NBAのユニフォームスポンサー⑤ ユニフォームスポンサーシップの成果と今後

2017年に始まったユニフォームスポンサーシップを、NBAはどのように評価しているのだろうか。

一言で表せば、「大成功」だ。チーム、リーグ、そしてスポンサー企業も当初の予想をはるかに上回る成果に驚いているという。

Navigate Researchの調査によれば、試合中継の際、ユニフォームにつけられたスポンサーロゴは10~15分は画面上に大きく映されるため、メディア露出の効果は絶大だという。

数チームのユニフォームスポンサーシップの契約に携わったExcel Sports ManagementのEmilio Collins氏は「スポンサーシップの価値がぐんぐん伸びていることをデータが示しています。驚くべき伸びです」と言う。

では、NBAのユニフォームスポンサーシップは今後どうなっていくのか。

ここまでの投稿で再三言及している通り、今回のユニフォームスポンサーシップは「最終テスト」という位置づけであり、2020年4月にすべての契約が一度終了する段取りになっている。その後、オーナー会議が開かれ、スポンサーシップのルールに関して改めて議論し、最終的な結論を出す。

議論の対象になりそうなのがスポンサーロゴのサイズだが、これに関しては変更の必要性を訴えるような声は今のところ上がっていない。当初はファンの反発も懸念されていたが、「ファンは皆見慣れたようです」とオーランド・マジックのAlex Martins氏は言う。

意見が分かれそうなのが、「ファン向けに販売するユニフォームにスポンサーロゴをつけるべきか」という点である。正規ユニフォームのライセンシーであるNikeはロゴをつけることに否定的だが、複数のチームは「ファンは選手が着ているのとまったく同じものを欲している」と主張する。

2020年にNBAがどのような決断を下すのか。今後の動向に注目である。

参考文献:
https://www.sportsbusinessdaily.com/Journal/Issues/2019/02/25/Leagues-and-Governing-Bodies/NBA-patches.aspx

NBAのユニフォームスポンサー④ 2018-19年シーズン、ほぼすべてのチームが契約

2017-18年シーズン終了後、新たに複数のチームがユニフォームスポンサーシップの契約を取り付けた。

フェニックス・サンズはオンライン決済サービスのPayPalと合意。ユニフォームスポンサーシップに加え、サンズのグッズショップでPayPalを用いた決済を取り入れることになった。

サンアントニオ・スパーズは地元の銀行であるFrost Bankと契約。今後スパーズとFrost Bankは協力して地域貢献活動を展開していく。

ヒューストン・ロケッツはRokit Phonesと契約を結んだ。この契約で、ロケッツの本拠地内にある3つのラウンジにRokit Phonesの親会社であるRok Groupが販売するアルコール飲料の名前が冠されることになった(Bogart’sラウンジ、ABK Beerガーデン、Bandero Tequilaテラス)。

2019年3月27日現在、オクラホマシティ・サンダーを除く29チームがユニフォームスポンサーの契約を締結している。

この表を見ると、あまり馴染みのない企業が多いと感じるかもしれない。それもそのはず、今回契約を結んだ29のスポンサー企業のうち、実に20社がNBAビジネスに関わるのは初めてなのだ。

以前の投稿で説明した通り、今回の契約はあくまで「最終テスト」という位置づけ。契約は最長3年という制約があった。

さらに、獲得したスポンサー料の50%はリーグに徴収され、他チームと山分け。このおかげで、アリーナのネーミングライツなどを含めた巨大な契約は結びにくい。

多くのチームが新たなスポンサーの発掘に動いた背景には、こういった要素があると考えられる。

参考文献:
https://www.sportsbusinessdaily.com/Journal/Issues/2019/02/25/Leagues-and-Governing-Bodies/NBA-patches.aspx
https://www.poundingtherock.com/2018/8/22/17769826/the-spurs-have-their-first-jersey-sponsor-in-frost-bank
https://chicago.suntimes.com/sports/chicago-bulls-new-sponsorship-deal-jersey-patch-2018/
https://www.cbssports.com/nba/news/indiana-pacers-partner-with-motorola-in-patch-deal-leaves-thunder-as-final-team-without-sponsor/
https://www.washingtonpost.com/sports/2018/11/02/monumental-sports-announces-geico-jersey-sponsor-wizards-mystics-go-go/?noredirect=on&utm_term=.de5585e2ac79
http://www.sportspromedia.com/news/nba-houston-rockets-rokit-phones-jersey-sponsor

