Q. アメリカではスポーツ施設が建設される際にその経済効果が議論されることがありますが、それはなぜでしょう。
A. スポーツ施設の建設費に市や州の税金がつぎ込まれることが多いからです。当然「自分の収めた税金がスタジアム建設に使われるのは嫌だ」という住民もいます。そういった住民を説得するためにスポーツチームが使う常套句が「スタジアム建設は経済効果を生むので地域のためになる」というものなのです。
しかし前述したように、スポーツイベント・スポーツ施設の経済効果は実はあまり大きくありません。
一方で、スポーツ施設には経済価値(Economic value)だけではなく開発価値(Development value)があるという意見もあります。
たとえば、サンディエゴでは、Petco Parkの建設をきっかけに、それまで廃れていたダウンタウンの経済活動が再興したと言われています。

このように、スポーツ施設を建設したことで、その周辺地域に新たなビジネスが生まれたり、道路状況が改善されたり、住民が増えたりすることがあります。
これが開発価値です。
開発価値は非常に興味深い概念で、ミシガン大学のDr. Judith Grant LongやDr. Mark Rosentraubが中心に研究を進めています。
しかし、この開発価値に関しても批判的な視点を向けることは必要です。
たとえば、スポーツ施設建設後に経済活動が活発になったとして、それはその施設がなければ生まれなかった経済活動なのかどうかは慎重に検討しなくてはなりません。そもそも勢いがあった地域にタイミングよく施設が建っただけかもしれないからです。
また、施設建設後に周辺地域で生まれた経済活動は本当に新しく生まれたものなのかも重要な検討課題です。もともと別の地域にあったものをスタジアム周辺に移動させたに過ぎないという可能性があるからです。
参考資料:
https://www.kines.umich.edu/directory/judith-grant-long
https://www.kines.umich.edu/directory/mark-rosentraub