Q. では、スポーツ産業における労働市場というのは、主にアスリートを対象にした研究分野なのでしょうか。
A. いえ、アスリート以外の労働者も研究対象です。
マーケティングや人事、ボランティアといった労働者には、アスリートとはまた異なった意味で研究する意味があります。
スポーツ産業で働いている人の大多数は、アスリート以外の労働者です。そしてその労働環境も非常にユニークです。
10年ほど前に「Pulsating Organization」という概念が提唱されました。
これは、一年を通して働く核となる職員がいたうえで、イベントの準備・開催期間に合わせて一時的に雇われる職員の数が急激に増加する組織を表す概念です。
(補足:Pulsatingは「脈を打つこと」、Organizationは「組織」を意味する。職員数が激増してから元の状態に戻るさまが、心電図に写る脈動に似ていることからそう名付けられたと考えられる)
スポーツ産業にはこのような組織が多く存在します。
そういった組織で一時的に雇われる労働者は、一般的な労働者と比べ、法律で保護されている権利が小さいため、搾取や差別の対象となることがあります。
また、一時的に雇われる労働者を扱うのは非常に複雑かつ難しいので、そういった組織を効率的に運営するための契約や組織づくりなどが研究されています。