NBAのユニフォームスポンサー③ 初年度は17チームが契約

NBA30チームの中で最初にユニフォームスポンサーシップの契約を結んだのは、フィラデルフィア・セブンティシクサーズであった。

2016年5月、セブンティシクサーズはStubHubと3年推定1500万ドルの契約を発表。これに際してStubHub社長のScott Cutler氏は以下のように述べた。 「StubHubとセブンティシクサーズはエンターテインメント界のイノベーターとしてビジョンを共有している。この度の契約は、我々が新たな扉を開け、スポーツ界を前進させる存在であり続けることをよく表している」。

これに続いたのが、サクラメント・キングス。地元サクラメントの食品会社Blue Diamondと3年1500万ドルの契約を結んだ。同社は世界に流通するアーモンドの80%を生産している。Blue Diamondのロゴはユニフォームだけでなく本拠地のコートにもつけられる。また、同社の販売するアーモンド食品はコンセッションで販売されるという。

当初は営業が難航したユニフォームスポンサーシップであったが、最終的には17チームが契約を取り付けて2017-18年シーズンを迎えた。これらの契約の平均金額は1年930万ドル。最高額はゴールデンステート・ウォリアーズが楽天と結んだ契約で3年6000万ドル(1年2000万ドル)であった。

今回のスポンサーシップ営業では、ウォリアーズの他にも複数のチームが海外企業との契約を検討した。実際、いくつかのチームは、アメリカ国外の代理店に市場調査を依頼したという。

ミネソタ・ティンバーウルブスのChris Wright氏は、2016年に行われたシンポジウムで「ティンバーウルブスが中国企業と契約を結んでも驚かないでください」と語っていた。

参考文献:
https://www.usatoday.com/story/sports/nba/sixers/2016/05/16/philadelphia-76ers-stubhub-jersey-sponsor/84434004/
https://www.sportsbusinessdaily.com/Journal/Issues/2016/10/10/Marketing-and-Sponsorship/Kings-Blue-Diamond.aspx
https://www.sportsbusinessdaily.com/Journal/Issues/2017/10/16/In-Depth/Jersey-patches.aspx
https://www.sportsbusinessdaily.com/Journal/Issues/2016/09/26/Marketing-and-Sponsorship/NBA-jersey-patches.aspx

NBAのユニフォームスポンサー② 難航したスポンサーシップ営業

NBAのユニフォームスポンサーシップは、北米では画期的なものであったが、その販売は必ずしも易しいものではなかった。

たとえば、ミルウォーキー・バックス会長のPeter Feigin氏は「クライアントにユニフォームスポンサーシップの価値を説明していますが、その説明に膨大な時間を費やしています。これは従来のスポンサーシップ営業では必要のない作業です」と言う。

各チームがここまで苦労するのには、3つの大きな理由がある。

1つ目は、ユニフォームスポンサーのロゴが小さいこと。

今回許されているスポンサーロゴは最大6.35 cm x 6.35 cm。この小ささでは、スタジアムで見ている観客はおろか、テレビで見ている人もなかなか認識できない。NBA数チームのコンサルティングをしているNavigate ResearchのAJ Maestas氏は「KIAのようにすごくシンプルなロゴならいいだろうが、複雑なロゴをもつ企業はどう評価するか不透明だ」と説明する。

2つ目は、30チームが一斉に営業を始めたこと。

その結果として、スポンサーになりそうな企業には、いくつものチームが同じタイミングでアプローチすることになった。たとえば、ある大手企業には、18チームからユニフォームスポンサーシップの提案書が届いたという。

このような状況で契約を勝ち取るためには、自チームのスポンサーシップが他チームのものよりも魅力的なものであると説得しなくてはならない。一般的なスポンサーシップ営業では、「スタジアムにも広告を出します」、「施設のネーミングライツも一緒に」というようにいくつかのアセットを抱き合わせることでスポンサーシップ価値を上げることができるが、今回のユニフォームスポンサーシップでは、この戦略を大胆に使いづらい。なぜか?

