新疆綿問題③難しい立場に置かれる海外リーグ

海外ブランドの不買運動を展開する中国人消費者。彼ら彼女らの愛国心をくすぐるように、中国ブランドは新疆綿を使用していく方針を改めて打ち出している。

そんななか、中国と繋がりの強い海外アスリートやスポーツリーグ・チームは難しい立場に立たされる。

たとえば、NBAは社会問題への発言に積極的な組織として知られているが、新疆綿問題に関しては今のところ静観を貫いている。

NBAと中国と言えば、2年前に当時ヒューストン・ロケッツのGMが香港のデモを支持するようなコメントをしたことで、中国消費者やメディアから大きな反発を受けた。

中国バスケットボール協会とロケッツの協力関係が一時停止されたり、NBAの試合中継が中止されたり、この騒動がNBAと中国の関係に傷をつけたことは明らかであった。

中国はNBAにとって最も重要な海外マーケットである。NBA Chinaは中国で独自にスポンサーシップや放映権を販売し、約50億ドル(約5500億円)の売上を上げている。

これ以上中国との関係が悪化し、中国でのビジネスに悪影響が及べば、NBA全体にとっても大打撃となる。NBAとしては下手に発言することができないのだ。

しかし新疆綿問題に関する報道や議論が大きくなれば、静観を貫くのも難しくなる。今後NBAはどのような行動を見せるのか。注目である。

参考文献:
https://www.nytimes.com/2021/04/09/business/china-nba-anta-xinjiang.html

新疆綿問題②中国消費者による不買運動

中国の新疆ウイグル地区で生産されている「新疆綿(Xinjiang Cotton)」は、世界中のアパレル企業の製品に使用されてきた。

しかし昨年、この新疆綿の収穫のためにウイグル人が強制労働させられていると報道された。

これを受けて、大手アパレル企業が次々に懸念を表明。一部企業は、新疆綿の使用の取り止めを決定した。

たとえばナイキは、以下のようなコメントを発表している。

「ナイキは倫理的で責任を持った製造に努めており、労働に関する国際水準を順守しています。新疆ウイグル地区における強制労働の報道に関して、我々は懸念しています。ナイキは新疆ウイグル地区で生産されたものは使用していませんし、生地の供給元にもすでに連絡を取り、繊維などを同地区から取り寄せていないことを確認済みです」

こうした声明文は、社会問題に関心のある海外消費者の支持を得たが、一方で中国国内の消費者の反感を買うことになった。

一部の中国消費者が不買運動を始め、それにインフルエンサーや有名人も参加していった。そして、この不買運動は中国で社会現象となった。

ナイキやアディダスといった海外スポーツブランドが中国で売上を大きく落としているのは、この不買運動の結果だったのである。

参考文献:
https://www.nbcnews.com/news/world/western-brands-tested-china-amid-forced-labor-allegation-backlash-n1262707
https://purpose.nike.com/statement-on-xinjiang

新疆綿問題①ナイキ・アディダス、中国で売上激減

©GETTY IMAGES/ALEX TAI/SOPA IMAGES/LIGHTROCKET

ナイキとアディダスの中国における売上が激減している。

アリババが管理するネット市場「Tmall」での4月の売上は、前年同月比でそれぞれ59%減(ナイキ)と78%減(アディダス)。

中国は両ブランドにとって最も重要な市場の一つであり、ここでの苦戦は大きな痛手だ。

一方で、国内ブランドのリーニンとアンタは売上が激増。たとえば、リーニンのTmallでの売上は前年同月比800%だったという。

なぜ中国人消費者は海外ブランドから国内ブランドへシフトしていっているのであろうか。

その背景には「新疆綿」の問題が存在する。

今週は、この問題とスポーツ業界への影響に焦点を当てていく。

参考文献:
https://www.sportspromedia.com/news/adidas-nike-sales-china-xinjiang-boycott-2021

NFLドラ1、早速Fanaticsと契約

Photo Source: ESPN.com

今年のNFLドラフトで全体1位の指名を受けたトレバー・ローレンス(クレムゾン大)が、早速Fanaticsと複数年のライセンシング契約を結んだことが明らかになった。

この契約に基づき、Fanaticsはローレンスのグッズ(ユニフォーム、ヘルメット、サイン入りボールなど)を独占的に生産することになる。

ローレンスは大学時代から大きな注目を集めてきた選手で、Fanatics以外にもアディダスやゲータレードなどとエンドースメント契約を結んでいる。

また、彼を指名したジャクソンビル・ジャガーズとFanaticsの本社はともにフロリダ州ジャクソンビルにあり、そういった意味でもローレンスはFanaticsにとって魅力的なアスリートである。

