Q. アメリカの大学で学生アスリートになることのメリット・デメリットについて教えてください。
A. メリットとしては、まず、授業料や教科書代などが奨学金によってカバーされることが挙げられます。「アルバイトをして学費を稼ぐよりも、大学でスポーツを続けて学費を工面してもらったほうがいい」と考えて学生アスリートになる人もいるでしょう。
また、宿題や試験勉強のサポートをしてくれるチューターやアカデミック・アドバイザーなど、学業面のサポートが充実していることもメリットとして挙げられます。
最後に、リーダーシップスキルなどの能力が身につくこと(身につくと信じられていること)もメリットになり得ます。実際、就活時に学生アスリートを優遇する企業もあります。
一方でデメリットもあります。
たとえば、学生アスリートによっては、選べる専攻が限られてしまう可能性があります。
先述したように、NCAAはAPRという指標を使って学生アスリートの学業成績を評価しています。このAPRには「卒業に必要な単位をどれだけ取得したか」という項目があり、学年ごとにクリアしなくてはいけない単位数が決まっています。
APRがない時代は、学生アスリートは専攻を決めるためにたっぷり時間を使うことができましたが、今はNCAAの基準を満たすために、早い段階で専攻を決める必要があります。
また、もし数学や工学のような難しい専攻を選んで多くの単位を落とせば、その学生は試合の出場権を剥奪されてしまいます。
一般学生であれば「とりあえず工学に挑戦してみて、だめだったら専攻を変えよう」というような意思決定ができますが、学生アスリートにはそのようなリスクの高い選択は許されません。
カレッジスポーツが果たす社会的な役割の一つは、貧しい家庭で育った少年・少女にスポーツ特待生として学びの機会(ひいては社会的なステータスを上げる機会)を与えることにあります。学業に関する規則が学生アスリートの学びの選択肢を狭めてしまっては本末転倒です。
補足:NCAAは「学生アスリートは簡単な専攻を選んでいる」という事実はないと否定している。NCAAが実施した調査の結果によれば、学生アスリート全体の5%が「出場停止にならないために簡単な専攻を選んだ」と回答し、「本来なら選びたかった専攻を選べなかったか」という質問については75%がノーと回答している。