Q.「学生アスリートは給与を受け取るべきだ」という意見もありますが、その可能性についてどう思いますか?
A. 正直なところ、今後どうなっていくか予測できないですね。「給与を受け取るべきだ」と主張する人の言い分に納得できるところもあります。たとえば、カレッジスポーツは学生アスリートが作り出すエンターテインメントなのに、それによって生まれた収益の大部分を大学側が持っていくのはおかしいという主張がありますよね。
ただ同時に、学生アスリートが給与を受け取るようになるためにはクリアしなくてはいけない問題がたくさんあるのも事実です。
たとえば、Title IX(タイトルナイン)をどうクリアするかは難しい問題になるでしょう。 学生アスリートが給与を受け取る場合、大学側にはTitle IXに則って男女均等に給与を与える義務が生まれます。
(補足:Title IXとは教育機関におけるあらゆる性差別を禁止する連邦法で、カレッジスポーツに大きな影響を与えている。たとえば、男子のスポーツが人気だからと言って予算や奨学金を男子部に集中することは禁止されている)
たとえば、アメリカンフットボール選手の補償として1億円払ったとしたら、女子選手にも1億円を払うことになるわけです。女子スポーツの集客や収益は年々増加していますが、それでも基本的には赤字です。男子学生に与えるのと同等の給与を女子学生にも与えるとなると、その人件費が赤字を巨大化させ女子部の運営を逼迫させるでしょう。これは難しい問題です。
Q. 大学が直接給与を与えるのは難しそうですね。
A. ただし、大学側から直接給与を受け取ることなく、学生アスリートが補償を受けることも可能性としては考えられます。現在は禁止されていますが、学生アスリートが自らの肖像権を活用したビジネス(エンドースメント契約、グッズ販売など)を展開するというのはその一例です。
この場合、大学ではない第三者が給与を払うため、Title IXは適用されません。しかしこの場合も「学生アスリートが勝手に倫理上問題のある企業と契約したらどうするのか?」というような問題が出てきます。やはり予測は難しいですね。
補足資料:
https://www.sportsbusinessdaily.com/Journal/Issues/2018/11/26/Reader-Survey/BestOfTheRest.aspx
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