FCバルセロナは現在、アメリカのNational Women’s Soccer League(NWSL)に参入するために女子チームを新設することを検討している。NWSLはアメリカサッカー協会が運営する女子のプロリーグで、日本人では川澄奈穂美選手がプレーするシアトル・レインFCが同リーグに属する。
FCバルセロナはスペインで17のスポーツチーム(バスケットボールやハンドボールなど)を運営しており、その中には女子サッカーチームもあるが、今回検討しているのは「アメリカでの女子チーム新設」である。
FCバルセロナの経営陣によれば、その主な目的は「女子スポーツとサッカーを盛り上げるため」そして「アメリカにおける同クラブのブランド強化のため」である。
FCバルセロナは2016年9月からニューヨークにオフィスを構えており、今回の計画は主にそのニューヨークオフィスが推進している。
FCバルセロナは当初、新チームの本拠地としてカリフォルニア州を考えていた。その証拠に、同クラブはMLSのLAFCとサンノゼ・アースクエイクスに共同での女子チーム設立を持ち掛けている。FCバルセロナからすれば、MLSクラブはすでにスタジアムを持っており、パートナーとすることが得策なのである。
しかし関係者によれば、バルセロナ側には譲れない条件があり、それが交渉を難航させているという。
その条件は「新チームが『FCバルセロナ』という名前を冠すること」そして「ユニフォームはFCバルセロナのパートナーであるナイキが製作すること」である。
あくまで同クラブの宣伝をしたいFCバルセロナの姿勢に、サンノゼ・アースクエイクスはすでに交渉を打ち切っている。
交渉の難航を受けて、FCバルセロナは本拠地候補としてフロリダ州マイアミを検討し始めた。マイアミといえば、元イングランド代表のデビッド・ベッカム氏がオーナーを務めるインター・マイアミCFが2020年にMLSに参入することが決定している。
しかし多くの関係者はこの交渉も難しくなると見込んでいる。それと言うのも、NWSLはMLSと同様、シングルエンティティ(Single Entity)というシステムを採用しており、各クラブの裁量権が限られているからである。
たとえば、現在NWSLはたまたまナイキにユニフォームの製作を任せているが、この契約は2022年に切れる。その際に、FCバルセロナが「ナイキとの契約を更新しろ!」と言っても、より大きな権限を持つリーグ側が他のブランドと契約を結ぶ可能性もある。反対に、FCバルセロナのパートナーが他ブランドに変わっても、NWSLはナイキとの関係を継続する可能性もある。
ユニフォームに限らず、FCバルセロナとNWSLの利害が対立するケースはいくらでもある。その際に、頑固なFCバルセロナと大きな権限を持つNWSLの相性は悪く、新クラブの運営にはリスクがつきまとうのである。
MLSクラブを説得するためには、これまでの条件を取り下げて柔軟な姿勢をアピールするか、リスクを超えるメリットを提示する必要があるだろう。
FCバルセロナは当初2018年の新チーム設立を目指していたが、実現は早くても2020年にずれ込むと見られている。
参考文献:
https://www.sportsbusinessdaily.com/Journal/Issues/2018/12/10/Franchises/Soccer.aspx