ここまで解説してきたように、四大スポーツリーグはスポーツ賭博に関して概ね肯定的である。一方で、そんな流れと逆行するように、スポーツ賭博から距離を取ろうとしているスポーツがある。テニスである。
テニスは、現在、最も八百長が確認されているスポーツである。たとえば、European Sports Security Associationという団体は八百長の疑いのある賭けを報告しているが、2017年の第4四半期に報告された114の疑わしい賭けのうち71がテニスにおけるものであった(次に多いのはサッカーで18)。
テニスは、四大大会で活躍するようなトッププレーヤーを除くほとんどのプロ選手が金銭的な問題を抱えている。ランキング下位の選手が獲得できる賞金は限られており、ランキングを上げようと思うと遠征費がかさむからである。
大会で得られる賞金よりも、闇賭け業者から得られる金額のほうが大きい。 ランキング下位選手にとって八百長の誘いは悪魔のささやきなのだ。
「Independent Review of Integrity in Tennis」というレポートによれば、テニスの試合で起こった八百長のほとんどはランキング下位の選手が関与しているという。
同様の問題は他のスポーツでも懸念されており、たとえば野球ではマイナーリーグが、バスケットボールではGリーグが賭けの対象外とされるケースが多い。
Independent Review of Integrity in Tennisでは、「テニスイベントおよびツアーはランキング下位の試合に関するデータをブックメーカーに販売したり、ブックメーカーとスポンサー契約を結んだりすることは禁止すべき」と結論付けている。
これと同調するように、2018年、主要なテニス団体の一つであるAssociation of Tennis Professionals(ATP)は、ATP World TourおよびChallenger Tourのスポンサーとしてギャンブル業者と契約を結ぶことを禁止した。
現在ATP関連のツアーは、全豪オープンのWilliam Hillを始め、いくつかのギャンブル業者がスポンサーとしてついている。今後、これらの業者とスポンサー契約を更新することは禁止される。
他のテニス団体では、Women’s Tennis Association(WTA)は、選手のスポンサーにギャンブル業者がつくことは禁止しているが、大会のスポンサーになることは禁止していない。そして全米オープンの主催者は「ギャンブル業者とは一切スポンサー契約を結ぶつもりはない」としている。
参考文献:
https://www.sportsbusinessdaily.com/Journal/Issues/2018/05/07/Leagues-and-Governing-Bodies/Tennis-gambling.aspx
http://www.tennisintegrityunit.com/storage/app/media/Independent%20Reviews/Final%20Report_191218.pdf
https://www.apnews.com/be7648ab16e54b679a027b25b469d5f0
https://www.sportsbusinessdaily.com/Journal/Issues/2018/06/25/Leagues-and-Governing-Bodies/Tennis-gambling.aspx