジアム問題はロンドン遠征のためのハードルの一つに過ぎなかった。

なにしろ今回組まれたカードはヤンキース対レッドソックス。MLBでも屈指の好カードである。本来、本拠地で試合を主催するはずであったレッドソックスはその機会を失ったことになる。

このような場合、本拠地開催であった場合にレッドソックスが得たであろう利益を算出し、リーグが補填するのが通例である。

また、海外遠征は、選手にも負担を強いることになる。

そのため、2016年まで、MLBは海外遠征を企画する度に選手会の許可を得る必要があった。

現行の労使協定では、海外遠征は毎年行われるものとして合意されているため、遠征の度に選手会の許可を得る必要はない。その代わり、遠征に参加した選手には特別の給与が支払われることになっている(ロンドン遠征の場合は、各選手に6万ドル、計300万ドル)。

つまり、今回の興行で収支をトントンにするためには、興行自体のコストだけでなく、レッドソックスに補填する分と、選手に支払う特別給与分の収益も生み出さなければならなかったということである。

参考文献:
https://www.sportsbusinessdaily.com/Journal/Issues/2019/06/24/Events-and-Attractions/MLB-London.aspx
https://www.nytimes.com/2019/06/30/sports/yankees-red-sox-london.html

チケットビジネスの動向③ セカンダリー・マーケット

セカンダリー・マーケット(二次市場)とは、すでに購入されたチケットを再び売買する市場を指し、アメリカではTicket MasterやStubHub、SeatGeekといった企業がその運営を担っている。

もともとセカンダリー・マーケットは、スポーツリーグ・チームから完全に独立して運営されていた。しかし、あまりに多くの消費者がそこでチケットを購入するため、スポーツリーグ・チームがセカンダリー・マーケットの運営会社と業務提携を結ぶケースが増えている。

契約内容は様々だが、一般的には、売上の数%と顧客データがリーグ・チームに提供される。

象徴的なケースがある。2017年のワールドシリーズで戦ったロサンゼルス・ドジャースとヒューストン・アストロズは全く異なるチケット戦略を持っていた。

ドジャースは放任主義。セカンダリー・マーケットに介入せず、相当数いたダフ屋も黙認していた。一方、アストロズは、Eventellectというチケット会社と業務提携を結び、セカンダリー・マーケットを管理していた。

2017年ワールドシリーズのチケットは、セカンダリー・マーケット上で1100~1300ドルまで高騰した。その結果、ドジャースのホームゲームで、ダフ屋の儲けは計1500万ドルにも達したと伝えられている。しかし、そのうち1銭もドジャースには還元されない。

一方、アストロズのホームゲームに関しては、Eventellect社がセカンダリー・マーケットを管理していたため、その売り上げの一部がアストロズに共有されたと見られる。

そのワールドシリーズから数か月後の2018年2月、ドジャースは放任主義から方針転換。Eventellect社との業務提携を発表した。

拡大を続けるセカンダリー・マーケット。収入増加と顧客情報獲得のために、自らセカンダリー・マーケットを設立・運営するチームも現れている。

ボストン・レッドソックスは、Red Sox Replayを創設し2016年からサービスを提供している。Red Sox Replayでは、チケットの売り手がチケット価格を設定できるが、売り上げの10%が手数料としてレッドソックスに徴収される(シーズンチケット所有者の手数料は5%)。一方で、利用者はレッドソックスが管理するセカンダリー・マーケットで、より信頼性の高いサービスを受けることができる。2016年シーズンは、85,000以上のチケットがRed Sox Replayで売買された。

参考文献:
http://www.sportsbusinessdaily.com/Journal/Issues/2017/10/30/Events-and-Attractions/World-Series.aspx
https://www.sportsbusinessdaily.com/Journal/Issues/2018/02/12/Franchises/Dodgers-Eventellect.aspx
https://www.sportsbusinessdaily.com/Journal/Issues/2016/11/21/Franchises/Red-Sox-Replay.aspx