契約に際してローレンスは「Fanaticsファミリーに加わることを楽しみにしております。ジャクソンビルの会社ですしね。Fanaticsは業界で最も信頼のある会社です。グッズなどを通して、ファンにもっとアメリカンフットボールを身近に感じてもらえるように協力していきます」とコメント。

なお、Fanaticsは、トム・ブレイディ(NFL)、ザイオン・ウィリアムソン(NBA)、サブリナ・イオネスク(WNBA)、アーロン・ジャッジ(MLB)といった各リーグのスター選手とも同様の契約を結んでいる。

参考文献:
https://www.sportspromedia.com/news/trevor-lawrence-fanatics-memorabilia-collectibles-jerseys

NFLドラフト2021、高視聴率

Photo Credit: Kirby Lee (USA TODAY Sports)

4月29日から5月1日にクリーブランドで開催された「NFLドラフト2021」は、高視聴率を記録した。

Nielsenによれば、ドラフト一巡目が指名されたときの視聴者は1260万人。これは2020年の1530万人に次ぐ歴代2位の数字である。

2020年のドラフトは、コロナ禍の影響でほとんどのスポーツ中継が中止されていたときで、多くの人々がスポーツに飢えていたという背景がある。

今年のドラフトはESPN、ABC、NFL Networkが中継を担当したが、ESPNが最も多くの視聴者を獲得した。それぞれの視聴者数は以下の通り。
・ESPN:650万人
・ABC:420万人
・NFL Network:190万人

テレビ以外では、NFLやESPNが運営するストリーミングチャンネルで60万人近くが視聴したという。これは、2019年と比較すると54%増である。

参考文献:
https://www.sportspromedia.com/news/2021-nfl-draft-first-round-tv-ratings-espn-abc

ESPNの“副中継”戦略

NBA.com

5月3日に開催されるゴールデンステート・ウォーリアーズ対ニューオーリンズ・ペリカンズの一戦、ESPNはMarvelと共同で「スーパーヒーロー」をテーマにした番組制作を行う。

メインチャンネルでは通常の試合中継をしつつ、サブチャンネルであるESPN2とESPN DeportesおよびストリーミングチャンネルであるESPNプラスではこの「スーパーヒーロー中継」を放送する。

拡張現実などの技術を駆使したこの中継では、Marvelの人気キャラクター(アイアンマンやブラックパンサーなど)が試合会場に映される。

「地球を脅かす敵を辛うじて倒したアベンジャーズが、次の戦いに備えてエリートアスリートを引き抜きに来た」という設定で、試合中継では実際のスコアだけではなく、「Marvelヒーロー・ポイント」が表示される。

Marvelヒーロー・ポイントは、各選手のパフォーマンスによって加算されるポイントで、試合終了時に最も多くのMarvelヒーロー・ポイントを獲得した選手には「Marvelチャンピオン」の称号が与えられる。

また、試合の解説には、ESPNのレギュラー解説陣に加えて、Marvelの専門家が参加する。

このような副音声ならぬ「副中継」をESPNは積極的に行っており、今回の中継が成功を収めれば、今後様々な設定の副中継が行われるかもしれない。

参考文献:
https://www.sportspromedia.com/news/espn-marvel-nba-superhero-telecast-warriors-pelicans-zion-steph-curry

マンUオーナー、クラブ売却に40億ポンド要求

Photo Credit: Gallo Images

マンチェスター・ユナイテッド(マンU)は、昨今のスーパーリーグ騒動でファンの怒りを買っているが、その怒りの矛先はクラブオーナーのグレーザー一族に向けられている。

そもそもグレーザー一族とマンUファンの関係は一貫して悪かった。

アメリカ人資産家のグレーザー一族が同クラブを買収したのは2005年。

クラブを単なる投資目的で買収したと考えた地元ファンはこれに大きく反発。市内で抗議デモを行い、新オーナーがスタジアムに入るのを妨害した。

この度のスーパーリーグ騒動は、ファンがグレーザー一族に対してかねてから抱いていた「クラブの伝統を無視した金儲け第一主義」というイメージをより強固なものにしてしまった。

我慢ならない地元ファンは現在グレーザー一族にクラブ売却を要求しているが、当のグレーザー一族にクラブ売却の意思はない。

いくらなら売却を考えるかというメディアの問いに対して、40億ポンド(約6000億円)積まれれば売却を考えると答えたという。

これはグレーザー一族が2005年にマンUを買収した際に支払った額(7.9億ポンド)のおよそ5倍である。

参考文献:
https://www.sportspromedia.com/news/glazers-sell-manchester-united-price-ek-arsenal

