Q. NCAAは昔からずっと大きな権限を持っていたのですか?
A. NCAAの成り立ち・変遷に関しては、これまで3つの転換点がありました。
まずは、20世紀の初頭、何十人というアメリカンフットボール選手が死亡したこと。
この事態を深刻に受け止めた当時のルーズベルト大統領は、大きなアメリカンフットボールチームを抱えていた大学の学長を集め、「選手の安全を確保するために何かしなくてはいけない」という問題提起をしました。これがNCAAの始まりです。つまり発足当初の目的は「アメリカンフットボール選手の安全確保」だったんです。
次に、1940-50年代、カレッジスポーツ絡み(特にバスケットボール関連)の刑事事件がいくつか勃発しました。
たとえば、学生アスリートが犯罪組織から金を受け取り八百長に関与したというケースがあります。
このときNCAAは率先して問題解決に努めました。それまでアメフト中心で裏方的存在であったNCAAが、統括団体として影響力を発揮し始めたのです。
それ以降NCAAはどんどん影響力を強めていきました。
たとえば、かつてNCAAは各大学が全国放送できるアメリカンフットボールの試合数に制限をかけていました。私の記憶ではどんなに人気のチームであっても年間2試合しか全国放送はされていなかったはずです。
ところが、1980年代にNCAAが一部影響力を失う出来事が起こりました。
アメリカンフットボールの強豪であるジョージア大学が「各大学は好きなだけ試合を放送する権利がある」としてNCAAを訴えたのです。この訴訟は最高裁まで行き、最終的にジョージア大学の訴えが認められました。これが3つ目の転換点です。
それまで アメリカンフットボールの放映権料はNCAAが独占していましたが、この訴訟以降、各大学が独自に放映権料を交渉・獲得するようになりました。皮肉にも、元々アメリカンフットボール中心の組織であったNCAAがアメリカンフットボールビジネスの蚊帳の外に追いやられたのです。
これを象徴する一つの例が、全米選手権の優勝トロフィーです。他のスポーツはどれもNCAAのデザインで統一されていますが、アメリカンフットボールの優勝トロフィーだけはデザインが違います。これはアメリカンフットボールの全米選手権がNCAA主催ではないからなんです。
補足資料:
https://www.ajc.com/sports/college/uga-helped-end-ncaa-monopoly/NX4av9U9Hp2LMCocGpeKIK/
https://www.bostonglobe.com/sports/2014/03/15/and-goodfellas-sports-scandal-and-its-lingering-toll/nvlXKiXCYsGpUqBUtg9BRN/story.html