ロイヤルズ売却② 社会的価値

前回の投稿で説明したように、現オーナーのGlass氏は2000年にロイヤルズを1億ドル弱で買収し、新オーナーのSherman氏は10億ドルで同チームを買収することになる。この価格をもとに「ロイヤルズの価値が10倍になった」と言うこともできる。

しかし、ここで注意したいのは、チームの売買はあくまで現オーナーと新オーナーという個人間の交渉で成り立つものであるということだ。

したがって、新オーナーが大きな価値を見出せばその分価格も上がる。すごく主観的な価値なのだ。

では、オーナーはどのようにチームの価値を測っているのだろうか。

チームの価値にはいくつかの種類があるが、今回触れたいのは「社会的価値」。これは、チームを所有することで得られる満足感やステータスといった象徴的な意味に基づく価値である。

「アメリカ人はビジネスにシビア」というイメージがあるかもしれないが、「大好きなチームのオーナーになる」ということ自体がチームを買収する動機となるケースは多い。

実際、今回のSherman氏による買収は、この社会的価値によるものだと個人的には見ている。それは彼の経歴や発言から明らかだ。

Sherman氏は40年以上カンザスシティに住み、ロイヤルズの大ファン。2014年にロイヤルズがワールドシリーズに進出した際は、家族旅行でパリにいたが、一人だけ早くカンザスシティに戻り、第6戦と第7戦を観戦したという。

Sherman氏は、ロイヤルズだけでなくカンザスシティにも強い愛着がある。これまで地元の財団や教育機関に多額の寄付をし、図書館の理事長を務めるなど、市の福祉のために尽力してきた。

数年前のインタビューでSherman氏は、「スポーツチームはコミュニティの資産だ。それを忘れてはいけない」、「その気になれば金儲けのために使うこともできるだろうが、私は野球を愛しているのでね」と語っている。

また、同時期に行われたインタビューでは「(これまでのビジネスとは違う)何か新しいものを探している」とも明かしている。

すでに起業家として大きな成功を収め60歳を過ぎたSherman氏が、金儲け以外の人生の楽しみを探していた。愛するロイヤルズを所有し、愛するカンザスシティのために運営する。それが今回のロイヤルズ買収の最大の動機だったのではないだろうか。

参考文献:
https://www.cleveland.com/pluto/2018/03/inside_story_how_john_sherman.html
https://fox4kc.com/2019/08/30/royals-confirm-david-glass-has-sold-team-to-businessman-john-sherman-co-investors/
https://www.cleveland.com/tribe/2019/08/cleveland-indians-vice-chairman-john-sherman-in-talks-to-buy-kansas-city-royals-according-to-report.html

投稿者:

akiraasada

テキサス工科大学スポーツマネジメント学部で教員をしています。専門はスポーツマーケティング。特に、人がスポーツファンになるメカニズムを研究しています。

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