サブスクリプション・チケット⑦まとめ

先週から7日間に渡って、サブスクリプション・チケットの動向について解説してきた。最終日の今日は、これまで解説してきたことをまとめたい。

サブスクリプション・チケットは、毎月(もしくは毎年)決まった金額を支払い、好きな時に好きなだけ試合を観戦することができるチケットを指し、カレッジスポーツではオレゴン州立大学(チケット名:SQUAD)が、プロリーグではMLB(チケット名:Ballpark Pass)がいち早く導入した。

これらのサブスクリプション・チケットは若い世代を中心に広く浸透し、その影響は他のプロリーグにも及んでいる。

たとえば、NBAではサクラメント・キングス、NFLではロサンゼルス・ラムズといったチームがサブスクリプション・チケットを試している。

しかし、サブスクリプション・チケットの持つ意味合いはリーグによって異なる。

MLBの場合、試合数が多いため、「好きなときに好きなだけ行ける」という定額制エンターテインメント特有のお得感が提供できる。
特に、Netflixのような定額制エンターテインメントを好む若い世代にとってこの自由度の高さは魅力的だ。
そして、ファンの高齢化が深刻なMLBにとって、これは非常に重要である。つまり、MLBにとってサブスクリプション・チケットは、若いファンを獲得する有効な手段なのである。

一方で、年間のホームゲームが10試合にも満たないNFLの場合、サブスクリプション・チケットは「シーズンチケットのお試し版」という意味合いが強い。

そして、最もサブスクリプション・チケットの価値が不透明なのがNBA。試合数が少なく、施設収容人数・観戦スペースも限られているNBAは、若いファンの獲得にもさほど苦労していない。
リーグ関係者によれば、NBAチームがサブスクリプション・チケットをどのように使うべきかは現在試行錯誤している段階だという。

また、北米スポーツ業界関係者によれば、今後サブスクリプション・チケットの本格的導入が期待されるのはMLSで、逆にその可能性が最も薄いのはNHLであるという。

参考文献:
https://www.sportsbusinessdaily.com/Journal/Issues/2019/06/17/In-Depth/Tickets.aspx

サブスクリプション・チケット⑥カレッジスポーツ

ここまでプロスポーツリーグに焦点を当てて、サブスクリプション・チケットの動向について解説してきた。

しかし、北米スポーツ界でいち早くサブスクリプション・チケットを導入したのは、カレッジスポーツのチームであった。

オレゴン州立大学は、2016年にSQUADというサブスクリプション・チケットを導入した。

このチケットは、月額20ドルで、同大学のスポーツをいつでも好きなだけ観戦することができる。

人気の高いアメリカンフットボールやバスケットボールを初め、多くのスポーツを観戦することができるので、「好きなものを好きなときに」という定額制エンターテインメント特有のお得感は大きい。

一方、南カリフォルニア大学は、アメリカンフットボールだけを対象にしたサブスクリプション・チケットを試している。

Tommy Passと呼ばれるこのチケットは、同校アメリカンフットボールチームのホームゲーム6試合が見放題になり、価格は最も安いもので149ドル。サブスクリプション・チケットというよりはチケット・パッケージに近い。

NFLチームが取り入れているサブスクリプション・チケットと同様、見放題というお得感よりもシーズンチケットのお試し版という側面のほうが強いかもしれない。

なお、現在、カンザス州立大学、イリノイ大学、そしてバージニア工科大学といった大学がTommy Passのようなサブスクリプション・チケットの導入を検討している。

参考文献:
https://www.sportsbusinessdaily.com/Journal/Issues/2019/06/17/In-Depth/Tickets.aspx
https://www.sportsbusinessdaily.com/Journal/Issues/2016/05/23/Colleges/Oregon-State.aspx

サブスクリプション・チケット⑤NHL・MLSの動向

ここまで紹介してきたように、MLB、NBA、NFLでサブスクリプション・チケットが取り入れられている。

そんななかNHLは、四大リーグのなかでは唯一、サブスクリプション・チケットを導入していない。

NHLはMLBよりも試合数が少なく、本拠地の座席数も、NHL(2万人弱)は、NFL(7万前後)やMLB(4万人前後)より数万人少ない。

加えて、NHLはここのところ観客動員が好調で、昨シーズンは、31チーム中26チームが年間を通して90%以上の動員率を記録した。

したがって、サブスクリプション・チケット用の座席が限られているのである。

Turnkey Sports Pollがプロ・カレッジスポーツ業界の経営幹部2000人を対象に行ったアンケート調査によれば、NHLは北米メジャーリーグのなかでもサブスクリプション・チケットが浸透する可能性が最も低いリーグと捉えられている。

