アメリカには、歴史的に重要な意味合いを持つスタジアム・アリーナがあり、それらには企業名がついていない。
しかし、ここ数年、そういったスタジアムの名称を変更する権利(ネーミングライツ)を企業に販売する動きが顕著になっている。
こうしたスタジアムの場合、一般的な認知度が高く、市民の愛着も強い。したがって、ネーミングライツの価値も高くなる。
しかし、経済的な価値だけを求めて契約を結ぶのは危険である。スタジアムに強い愛着を持つ市民の反発を招きかねないからだ。
失敗例がある。
1923年の設立以来、ロサンゼルス・メモリアル・コロシアムという名で親しまれていたスタジアムは、2017年にユナイテッド・エアラインズ・メモリアル・コロシアムと名前を変えた。
この契約によって、同スタジアムを所有する南カリフォルニア大学はユナイテッド・エアラインズから16年間で6900万ドルを受け取る権利を手に入れた。
ところが、この名称変更に反発が起こった。
同スタジアムの名称は、第一次世界大戦で犠牲になった兵士を追悼する意味があり(英語のメモリアル[memorial]には「追悼、慰霊」といった意味がある)、それを企業名に変更することは受け入れがたいというのだ。
この反発の結果、南カリフォルニア大学とユナイテッド・エアラインズの契約内容は変更され、スタジアム名は元の状態に戻った。
そして、ユナイテッド・エアラインズはスタジアム全体ではなく、選手がプレーするフィールドのネーミングライツを保有することとなった。
このように、歴史的なスタジアムのネーミングライツを販売する際には、通常よりも気を遣う必要がある。
では、具体的にはどのような契約にすればいいのか。明日は、現在進行している案件について紹介します。
参考文献:
https://www.sportsbusinessdaily.com/Journal/Issues/2020/02/17/Facilities/Naming-rights.aspx