先週末、ニューヨーク・ヤンキース対ボストン・レッドソックスの公式戦がロンドンで開催された。
土曜日の試合は5万9659人、日曜日は5万9059人の観客を動員するなど興行は大きな成功を収めたように見えるが、実際のところはどうなのだろうか。
MLBロンドン遠征の背景と成果について今日と明日、解説したい。
そもそもMLBがイギリス遠征を検討し始めたのは10年以上前のことだという。ところが、イギリスにあるスタジアムはサッカー専用スタジアムが多く、野球の試合を開催するには不向きであった。
MLBのJim Small氏はMLBの試合が開催可能な環境を見つけるために、ロンドンだけでなく、ローマ、ミュンヘン、アムステルダムといった都市を巡った。Paul Archey氏も、1999年から2015年の間にヨーロッパで30以上のスタジアムを視察したという。
今回使用されたスタジアムは、オリンピック用に建設されたもので、陸上トラックを含む大きなスペースが存在したため、なんとか野球用にアレンジすることができた。
しかし、スタジアム問題はロンドン遠征のためのハードルの一つに過ぎなかった。
なにしろ今回組まれたカードはヤンキース対レッドソックス。MLBでも屈指の好カードである。本来、本拠地で試合を主催するはずであったレッドソックスはその機会を失ったことになる。
このような場合、本拠地開催であった場合にレッドソックスが得たであろう利益を算出し、リーグが補填するのが通例である。
また、海外遠征は、選手にも負担を強いることになる。
そのため、2016年まで、MLBは海外遠征を企画する度に選手会の許可を得る必要があった。
現行の労使協定では、海外遠征は毎年行われるものとして合意されているため、遠征の度に選手会の許可を得る必要はない。その代わり、遠征に参加した選手には特別の給与が支払われることになっている(ロンドン遠征の場合は、各選手に6万ドル、計300万ドル)。
つまり、今回の興行で収支をトントンにするためには、興行自体のコストだけでなく、レッドソックスに補填する分と、選手に支払う特別給与分の収益も生み出さなければならなかったということである。
参考文献:
https://www.sportsbusinessdaily.com/Journal/Issues/2019/06/24/Events-and-Attractions/MLB-London.aspx
https://www.nytimes.com/2019/06/30/sports/yankees-red-sox-london.html
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