Basketball Africa League③初シーズン開幕へ

コロナ禍の影響で開幕が延期されていたBasketball Africa League(BAL)の初シーズンは、来月16日に開幕する。

当初はアフリカ各地で試合を開催する予定であったが、すべての試合をルワンダのキガリ・アリーナで行う形式に変更された。

まずは、12チームが3つのグループに分かれ、総当たりのリーグ戦を行う。

次に、リーグ戦の成績に基づいて選ばれた上位8チームがトーナメント形式のプレーオフに進出。

決勝は5月30日に行われる。

BALのアマドウ・ガロ・フォール会長は「アフリカ全土から集まったエリート選手が、自らの才能を披露し、あらゆる世代のファンを勇気づけ、アフリカの経済発展に貢献し、そしてアフリカのスポーツ文化に光を灯す。そのような機会を与えるのがBALです」とコメントした。

参考文献:
https://www.espn.com/nba/story/_/id/31158325/nba-basketball-africa-league-do-debut-16-rwanda

【補足資料】
BAL参加チームリスト

  1. Groupement Sportif des Pétroliers(アルジェリア)
  2. Clube Atlético Petroleos de Luanda(アンゴラ)
  3. Forces Armées et Police Basketball(カメルーン)
  4. Zamalek(エジプト)
  5. Gendarmerie Nationale Basketball Club(マダガスカル)
  6. Association Sportive de la Police Nationale(マリ)
  7. Association Sportive de Salé(モロッコ)
  8. Ferroviàrio de Maputo(モザンビーク)
  9. Rivers Hoopers BC(ナイジェリア)
  10. Patriots BC(ルワンダ)
  11. Association Sportive des Douanes(セネガル)
  12. Union Sportive Monastirienne(チュニジア)

Basketball Africa League②NBA、FIBA、大手スポンサー

Photo Source: afroballers.com

2019年2月16日、NBAはFIBAと共同でBasketball Africa League(BAL)を立ち上げることを発表した。

発表に際してNBAコミッショナーのアダム・シルバー氏は「このアイデアに関しては、ここ数ヶ月議論を重ねてきました。NBA各チームのオーナーからも素晴らしい反応をもらいましたし、アフリカにおける業務提携に興味を示すスポンサーもいました」とコメントした。

実際、BALはこのあとNike、Jordan Brand、Pepsiといった大手企業とのスポンサー契約に成功する。

これらの大企業と契約を結べたことは、BALにとって、財務的にもブランディング的にも大きな意味がある。

試合のクオリティやリーグの運営能力などが不透明なBALが、初シーズンを前にこれだけの契約を結ぶことができたのは、NBAとFIBAの後ろ盾があってこそである。

2019年10月、BALは参加チーム選考のための予選会を開催。31か国を代表する31チームから12チームが選ばれた。

参考文献:
https://www.nba.com/news/nba-fiba-announce-pro-league-africa

Basketball Africa League①アフリカで強まるNBAの存在感

アフリカのプロバスケットボールリーグである「Basketball Africa League(BAL)」の記念すべき初シーズンが来月に迫っている。

当初は2020年に初シーズンを迎える予定だったが、コロナ禍の影響で先延ばしになっていた。

BALの立ち上げにはNBAとFIBAが関わっており、世界的に話題を集めている。今週リーグ立ち上げの背景を解説していく。

NBAはここ20年ほど、アフリカへの関与を強めてきた。

まず2003年、「国境なきバスケットボール(Basketball Without Borders)」という草の根活動を初めてアフリカで実施。以来10年以上連続で開催した。

2010年、南アフリカ(ヨハネスブルク)にアフリカ支社を設立。

2015、2017、2018年、現役NBA選手が世界選抜とアフリカ選抜に分かれて戦う「NBAアフリカ・ゲームス」という興行を開催。3度の興行すべてでチケットは完売した。

2017年には、セネガルにNBAアカデミーを設立。アフリカ中から有望な選手を集め、将来のスター選手の育成に励んでいる。

このように、NBAのアフリカでの取り組みは多岐に渡っている。今回のBAL立ち上げは、これまでのそれらの取り組みの集大成とも言えるだろう。

つづく。

参考文献:
http://global.nba.com/basketball-without-borders/
https://nbaacademy.nba.com/location/africa/
https://www.sportsbusinessjournal.com/Journal/Issues/2019/09/30/Leagues-and-Governing-Bodies/NBA-Africa.aspx