Q. 話を戻すと、Dr. McLeodは、アメリカで設立予定であった4リーグの経営陣にインタビュー調査をされましたよね。どのような知見が得られたのでしょうか。
A. 設立の経緯やルールなど大きく異なる4リーグですが、いくつかの共通点がありました。
まずは、リーグ設立時の目標が「ラグビーを人気にしたい」という非常にざっくりとしたものだったということ。
これは、これからビジネスを始めようとする組織の目標としてはあまり良いものではないですよね。
一般的に言って、新しくビジネスを始めるのであれば、収益率や持続可能性を考えた具体的な目標が必要です。彼らにはそれがなかった。これは非常に興味深い点でした。
そこで、さらに話を掘り下げていくと、そもそも彼らは自分たちの力だけで成功を収められると思っていないことがわかりました。
「プロリーグが成功するためには、ユースや高校、大学、社会人といったあらゆるレベルのラグビー組織の貢献が必要である。またプロリーグ側もそういったアマチュアラグビーの成功に貢献する」。そういった考えを持っていたのです。
アメリカには、長らくプロラグビーリーグが存在しませんでした。そのため、たとえ有望な選手であっても、将来ラグビーを職業にして大金を稼ぐというイメージが湧かなかった。先ほど私が説明した言葉を使うなら、「時間差の報酬」を期待することができなかったわけです。
目標を失った選手は、アメリカンフットボールのようなスポーツに流れてしまいます。
プロリーグが成立すれば、アマチュアの選手にとって目指すべき場所が明確になり、選手の流出が食い止められ、アマチュアリーグの競技力維持に繋がります。
そして、アマチュアリーグが高い競技力を維持し、優秀な選手を育成すれば、それがプロリーグの競技力向上にも繋がります。
この相互の影響こそが、アメリカのラグビー市場を理解するポイントで、4リーグが共通して「プロリーグの成功にはアマチュアリーグの貢献が不可欠だ」と考えていた理由です。