2009年設立のNextVR社は、バーチャル・リアリティ(VR)技術を駆使したスポーツ中継や音楽ライブの配信を提供している。
NextVRはNBAと業務提携を結んでおり、レギュラーシーズンの26試合をVR中継している。
そのNextVRが2019年1月、全体の約40%の従業員を解雇した。
2013年設立のJauntは、NFL、サンフランシスコ・ジャイアンツ(MLB)、そして野球殿堂博物館などにVR技術を提供してきた。しかし、Jauntもまた相当数の従業員を解雇し、VRビジネスから撤退。今後は拡張現実やAIといった領域に集中するという。
これらは特殊な事例ではない。一時はスポーツ中継に革命を起こすと注目を集めていたVRが困難に直面しているのだ。
PwCの報告によれば、2018年にVR関連のベンチャーに投資された金額は前年比で46%減。International Data Corporationによれば、VR器具の世界的な売上高は2017年の後半から2018年にかけて4期連続で減少している。
「予想していた成長曲線を描いていないのが現実だ」とNextVRのDavid Cramer氏は言う。「2020年に伸びるという予想はまだ変わっていないが、そのような兆候はまだ見えてこない」。
果たしてVRは本当に落ち目なのか。その結論を出すのは時期尚早だが、現時点でVRが苦戦を強いられている理由はいくつか考えられる。
まず、VR中継の画質・クオリティの低さ。VR中継はスタジアムにいるかのような臨場感を味わえる一方、画質は通常のテレビ中継のほうがはるかに良い。また、平昌オリンピックの際には、技術的な問題から中継が見られなくなるケースも発生しており、VR中継に対するネガティブなイメージは払拭できていない。
さらに、VR中継は基本的に個人観戦向けであり、家族や友人と観戦経験を共有できないという難点もある。NBAのJeff Marsilio氏は「複雑な器具をつけて、一人で観戦してもらう。これはまだちょっとハードルが高い」と言う。
VRはテレビゲームやトレーニングのツールとしては成果を上げているが、スポーツ中継のプラットフォームとして浸透していくためにはまだ課題が山積している。
参考文献:
https://www.sportsbusinessdaily.com/Journal/Issues/2019/01/21/Technology/VR.aspx
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