NBAと香港デモを巡る論争③

一連の騒動を受けて、NBAコミッショナーのAdam Silver氏は以下のように発言し、謝罪の意図がないことを明確にした。

「アメリカ・中国を含め、世界中の人々が異なった意見を持つことは避けられません。そういった意見の違いを埋めるのはNBAの仕事ではありません」。

「平等、尊敬、表現の自由。そういった価値観がNBAをNBAたらしめてきました。NBAは、選手、従業員、オーナーが何を言うべきか、何を言うべきではないか、そういった言動を統制する組織にはなりません」。

これに対して、中国のSNSには、「それなら私たちが何を言おうと勝手ですよね」と9.11を称賛するようなコメントや、カリフォルニア州の独立を促すようなコメントが投稿された。

逆に、アメリカでは、国会議員たちから「NBAは中国側のプレッシャーに屈するべきではない。アメリカ人の表現の自由が損なわれることはあってはならない」といった意見が寄せられた。

アメリカ・中国、両国の板挟みのような状況に置かれたNBA。開幕を2週間前に控えた今も、事態の収拾は見えてこない。

参考文献:
https://www.cbssports.com/nba/news/nba-china-issue-latest-news-resulting-from-daryl-moreys-hong-kong-tweet-what-it-means-for-the-league/
https://www.nbcnews.com/politics/congress/disgusting-u-s-politicians-call-out-nba-cowing-china-amid-n1063161

NBAと香港デモを巡る論争②

Daryl Morey氏の投稿から数日後、25歳の中国人男性が中国国内で逮捕された。

男性は、ヒューストン・ロケッツのユニフォームを着て、中国国旗を燃やすような写真をSNSに投稿した。

これは、ロケッツを批判する中国政府・企業に対する抗議のメッセージと見られる。

ロケッツは、中国出身のスーパースター、ヤオ・ミン選手が所属したチームで、中国国内で最も人気のあるNBAチームの一つである。

今回の騒動では、ロケッツに対して不快感を示したファンも多くいたが、ロケッツを支持するような声も上がっている。

また一方で、今回逮捕された男性が投稿された写真をよく見ると、この男性はマスクをし、片方の目を隠している。これは香港デモに参加する人に共通の服装である。

つまり、この男性は今回の騒動を政治的なメッセージを発信するために利用した、という解釈もできる。

中国では「国旗に対する侮辱行為」は違法行為であり、最長3年の刑が科せられる。

参考文献:
https://www.cnn.com/2019/10/09/asia/houston-rockets-fan-arrested-china-intl-hnk-scli/index.html

NBAと香港デモを巡る論争①

開幕戦を2週間後に控えるNBAが大きな論争の渦中にいる。

事の発端は今月4日。ヒューストン・ロケッツのGM、Daryl Morey氏が「Fight for Freedom. Stand with Hong Kong.(自由のための戦い。香港とともに)」というメッセージをツイッターに投稿した(現在は削除されている)。

これに対してすぐさま中国政府が不快感を示した。ヒューストンの中国領事館は声明文を発表し「強い失望」を伝えた。

これに中国企業も同調。多くのスポンサー企業や放送局が、ロケッツとの関係を切る方針を示した。

NBAのデジタルパートナーであるテンセントはロケッツとの取引を一時凍結。中国のテレビ局CCTVは、予定されていたロケッツのプレシーズンゲームの放送を一切中止した。

ニューヨーク・タイムズの報道によれば、今回の騒動によって、ロケッツには250万ドルの損失が出る見込みだという。

しかしこの論争の影響は、ロケッツのビジネスに留まらなかった。

つづく。

参考文献:
https://www.cbssports.com/nba/news/nba-china-issue-latest-news-resulting-from-daryl-moreys-hong-kong-tweet-what-it-means-for-the-league/

ロイヤルズ売却④ ビジネス機会創造

北米メジャーリーグでは、チームオーナーが他にビジネスを持っていることがほとんどだ。不動産、物流、ホテル、メディア、金融などなど。

オーナーからすれば、仮にチームそのものが多くの利益を生まなくても、チームを所有することで他のビジネスに好影響があれば、それは重要な価値となる。

たとえば、2017年にヒューストン・ロケッツを買収したTilman Fertitta氏は、レストラン、ホテル、カジノ、その他エンターテインメント関連の企業を経営している。

