先週金曜日、ポートランド・ティンバーズ対シアトル・サウンダーズFCの一戦は異様な雰囲気に包まれた。
熱狂的なサポーターを持つことで知られる両クラブだが、試合前恒例の横断幕を使った応援はなし。それどころか、試合が始まってもサポーターは一切応援をしようとしない。ようやくサポーターが応援歌を歌いだしたのは前半33分のことであった。
ファンがこの「無言の抗議運動」を行ったのには理由がある。
現在、アメリカでは白人至上主義的な思想を持つ人物による事件が相次いでいる。
これに抗議する意味も込めて、両クラブのサポーターは反ファシストのシンボルである「Iron Front」の旗を掲げた。
ところが、これを見たMLSは「Iron Frontの旗を掲げるような、政治的なメッセージを発信する行為は一切禁止する」と発表した。
これにサポーターは反発。「Iron Frontは反ファシスト、反人種差別の象徴。様々な人を受け入れるという意思表示なのに、なぜそれを禁止するのか」と抗議した。
ちなみに、サポーターが応援を開始した前半33分、この「33」は、1933年にナチスドイツがIron Frontを禁止したことに由来している。そして、応援を開始したサポーターが最初に歌ったのは「Bella Ciao」という反ファシストのテーマとも言えるイタリアの曲であった。
このファンの抗議運動は、選手の耳にも届いており、試合前には、両チームの選手が合同で写真撮影を行った。選手たちの手には「反ファシスト」「反人種差別」と書かれた小さなバナーが握られていた。
両クラブはその写真をTwitterに投稿。「ライバル関係を超えるもの。ファシズム・人種差別撲滅のために共に戦う」というメッセージを添えた。
参考文献:
https://www.sportsbusinessdaily.com/Daily/Issues/2019/08/26/Franchises/Timbers-Sounders.aspx
https://www.espn.com/soccer/major-league-soccer/story/3927069/timberssounders-fan-groups-protest-silently