2019年1月、NTTがIndyCarの冠スポンサーになると発表した。IndyCarは、佐藤琢磨選手が活躍する北米のカーレーシングである。2019年から「NTT IndyCar Series」と呼ばれることになる。契約の詳細は公開されていないが、関係者によれば、最低3年、年間100万ドルほどの契約だと推測される。
年間1060億ドルの収益を誇るNTTは、Fortune 500でも55位にランクインしており、IndyCarにとっては信頼できるパートナーとなる。
また、NTTはIndyCarの新アプリを開発する予定で、レースのデータや映像などをリアルタイムで楽しめるプラットフォームを作り上げる。
一方で、日本企業でしかもBtoBのビジネスを主に行うNTTがスポンサーになることで、IndyCarの観戦価値に負の影響が生まれるのではと懸念する関係者もいる。
近年、スポーツイベントのスポンサーは単純に協賛金を提供するだけでなく、イベント会場にブースを置きイベント参加者と交流している(「スポンサーシップ・アクティベーション」と呼ばれる)。
たとえば、スポーツ用品店がスポンサーとなる場合、スポーツシューズやスポーツウェアの試着ができるブースを設置する。このブースはスポンサーが製品を宣伝するいい機会になる一方、イベント参加者にとってもイベントをより楽しむ機会となる。
NTTが冠スポンサーになることの負の影響を懸念する人は、NTTが消費者に提供できるものがあまりなく(そもそも提供しようと頑張る理由もあまりなく)、それが観戦者の経験価値を損なうのではないかと考えているのである。
この点に関してIndyCar会長のMark Miles氏は、NTT以外にBtoCのスポンサー企業を獲得するので、全体としてみれば問題ないと説明している。
さらにGMR MarketingのJimmy Bruns氏は、BtoBビジネスに長けたNTTがスポンサーになることで生まれる好影響もあると指摘する。たとえば、NTTはFortune 100にランクインしている企業のおよそ80%とビジネスを行っている。NTTがそれらのクライアントを接待する目的でIndyCarのイベントに招待すれば、それがIndyCarにとって潜在的なスポンサーを見つける機会になり得るというのである。