Dr. Millsインタビュー⑤イチロー選手の契約について

Q. 話ががらっと変わりますが、イチロー選手が今年引退しました。その際、話題になったのが彼の契約です。現役時代に稼いだ給料をすぐに受け取るのではなく、引退後まで分配するというものです。これは、北米スポーツ界では一般的な契約ですか?

A. 最近取り入れるアスリートが増えています。

最も有名な例は、元ニューヨーク・メッツのBobby Bonillaです。

彼は2001年に引退した元選手ですが、50歳を超える現在でもなお、毎年およそ120万ドルをメッツから受け取っています。そしてこれはなんと2035年まで続きます。

「引退した人間に120万ドルもの大金を払い続けるなんて馬鹿げている」と考えるスポーツファンは多く、いつからかメッツがBonillaに給料を支払う7月1日は「Bobby Bonilla Day」と呼ばれるようになりました。一種の皮肉です。

Q. アスリートにとって、このような契約の利点・欠点はなんでしょう?

A. 利点としては、もらえることが保証された給料ですから安全ですよね。
なにしろ、手元にあると浪費してしまうアスリートがたくさんいますから。

一方で、この契約だと年俸の現在価値(Present value)は下がってしまいます。言い換えれば、今すぐ給料をもらえればそれを投資して資金を拡大することもできるのに、その機会が奪われてしまうのです。

ちなみに、2019年にフィラデルフィア・フィリーズに移籍したBryce Harperがそれまで所属していたワシントン・ナショナルズのオファーを蹴った理由は、ナショナルズが年俸の支払いをあまりに先の将来まで引き延ばしたためと言われています。

Q. チームにとって利点はありますか?

A. 手元の現金が限られている、支払い能力が低いチームにとっては、年俸の拡散はありがたいですよね。今すぐ払わなくてはいけない年俸が減るわけですから。

また、サラリーキャップの問題を抱えているチームにとっても有効です。

スター選手をどんどん集めるチームは、リーグが設定した総年俸の上限に達してしまい、その結果、罰則金を支払ったり、それ以上選手を獲得できなくなったりしてしまいます。

しかし、各選手の年俸を長い期間に拡散すれば、一年あたりの支払額は減るわけですから、その年の総年俸を減らすことができます。その結果、集めた選手をキープしつつ、総年俸の上限に達することを防ぐことができるのです。

イチロー氏がどのような契約を結んでいたかはあまり知りませんが、彼の場合はマリナーズの戦略もあるかもしれません。

なにしろあれだけのスーパースターですから、おそらくマリナーズやMLBの大使として世界の野球界に貢献するような役割を期待されているでしょう。

したがって「引退後も彼との関係をつなげておく」という意味合いもあったのだと思います。

参考資料:
https://www.usatoday.com/story/sports/mlb/columnist/bob-nightengale/2018/07/01/bobby-bonilla-day-mets-deferred-payments-2035/749342002/

投稿者:

akiraasada

テキサス工科大学スポーツマネジメント学部で教員をしています。専門はスポーツマーケティング。特に、人がスポーツファンになるメカニズムを研究しています。

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