Q. Dr. Turickが研究している「Racial Tasking(人種的タスク決定)」という概念について教えてください。
A. Racial Taskingは、アメリカのカレッジフットボールで検証された概念です。
アメリカのカレッジフットボールでは、長らく、黒人選手がクォーターバックというポジションをやる機会に恵まれませんでした。それが現在では多くの黒人クォーターバックがいます。
これはいいことですよね。人種に拘わらず色々なポジションをやる機会が与えられているわけですから。
じゃあ、人種差別はなくなったと言っていいのでしょうか?ここで重要な知見を与えてくれるのがRacial Taskingという概念です。
ある研究者は、アメリカのカレッジフットボールのコーチは、白人クォーターバックにはパスをするよう指示することが多く、黒人クォーターバックにはランをするよう指示することが多いという傾向を発見しました。
これは選手の将来に多大な影響を及ぼします。というのも、NFLチームが大学生クォーターバックを評価するときに「どれだけパスがうまいか」という点を重視するからなんです。
つまり、白人クォーターバックは自分がどれだけパスがうまいかを十分アピールできるのに対して、黒人クォーターバックにはそのような機会が与えられていないのです。
結果として、カレッジフットボールで結果を残しても「彼は素晴らしい選手だけど、素晴らしいクォーターバックかどうかは判断できないね」と言われてしまうわけです。
このように、表面的には平等な機会が与えられているように見えても、よく見てみると平等には扱われていないことがある。Racial Taskingは、ポジションに基づく差別ではなく、タスクに基づく差別を明らかにする概念なのです。