ロケッツの本拠地にFertitta氏が経営するレストランを入れ、VIPをもてなすために同氏のホテル・エンターテインメント会社を活用すれば、そのレストランやホテルの評判が高まり、顧客が増えるかもしれない。

また、チームを所有することで新たな産業に参入することもできる。

たとえば、ここ数年、NFLやNBAのオーナーたちはeスポーツに投資をしている。スポーツイベントを運営するために必要な施設や人脈、ノウハウを持っているオーナーたちは、それらをeスポーツイベントのために提供することができる。それによってeスポーツイベントが成功を収めれば、オーナーたちの懐も潤う。

このように、チームを所有することで様々なビジネス機会が生まれるのだ。

前回の投稿では、チームが収益を拡大することで生まれる経済効果を説明したが、それ以外にもオーナーが利益を上げる手段はあるということである。

Sherman氏の場合、カンザスシティのビジネス界に広い人脈を持ち、信頼も厚い。彼が新オーナーとなり地元企業と協働すれば、これまでにはなかった経済活動が生まれるかもしれない。もとより起業家として一財をなした人物である。そのようなビジョンを持ってロイヤルズを買収した可能性は大いにある。

参考文献:
https://www.espn.com/esports/story/_/id/24203693/how-blizzard-convinced-robert-kraft-other-billionaires-buy-overwatch-league
https://eu.usatoday.com/story/sports/nba/2017/09/05/who-new-houston-rockets-owner-tilman-fertitta/633557001/

NBAのユニフォームスポンサー④ 2018-19年シーズン、ほぼすべてのチームが契約

2017-18年シーズン終了後、新たに複数のチームがユニフォームスポンサーシップの契約を取り付けた。

フェニックス・サンズはオンライン決済サービスのPayPalと合意。ユニフォームスポンサーシップに加え、サンズのグッズショップでPayPalを用いた決済を取り入れることになった。

サンアントニオ・スパーズは地元の銀行であるFrost Bankと契約。今後スパーズとFrost Bankは協力して地域貢献活動を展開していく。

ヒューストン・ロケッツはRokit Phonesと契約を結んだ。この契約で、ロケッツの本拠地内にある3つのラウンジにRokit Phonesの親会社であるRok Groupが販売するアルコール飲料の名前が冠されることになった(Bogart’sラウンジ、ABK Beerガーデン、Bandero Tequilaテラス)。

2019年3月27日現在、オクラホマシティ・サンダーを除く29チームがユニフォームスポンサーの契約を締結している。

この表を見ると、あまり馴染みのない企業が多いと感じるかもしれない。それもそのはず、今回契約を結んだ29のスポンサー企業のうち、実に20社がNBAビジネスに関わるのは初めてなのだ。

以前の投稿で説明した通り、今回の契約はあくまで「最終テスト」という位置づけ。契約は最長3年という制約があった。

さらに、獲得したスポンサー料の50%はリーグに徴収され、他チームと山分け。このおかげで、アリーナのネーミングライツなどを含めた巨大な契約は結びにくい。

多くのチームが新たなスポンサーの発掘に動いた背景には、こういった要素があると考えられる。

参考文献:
https://www.sportsbusinessdaily.com/Journal/Issues/2019/02/25/Leagues-and-Governing-Bodies/NBA-patches.aspx
https://www.poundingtherock.com/2018/8/22/17769826/the-spurs-have-their-first-jersey-sponsor-in-frost-bank
https://chicago.suntimes.com/sports/chicago-bulls-new-sponsorship-deal-jersey-patch-2018/
https://www.cbssports.com/nba/news/indiana-pacers-partner-with-motorola-in-patch-deal-leaves-thunder-as-final-team-without-sponsor/
https://www.washingtonpost.com/sports/2018/11/02/monumental-sports-announces-geico-jersey-sponsor-wizards-mystics-go-go/?noredirect=on&utm_term=.de5585e2ac79
http://www.sportspromedia.com/news/nba-houston-rockets-rokit-phones-jersey-sponsor