逆に最も可能性が高いと見られているのがMLS。四大リーグに比べ、観客動員に苦戦しているクラブが多く、また、若年層のファンも多い。サブスクリプション・チケットのニーズが高いと見られる。

MLSではNYCFCとReal Salt Lakeの2クラブがサブスクリプション・チケットを試しているが、販売対象は大学生に限っている。今後より本格的な形でサブスクリプション・チケットが導入されるか、注目である。

参考文献:
https://www.sportsbusinessdaily.com/Journal/Issues/2019/06/17/In-Depth/Tickets.aspx

サブスクリプション・チケット④NFLの事例

MLBが他リーグに先駆けてサブスクリプション・チケットを取り入れた理由の一つが試合数の多さにある。

リーグ別レギュラーシーズン試合数
MLB: 162試合 NBA: 82試合 NHL: 82試合 NFL: 16試合

試合数が多ければ多いほど「好きなときに好きなだけ」の価値は上がる。逆に試合数の少ないNFLは「好きなだけ」といっても、見られるホームゲームは10試合にも満たない。

ところが、興味深いことに、NFLでもサブスクリプション・チケットを取り入れるチームが現れている。

ロサンゼルス・ラムズは昨シーズンから「Rams Gameday Pass」というサブスクリプション・チケットを販売している。

価格は年間250ドルで、ホームゲーム9試合(レギュラーシーズン7試合+ポストシーズン2試合)が見放題になる。座席は試合開始24時間前に割り当てられる。

2018年シーズンは700枚のRams Gameday Passが売れ、その購入者の66%は2019年シーズンのシーズンチケットを購入したという。

ラムズのDan August氏によれば、これこそ同チームがサブスクリプション・チケットを導入した一番の目的だという。

August氏曰く、Rams Gameday Passは、全ホームゲームが観戦できるが、それ以上の特典はつかない、言わばシーズンチケットのお試し版。

シーズンチケット購入には大きな金額が必要になるとともに「せっかく買ったのだから見に行かないともったいない」という心理的プレッシャーも生まれる。

サブスクリプション・チケットは、そういった金銭的・心理的なコミットメントがなく、より気軽に試すことができる。

そして、その経験が「入り口」となり、よりスムーズにシーズンチケット購入につなげることができる。それがNFLにおけるサブスクリプション・チケットの役割なのである。

参考文献:
https://www.sportsbusinessdaily.com/Journal/Issues/2019/06/17/In-Depth/Tickets.aspx

サブスクリプション・チケット③NBAの事例

プロリーグではMLBがいち早く取り入れたサブスクリプション・チケットは、現在、他のリーグにも浸透しつつある。

NBAでは、2018-19年シーズンに、サクラメント・キングスとミルウォーキー・バックスがサブスクリプション・チケットを導入した。

キングスのサブスクリプション・チケットは、月額49ドルで、購入者はその月に開催される全ホームゲーム(最大7試合)を観戦できる。

MLBのBallpark Passでは立ち見スペースからの観戦が一般的だが、キングスのサブスクリプション・チケット利用者には座席が割り当てられる。

具体的には、コートから離れた上層階の座席で、割り当てられた座席は試合の約4時間前に通知される。

このサブスクリプション・チケットは好評を得て、「毎月2,100人」までという販売数の上限が設けられたほどだった。なお、キングスは、2019-20年シーズンも同様のチケットを販売する予定である。

バックスも、いくつかのサブスクリプション・プランを試した。キングスと同様に試合日にチームが観客の座席を割り当てる形式や、5試合分を観客が自ら座席を選ぶ形式などが試された。

バックスのJamie Morningstar氏は「サブスクリプション・チケットが有効な場所・形は必ずあります。我々はそれを見つけるために創造力を働かせているところです」と言う。

