「We The North」トロント・ラプターズのブランディング戦略

NBA 2018-19年シーズンを制したトロント・ラプターズ。NBAで唯一カナダに本拠地を置くラプターズは、コート上でのパフォーマンスだけでなく、熱狂的なファンの姿も世界中のバスケットボールファンに印象付けた。

ところが、ラプターズがこれだけの人気を獲得するとは、つい5年前までは誰も信じなかった。

ラプターズのJeff Deline氏は「ビジネス面では、当時、我々はNBAの18位にいました」と言う。同氏曰く、ラプターズは苦しい現状を打開するためにチーム名の変更まで考えていたという。「それだけ我々のブランドがファンとのつながりを欠いていたということです」。

そんなラプターズがなぜ数年でリーグ屈指の人気チームになれたのか。

選手の活躍はもちろん重要な要素だが、もう一つ見逃してはいけないのが、同チームが2014年から取り組んでいる「We The North」というブランディング・キャンペーンだ。

We The Northは、それまでラプターズが持っていた「ぱっとしないNBAチームの一つ」というぼんやりとしたネガティブなブランド・イメージを、「我々は北(カナダ)を代表するチームなんだ」というポジティブでユニークなブランド・イメージに変換するキャンペーンである。

カナダに本拠地を置く唯一のNBAチームという特性を生かし、カナダの文化を取り入れたキャンペーンを展開し、ソーシャルメディアでも#WeTheNorthというハッシュタグを用いて、そのアイデアを広く浸透させた。

また、人気ラッパーのDrakeをチームのグローバル・アンバサダーに迎え、更なるメディア露出とブランド認知の向上を図った。ちなみに、ラプターズはDrakeが持つOVOブランドを練習用ユニフォームにつけている。練習用と試合用でユニフォームスポンサーが異なるのはNBAでラプターズだけである(試合用のスポンサーはSun Life)。

このWe The Northキャンペーンの結果、ラプターズのユニークなイメージが確立され、ファンも「ラプターズはどんなチームなのか」「ラプターズを応援するというのはどういう意味を持つのか」ということが明確になった。

今回のNBAプレーオフの間、ラプターズファンだけでなく、カナダとのつながりを持つ多くの人が#WeTheNorthというハッシュタグを用いて応援や祝福のコメントを投稿した。

現在、ラプターズは、スポンサーシップ収益やグッズ売上などあらゆるビジネス指標でNBAのトップクラスに位置づけられる。

シーズン・チケットは、14,500枚の販売上限に達し、7,000人が順番待ちをしている状態だ。

参考文献:
https://www.sportsbusinessdaily.com/Journal/Issues/2019/06/10/Franchises/Raptors.aspx

投稿者:

akiraasada

テキサス工科大学スポーツマネジメント学部で教員をしています。専門はスポーツマーケティング。特に、人がスポーツファンになるメカニズムを研究しています。

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