スポーツ中継の動向① 放映権収入急増の背景

PwCの調査によれば、北米スポーツチームの収入源の中で放映権収入が最も急速に成長している分野である。たとえば、過去5年間で、前年から10%以上の成長を見せているのは放映権収入だけである。そして2017年、放映権収入は初めてチケット収入を上回り、北米スポーツチームにとって最大の収入源となった。

しかしこれをもって「スポーツ中継が好調」と結論付けるのはいささか短絡的である。放映権収入がなぜ拡大しているのか、詳しく分析しなくてはならない。

まず、放映権収入というのは、スポーツリーグ・チームが放送局と契約をする際に生まれる。NBAやMLBのようなメジャーリーグの場合、全国中継と地方中継があり、全国中継の放映権はリーグが、地方中継の放映権は各チームが交渉するのが一般的である(ただしNFLは全国中継も地方中継もリーグが交渉する)。なお、リーグが獲得した放映権収入は各チームに分配される。

したがって、極端に言えば、いくら人々がスポーツを見なくなっても、放送局が大金を払えばスポーツチームに入る放映権収入は拡大し得るのである。

北米では、2000年代から自前のテレビ局をもつスポーツリーグ・チームが次々に現れた。NFLのNFL Network、大学スポーツのサウスイースタン・カンファレンスが持つSEC Network、そしてニューヨーク・ヤンキースのYES Networkなどがその例である。

こういった新規放送局は、独自のコンテンツを提供することで視聴者を引きつけ、既存の放送局にとって大きな脅威となった。同時に、限られた人気スポーツコンテンツをめぐってより多くの放送局が競争することになった。放送局が競争に勝って放映権を獲得するためには、より高い契約金をスポーツリーグ・チームに提示することが求められる。

たとえば、アメリカ最大のスポーツ専門チャンネルESPNは、2011年にNFLと8年総額150億ドル、2016年にNBAと9年総額126億ドルの契約を結んだ(NBAとの契約はTurner Sportsと共同)。

これらの大型契約に関して、一部の関係者からは「ESPNは払い過ぎだ」との声も上がった。しかしESPNのJohn Skipper氏は、2017年のインタビューで「我々は“より深い堀”を作らなくてはならない」と発言した。これは「ESPNはどんどん放映権を獲得して、スポーツメディア界に難攻不落の城を建てる」という意味である。

激化する放映権競争。これが放映権収入の急増の背景にある。

参考文献:
https://www.pwc.com/us/en/industry/entertainment-media/assets/2018-sports-outlook.pdf
https://www.sportsbusinessdaily.com/Journal/Issues/2017/06/26/Media/ESPN-main.aspx
https://www.amazon.com/Sports-Finance-Management-Entertainment-Remaking-ebook/dp/B007I7FYQI

投稿者:

akiraasada

テキサス工科大学スポーツマネジメント学部で教員をしています。専門はスポーツマーケティング。特に、人がスポーツファンになるメカニズムを研究しています。

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