NBAはMLBよりも試合数がはるかに少ない分、サブスクリプション・チケットのデザインには異なるアイデアが必要になるが、多くのNBAチームがその可能性を肯定的に捉えている。

参考文献:
https://www.sportsbusinessdaily.com/Journal/Issues/2019/06/17/In-Depth/Tickets.aspx
https://www.nba.com/kings/pass

サブスクリプション・チケット②オークランド・アスレチックスの事例

オークランド・アスレチックスは、2015年にBallpark Passができた際に、それをいち早く導入したチームの一つである。

アスレチックスは、当初、月額$19.99ドルの基本プランを提供していたが、徐々にアレンジを加え、「A’s Access」という独自のチケットを完成させた。

A’s AccessはBallpark Passの進化版で、これに登録すると、ホームゲーム全試合を立ち見スペースで観戦できるだけでなく、スタジアム内の飲食がすべて半額になったり、チームグッズが25%オフになったり、MLB.TV(MLBのネット中継)を無料で観戦できたり、といった特典もついてくる。

さらに、座席を確保することもできる。

昨日の投稿で説明した通り、Ballpark Passの登録者は立ち見スペースで観戦することが一般的だが、A’s Accessでは、プランに応じて、最小で10試合、最大で81試合分の座席を確保することができる。

座席の場所に関しては8つのエリアから選択することができ、最も基本的な座席だと年間240ドルで、最も高い席だと年間2万ドルにもなる。

A’s Accessについて、アスレチックスのChris Giles氏は「トレーニングジムのメンバーシップのようなイメージです。A’s Accessにおける座席予約サービスは、ジムにおけるパーソナルトレーニングのようなものです。それぞれの顧客に合った経験を提供できるようにデザインされています」と言う。

様々なオプションがあるA’s Accessは、ファンの混乱も生み、それを解消するまでに時間がかかった。

しかしGiles氏によれば、アスレチックスのサブスクリプション・チケット登録者の数は、A’s Accessの導入以前と比較して44%増加したという。

また、A’s Accessの登録者は、伝統的なシーズンチケットの購入者より平均で11歳若いという。Giles氏は「これも重要な数字です」と言う。

参考文献:
https://www.sportsbusinessdaily.com/Journal/Issues/2017/06/26/Leagues-and-Governing-Bodies/Ballpark-Pass.aspx
https://www.sportsbusinessdaily.com/Journal/Issues/2019/06/17/In-Depth/Tickets.aspx
https://www.mlb.com/athletics/tickets/season-tickets

サブスクリプション・チケット①MLBのBallpark Pass

ここ数年、北米スポーツ業界に浸透しているのが、サブスクリプション・チケットである。

顧客は、毎月(もしくは毎年)決まった金額を支払い、好きな時に好きなだけ試合を観戦することができる。

プロリーグでは、MLBがいち早く「Ballpark Pass」というサブスクリプション・チケットを販売し始めた。

2018年、Ballpark Passが使用された回数はリーグ全体で100万回を超えた。
2019年シーズンは、ここまですでに76万5000回使用されており、これは前年同時期と比較して36%増だ。

Ballpark Passの魅力は「前もって計画していなくても、行きたいと思ったときに行ける」という柔軟性だ。
しかし、これはチーム側からすれば、「事前に知らされずいきなり来られる」ということを意味する。

したがって、多くの場合、Ballpark Passは席の代わりに立ち見スペースが用意され、ファンはそこでビール片手に観戦することになる(試合直前に席が用意されるケースもある)。

Ballpark Passは、若い世代に特に人気である。その要因として指摘されるのは、大きく2点。

一点は、若い世代はNetflixのような定額エンターテインメントに慣れているということ。

もう一点は、若い世代が野球観戦に行くとき、試合そのものよりも球場での雰囲気や体験を重視する傾向が強いこと。したがって、外野の立見スペースであってもワイワイ楽しめる人が多いのである。

MLBのNoah Garden氏は「サブスクリプション・チケットは、若い世代のスポーツ消費の形に合っており、彼ら・彼女らを引きつけるのに有効です」と言う。

参考文献:
https://www.sportsbusinessdaily.com/Journal/Issues/2019/06/17/In-Depth/Tickets.aspx