その背景にあるのが、3つ目の理由、NBAが定めた厄介なルールである。

今回のユニフォームスポンサーシップでは、各チームは契約金の50%しかキープできず、残りの50%はリーグに徴収され、30チームに均等に分配されることになっている。

いくつものアセットを抱き合わせで販売してしまうと、リーグに徴収されるお金も大きくなり、他のスポンサーシップ契約で使えるアセットが減ってしまう。反対に、仮に自チームが契約を結べなくても、他チームが稼いでくれた契約金の一部が自動的に入ってくる。

この結果、ユニフォームスポンサーシップの営業は難航した。

参考文献:
https://www.nba.com/2016/news/04/15/nba-board-of-governors-approves-jersey-ads-for-2017-18-season/
https://www.sportsbusinessdaily.com/Journal/Issues/2016/09/26/Marketing-and-Sponsorship/NBA-jersey-patches.aspx
https://www.sportsbusinessdaily.com/Journal/Issues/2016/04/25/Leagues-and-Governing-Bodies/NBA-jersey-ads.aspx

NBAのユニフォームスポンサーシップ① NBAが行ったいくつかのテスト

従来、北米四大スポーツリーグは、ユニフォームにスポンサーのロゴをつけることを禁止してきた。その結果、ファンはユニフォームを神聖なものと捉え、それが企業の宣伝に使われることに嫌悪感を示すようになった。

ところが、NBAはその伝統を破り、2017年からユニフォームにスポンサーのロゴをつけることを許可した。果たしてNBAはどのようにしてこの決定を下したのか。実際にどのようにしてスポンサーシップ営業が行われたのか。そしてどのような結果が得られたのか。この連載で解説していきたい。

NBAは、ユニフォームスポンサーシップ解禁までにいくつかの”テスト”を行ってきた。

まず2009年、女子のプロバスケットボールリーグであるWNBAがユニフォームスポンサーシップを解禁した。WNBAはNBAの傘下にあるため、この決定にはNBAコミッショナーの意見が反映されている可能性が大いにある。

NBAは、WNBAを通じて、ユニフォームスポンサーシップに対するファンや企業の反応を見ることができたのである。

上写真の左は、WNBAのタルサ・ショックのユニフォーム。Orange Casinoとboost mobileがスポンサーで、チームのロゴは左肩に小さくついているだけである。

次に2016年、NBAは、オールスターゲームで初めてユニフォームスポンサーシップを導入した(上写真右)。ここで注目したいのは、WNBAのユニフォームには大きく載っていたスポンサーのロゴが、このNBAのユニフォームでは左肩に小さくついているだけだという点である。

これが、2009年からの検討の末にNBAが導き出した「ファンのネガティブな反応を抑えつつ、スポンサーにとっては魅力的なユニフォームスポンサーシップ」の形なのかもしれない。

そしてこのオールスターゲームから数か月後の2016年4月、NBAは2017-18年シーズンより、ユニフォームスポンサーシップを解禁することを発表した。

ただし、今回の解禁はあくまで「最終テスト」という位置づけである。その証拠に、各チームには「契約は最長で2020年まで」という制約が設けられている。

2017年から2020年までの3年間、NBAはファンの反応とスポンサーシップとしての価値を再確認した上で、改めてこのスポンサーシップを続けるべきかの決定をすることになっている。

参考文献:
https://www.sportsbusinessdaily.com/Journal/Issues/2009/06/01/This-Weeks-News/WNBA-Deal-Jersey-And-Much-More.aspx
http://www.espn.com/nba/story/_/id/14001676/nba-allow-kia-sponsor-logo-all-star-game-uniform